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リーガルサービスジョイントセンター(弁護士活動領域拡大推進本部)

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(10)遺言でできること

エンディングノートについてのコラムでは、ご自分が亡くなった後についての生前の意思、希望を残すものである遺言とエンディングノートの違いは、法的効力の有無であるというお話をしました。もっとも、遺言に残せば、どのような事項も法的効力が生じるわけではありません。
このコラムでは、遺言でできることについて解説します。

エンディングノートで出来ること、出来ないこと ─エンディングノートの法的効力─については、こちらをご参照ください。

1 遺言事項 

⑴ 相続に関する事項
① 相続分の指定・指定の委託(相続人の全部または一部の者について、法定相続分と異なった割合で相続分を定め、またはそれを第三者に委託すること)
② 遺産分割方法の指定・指定の委託(相続人への遺産の分配方法を定めること、またはそれを第三者に委託すること)
③ 推定相続人の廃除、廃除の取消し(相続人となるであろう人に被相続人への虐待、侮辱等があった場合にその人を相続から排除することとその取消し)
④ 配偶者居住権の設定(夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が居住していた亡くなった人の所有建物について、残された配偶者が亡くなるまで又は一定期間、無償で居住することができる権利を設定すること)

⑵ 相続以外による遺産の処分に関する事項
① 遺贈(遺言によって遺産を相続人または相続人以外の第三者に譲り渡すこと)

⑶ 身分関係に関する事項
① 認知
② 未成年後見人の指定

⑷ その他の事項
① 祭祀承継者の指定
② 遺言の撤回

2 付言事項

他方で、遺言事項以外を遺言に記載してはいけないかというと、そうではありません。もちろん、遺言事項以外の生前の意思や希望を遺言に記載しても法的効力は生じませんが、記載すること自体は許されないわけではありません。このような法的効力のない事項を「付言事項」といいます。 

実務上、法定相続分と異なる相続分の指定や遺産分割方法の指定を遺言書に定めた場合などには、「遺言書の内容について理解し、家族仲良く助け合って過ごしてほしい」といった残された家族に対する遺言者の願いが記載されることもよくあります。このような記載には法的効力はありませんから、遺言者の意思に反して、遺言によって遺留分を侵害された相続人が遺留分侵害額請求をすることなどは防ぐことはできません。

また、このような残された家族への漠然とした願いではなく、遺言事項にはあたらないものの実際に事務手続が必要なこと(葬儀や埋葬の方法、残されたペットの環境整備等)についても、遺言書に記載しても法的効力は生じませんから、ご自分の意思が死後に実現されるかどうかは、相続人が遺言者の意思を汲んでくれるかどうかによってしまいます。そこで、遺言事項以外の死後の事務については、遺言ではなく、死後事務委任契約を締結しておくことで生前の意思、希望を死後に実現することができます。この死後事務委任契約は、身寄りのない方や家族に負担をかけたくないと考える方にとっても有益です。

終活として、ご自分の生前の意思、希望がきちんと死後に実現されるためにはどのような方法が最適か、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

死後事務委任契約については、こちらをご参照ください。

(藤原 奈美)

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