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リーガルサービスジョイントセンター(弁護士活動領域拡大推進本部)

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(11)祭祀承継者

1 はじめに 

墓じまいという形ではなく、お墓や仏壇・神棚等を引き継いでもらいたいとお考えの場合、どなたに引き継いでもらうのかを決めておかれることをお勧めします。
祭祀に関わるものを「祭祀財産」といいますが、こちらについては、相続財産とは別に承継される決まりになっています。
仏壇や神棚を誰が承継するのか、また、お墓を誰が承継するのかについて、ご遺族の間で話し合いにより決まらないために、トラブルとなってしまうこともございます。
事前にご自身で決めておくことでトラブル防止につながります。

2 法律の規定

民法は897条で祭祀に関する権利の承継について定めています。

第897条
1 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

法律の規定では、
①被相続人の指定(1項但書)
②慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者(1項本文)
③家庭裁判所が定めた者(2項)
という順番で承継することになっています。
事前の指定がない場合には、慣習や家庭裁判所によって決められた者が祭祀承継者となることになっていますが、いずれも基準が抽象的なものですので、遺族間で長期にわたって争いになってしまう危険性がございます。
また、上記の条文には直接書かれておりませんが、指定のない場合、遺族による話し合いでも決めることができます。しかし、協議の過程で遺族間でトラブルに発展することもございます。
一方、祭祀承継者を指定していた場合には、その指定が優先されますので、事前に、祭祀財産を託したい方を指定しておくことで、祭祀承継者を決めておくことができます。

3 指定の方法

祭祀承継者の指定の仕方については、ご自身が口頭でお伝えしておくことでも有効ではありますが、後に確認することができなくなりますので、トラブルの原因となってしまいます。
そこで、確実なのは、遺言で指定する方法です。
遺言はご自身で作成することも可能ですが、形式面での誤りがあって無効となったり、記載が不足していて後に争いになったりすることもございますので、弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

遺言につきましては、こちらのコラムもご参照ください。
https://www.toben.or.jp/know/iinkai/houritsuservice/syukatu/post_22.html
https://www.toben.or.jp/know/iinkai/houritsuservice/syukatu/post_29.html

4 おわりに

終活の中で決めておくべきことは多岐にわたりますので、様々な法律上の問題が関係してきます。(参照:「弁護士による終活支援」https://www.toben.or.jp/know/iinkai/houritsuservice/syukatu/

また、祭祀財産の承継にあたっては、寺院や神社等とのご関係もございますので、祭祀承継者が決まったとしても、承継者の方が、従来のご関係をご存じないために、どのようにしてよいか分からないといったこともございます。
ご自身が早いうちから終活をしていくことで、そういった関係性も含めて、円滑に引継ぐことができるかと思います。

何を決めればよいかわからないといったことからでも結構ですので、終活のことでお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。

(平松 慧真)

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