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リーガルサービスジョイントセンター(弁護士活動領域拡大推進本部)

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(15)「住まいの終活」空き家発生防止のために

人生の節目、節目では、様々なご事情から、長年住んできた自宅を離れることがあるかもしれません。
また、子どもたちはみんな家庭を持って自立しているとか、そもそも子どもや近しい親族ももう誰もおらず、自分が亡くなった後はこの家に住む人がいないということもあるかもしれません。
こうした色々な理由で、誰も住んでおらず、管理する人もおらず、最後は荒れ果てたまま放置されてしまう「空き家」が増えています。
ときには、何世代も前から登記名義の変更すらされておらず、持ち主が誰かもわからなくなってしまっている「所有者不明土地・建物」もあります。
最悪のケースでは、屋根瓦が落ちるとか、建物が傾くなど、周辺に危険な状態になって、行政から指導を受けたり、空家法に基づいて強制的に代執行をされたりして、相続人が多額の費用の支払を命じられるようなことも現実に起きています。
長年住み続けて思い出の詰まった我が家を、家族や近隣の方の負担や迷惑となる「負動産」にしないためにも、いま、「住まいの終活」ということが提唱されています。

「住まいの終活」とは、具体的にどんなことをするのでしょうか。例えば、元気なうちに家財の整理や処分を早めに行うことや、今後の住まいを検討すること、住まなくなった自宅は人に貸し出したり欲しい人に売るなどして適切に処分・利活用することなどが挙げられます。
こうした内容については、東京都のホームページにも、「東京住まいの終活ガイドブック」が掲載されており、わかりやすくまとまっていますので、参考になさってください。
https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/akiya/shuukatsu_guidebook.html

しかし、ご事情によっては、こうした「住まいの終活」に取り組もうと思っても、なかなかうまく進まないということがあるかもしれません。そうした場合に、弁護士がお手伝いできることがあるかもしれません。
たとえば、最後まで自分が住みたいけれど、子どもも親族もおらずその後のことを頼める人がいないという場合には、遺言書を書いたり、死後事務委任契約をするなどの方法で、亡くなられた後の財産の整理・処分を行うことができます。
また、住まなくなった自宅を処分しようとしても、登記名義がひいおじいちゃんのまま相続人が何十人にもなっているとか、きょうだい3人で相続したけれども仲が悪くて話し合いができないとかで、複雑な権利関係のためにどうにもできないということもあるかもしれません。こうした場合も、遺産分割や共有物分割、さらに各種の民法上の財産管理制度(不在者財産管理制度、所有者不明土地・建物管理制度など)や共有関係の整理に関する制度(不明共有者の持分取得・譲渡制度など)を活用することで、問題解決に向けて一歩前進できる場合があるかもしれません。これらの制度の活用方法については、引き続き当コラムで扱っていく予定ですので、そちらもぜひお読みになってください。
さらに、色々な方法を尽くしたけれども、やはり自分の代でうまく解決することができないということも、ときにはあるかもしれません。万が一そのような状況になったときも、事前に相続放棄の段取りを話し合っておくとか、誰かに管理をしてもらうような措置を取っておくなど、可能な限り次の世代に負担がかからないような方法を検討しておくことも必要です。

終活を行う上で、住まいの問題は最も重要な問題の一つです。自分が住まなくなった後の大切な我が家を、「空き家」「地域が困っている問題物件」「家族の負担になる負動産」にせず、きちんと自分の手で整理するためにも、できればなるべく早い段階で弁護士にご相談ください。できれば、「困った問題が起きちゃったから相談しよう」ということになる前に、「特に何も問題ないと思うけど、念のため相談しておいて問題ないことを確認してもらおうか」というくらいが理想的です。
                                              (小笠原友輔)

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