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外国人の権利に関する委員会

外国人の権利に関する委員会

 

2013年外国人支援団体との交流会

2013年外国人支援団体との交流会を開催しました。
当委員会では、毎年1回、外国人支援団体との交流会を開催しています。
2013年11月6日、弁護士会館で交流会を開催し、31団体(44名)の方にご参加いただきました。

まず、参加者全員で、全統一労働組合 副中央執行委員長 、移住労働者と連帯する全国ネットワーク 事務局長の鳥井一平さんの講演「外国人研修・技能実習制度 どうして人身取引と言われるのか」をお聞きしました、鳥井さんは、「炎のオルグ」と呼ばれ、外国人労働者のために戦われていますが、その名のとおりの熱い語り口に、日ごろ、外国人の権利の問題にかかわる弁護士も、支援団体の方も講演に引き込まれました。


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講演会の様子

その後、①家族、②労働、③留学生をテーマとした3つの分科会に分かれ、日ごろの活動の中で感じている問題や悩みを共有し、問題解決に向けた議論を行いました。詳しくは、各分科会の報告をご覧ください。

家族分科会

1 家族分科会は、参加団体の皆様から事前に頂いた質問を元に外国人の人権委員会側(以下、「当委員会」といいます。)で作成した事例を検討すると 共に、事例から派生して、家族に関わる在留資格全般、子供を中心とした生活面について、議論しました。参加団体の方々と当委員会の委員、参加団体の方々同 士で情報交換、意見交換ができ、充実した分科会になったと思います。検討した事例は以下の事例です(その他に3個の事案についても補足的に検討しまし た)。

夫(日本人)と妻(中国人)は、中国で結婚し、夫はいったん先に日本に帰国し、妻について「日本人の配偶者等」の「在留資格認定証明書」を取得し て、妻を日本に呼び寄せた。妻は前夫(中国人)との間の子供(13歳、日本人夫との間に養子縁組はしていない。)ついて「定住者」の「在留資格認定証明 書」を取得して、子供を日本に呼び寄せた。その3年後、夫と妻は不仲になり、夫は自宅を出て行った。現在別居して半年が経過し、離婚調停中である(夫が申 立人であり、妻には離婚意思なし。)。夫が無職のため、婚姻費用はもらっておらず、妻もパートをしながら生活保護を受給している。妻の在留資格の期間も子 供の在留資格の期限も1年であり、もうすぐ満期となる。妻と子供が日本に在留するためにどうすればよいか。なお、子供は高校には通っておらず、働いてもい ない。

妻については、「日本人の配偶者等」の在留期間更新、「定住者」または就業系在留資格への変更ができないかを検討致しました。さらに、事例から発展 して、「日本人の配偶者等」や「定住者」の在留資格で在留している外国人が生活保護を受給中ないし受給歴を有する場合は、更新時に在留期限を短くされる (例えば、3年→1年)事例がある、という問題提起を参加団体の出席者から受けました。これについては、当委員会の委員は、「日本人の配偶者等」の在留期 間更新時に生活保護受給の事実が考慮されている事例は聞いたことがなかったが、「定住者」については「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライ ン」(法務省入国管理局、平成24年7月最終改正)」の基準4(「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」)との関係で不利益に扱われる事例 があると認識していることを説明した上で、ただし、基準4の例外要件(「仮に公共の負担となっている場合であっても、在留を認めるべき人道上の理由が認め られる場合には、その理由を十分勘案して判断する」)に該当する場合には、更新が認められるのであるから、その「人道上の理由」を裏付け資料を伴って強く 主張すべきである等のアドバイスをしました。

また、子供については、事例から発展して、難民申請中(とりわけ仮放免等の状態にある者)の子供について予防接種通知や就学通知が来ないケースがあ ること、10歳~15歳で来日した子について日本語の問題から十分な教育を受けることができないことについて、参加団体出席者より問題提起がなされ、議論 がなされました。予防接種通知や就学通知については、当委員会の委員は、「外国人登録が廃止された後、行政側は住民票が作られていない外国人の子供達の存 在を把握できておらず、各種通知が送られてこないという問題が指摘されている。もっとも、市区町村役所の窓口に行けば予防接種や就学についての案内をもら え、住民票がなくとも予防接種や就学は可能となっている。また、市区町村役所の窓口が対応しない場合は、直接教育委員会に行って『子供を就学させたい。』 と伝えれば、すぐに手続きを行ってもらうことができたケースや、日本語が不自由な子供については、担任とは別に加配教員を一人付ける等して対応している自 治体もあるのだから、諦めずに、自治体や教育委員会に働きかけるべき。」とのアドバイスをしました。また、これに関連した文部科学省の通知(「外国人の子 どもの就学機会の確保に当たっての留意点について」平成24年7月5日付け24文科初第388号、文部科学省初等中等教育局長)の存在も紹介しました。

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2 最後に、いわゆる「ハーグ条約」(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)の概要につき、当委員会側から情報提供しました。①一方の親の 監護権を不法に侵害した、②16歳未満の子の、③国境を越えた移動があった場合は、子どもが元に住んでいた残された親の申立により、連れ去られた先の国の 中央当局の働きかけ又は同国の裁判所の裁判により、原則として子は元の居住国へ返還されることになる等の同条約の基本構造の説明のほか、日本では2014 年度には条約が発効する見込みであること、その場合でも発効前の移動に関しては遡及的な適用がないこと等の補足説明を行いました。

(文責:弁護士 片山 里美)

労働分科会

労働分科会では、基調講演をお願いした鳥井一平氏にご参加いただき、参加団体から事前に提出いただいた質問やその場で出た質問に対し、鳥井さんにご回答いただき議論を進めていきました。

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質問には、以下のようなものがありました。以下、Q&A形式のダイジェストでご報告いたします。

Q1 近頃、特にネパール人等の短期滞在(観光ビザ)から、難民申請→特定活動の在留資格取得→6か月後の就労(職種を問われない)可、となり、ブローカー介在で来日しているようですが、今後新たな問題を発生させないでしょうか。

A「ネパール人の中でも、難民申請をしている人としていない人とに分かれるとの認識です」、との発言が参加者の中からありました。難民申請は一度行 うと異議の結論が出るまで3~4年はかかること、適法に入国して難民申請を行い、特定活動の在留資格を付与されていれば、その間は特定活動の在留資格を更 新でき、風俗関連以外の仕事であれば、働くこともできること、他方で、仮放免や仮滞在などの身分で難民申請を行う場合には、就労はできないことなどが指摘 されました。ポイントは観光ビザなどで適法に入国できるか否かで、そこが分かれ道になるとの指摘もありました。ブローカーの介在について、現時点で何か問 題とされている事項があるという認識を持たれている方はいないようでした。

Q2 実習生問題について、新しい規定になっても研修機構と協同組合で分業と見せて、責任の所在をあいまいにして逃げ、結局は実習生らを帰国させる解決にしていると感じますが、このような事例は多いのでしょうか。

A 鳥井さんは、強制帰国の件数はかなり多いこと、その中で鳥井さんらのもとに辿り着く件数はかなり限られていることに言及されました。

Q3 Q2に関連して、研修生問題については、今後どのように対応していくべきですか、改善すべき点は何ですか。

A 鳥井さんは、都市部にシェルターがなくなってしまったことの問題点を指摘されました。また、人身取引については、性搾取の事例では入管法50条 1項3号の「人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するもの」として在留特別許可が認められた前例があるものの、労働搾取については、未だ一 度も在留特別許可認定がなされたことがなく、日本における人身取引そのものの認知度や、とくにその人身取引に労働搾取も含まれるという認識の薄さなどの問 題点も浮き彫りとなりました。
今後必要とされる取り組みとしては、人身取引の被害者は、国に帰りにくい状況に置かれている人が多いため、日本でなんとかフォローをしていく制度づくりが不可欠であるとの指摘もなされました。

Q4 鳥井さんは、講演の中で、明らかに労働基準法違反の証拠となるような給与明細が実習生に堂々と渡されているという事実に言及されました。給与 明細がある場合には労働基準法違反の立証が容易にできますが、証拠を残さないように給与明細すら渡していない受入先は多いのではないでしょうか、そのよう な場合にはどのように立証していくのでしょうか。

A これに対し鳥井さんは、そのようなケースも多くあるので、本人たちにしっかりとノートを付け、勤務時間の記録を残すように指導することが重要だと指摘されました。

Q5 研修生問題に関連して、津田沼や船橋で日系人を次々と解雇し、代わりに研修生を雇用するというケースが多発していますが、どうしてですか。

A この点に関し鳥井さんは、技能実習制度を利用すれば、強制的にローテーションが組まれることとなり、労働者の定住を防止することができる、日系人で失敗した、との意識が雇用者の間であるのだとコメントされました。

技能実習生の問題を解決するためには、日本政府が外国人の労働者を正面から認め、技能実習生を正面から労働者として扱うことが必要だとの指摘もありました。

(文責:弁護士 高山 由紀)

留学生分科会

留学生分科会(以下「本分科会」といいます。)では、例年多くの大学関係者、日本語学校・専門学校関係者、留学生支援に関わる支援団体の関係者の方々のご参加を頂いております。

本年度も、弁護士を含め総勢約20名の方々に本分科会にご参加頂き、日頃の業務において対応に困っている事項、疑問を感じている事項、弁護士に法的なアドバイスを求めたい事項等について、活発な意見交換が行われました。

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本分科会の特徴としては、参加者の方々が議題に関して共通した問題意識を有している場合が多く、弁護士による法的見解に加え、他の参加者らの意見や 具体的な対応方法に強い関心を抱いておられるという点があります。そのため本分科会においては、参加者の方々より積極的にご意見を述べて頂くこととしてお り、弁護士にとっても、実務担当者の生の声を聞くことができる貴重な勉強の場となっています。

分科会における進行方法としても、事前に参加者の方々より本分科会において議題とすることを希望する事項についてアンケートを頂いた上で、議題の提 供先の開示に予めご了解を頂いている場合には、議題の提供者ご自身に議題として取り上げることの趣旨や問題意識、具体的な対応方法等について説明をして頂 いた上で、意見交換を行っています。

本年度の本分科会においても、いくつかの議題について議論がなされましたが、その内の一つとして、以下の議題についても議論がなされました。

文科省からは、留学生の授業への出席状況、成績、アルバイトの状況等を把握し、長期欠席者や成績不良者には退学勧告を行うよう求められています。また、退学者等については、確実に帰国させることも求められています。
これらの対応について、学生数の多い大学では十分な対応を取ることが困難ですが、各大学におかれては実際にどの程度どのようなご対応をとられているのか知りたいです。

上記議題について、大学関係者の参加者の方々より、各大学における具合的なご対応方法についてご説明を頂きました。また、上記議題に関して、大学や日本語学校を退学・除籍等となった留学生の出国状況等を把握する方法の有無を知りたい、等のご質問もされました。

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これに対し、本分科会に参加した弁護士からは、入管から出入国記録を取り寄せる弁護士会照会という制度があるが、具体的な事件の受任を前提としない と利用は困難である、留学生の出席確認するにあたって、他の日本人学生と異なる扱いを留学生にだけ行うことには問題があるのではないか、退学者等が在留期 間の範囲内で帰国しなかった場合の補助金削減等のペナルティーを、そのための確実な方途を有しない大学、専門学校、日本語学校側に課すこと自体に問題があ るのではないか等の意見が述べられました。

また、そのほかにも、文科省や法務省からは留学生に関する情報提供を強く求められているが、入管には個人情報保護の観点から情報の開示を拒絶される 場合が多く、大学としても情報にアクセスすることが困難であり、弁護士会として入管に何らかの意見表明を行って頂けないか、等の要望も出されました。

本年度も参加者の方々に積極的に議論にご参加して頂いたことにより、充実した意見交換がなされ、閉会となりました。

(文責:弁護士 李 哲芝)

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