- 国際業務推進部会
- 新着情報
- 弁護士お試し制度
- 自治体連携センター
- 終活コラム
- (18)離婚した人の終活①
- (17)任意後見契約等 3
- (16)望む葬儀をしてもらうには
- (15)「住まいの終活」空き家発生防止のために
- (14)終活の開始時期と思い立ったときにだれに(どこに)相談すべきか?
- (13)相続土地国庫帰属制度について
- (12)任意後見契約等 2
- (11)祭祀承継者
- (10)遺言でできること
- (9)高齢者の賃貸借契約と死後事務委任
- (8)終活って何をすればいいの?
- (7)エンディングノートで出来ること、出来ないこと ─エンディングノートの法的効力─
- (6)令和3年改正民法・不動産登記法と終活
- (5)商事信託と民事信託
- (4)任意後見契約等
- (3)遺言
- (2)死後事務委任
- (1)認知症に備えた資産活用(家族信託)
- 弁護士による終活支援
(18)離婚した人の終活①
子どものいる人が離婚して、その後、再婚しないまま亡くなると、その遺産はどうなるのでしょうか。もちろん、相続人は子どもだけなので、法律上は子どもが100%相続する権利があります。
しかし、母親が幼い子どもを連れて出ていき、父親が子どもと会わないまま数十年経過したあと亡くなった場合のように、親子関係が希薄だと、将来の相続発生時に思いもよらない事態になる可能性があります。たとえば、次のようなケースです。
独身のAさん(30代)はある日、親戚から、父親(70代)が亡くなったという連絡を受けました。最後に会ったのは、Aさんが小学生のとき。長い時間がたち、すでに父親の顔さえよく思い出せません。父親が住んでいたアパートを訪ねると、大家さんからこう言われました。
「お父さんが滞納した家賃の支払いと、残置物の処分をお願いしたい」
Aさんは戸惑いました。父親といっても20年以上会っておらず、生活ぶりや、どんな財産があるのかも全くわかりません。そんな状態で手続きをしていいのか、Aさんは悩みました。
法律にくわしい知人に相談すると、「もし父親に高額な借金があった場合、Aさんが家賃を支払ったり残置物を処分したら、相続放棄ができなくなるかもしれない」と言われました。Aさんは、とてもそんなリスクは負いたくないと考え、結局、相続を放棄することにしました。家庭裁判所で「相続放棄」の手続きをすませたAさんは、これで厄介なことに巻き込まれずにすむと、ホッと胸をなでおろしました。
しかし、困ったのはアパートの大家さんです。Aさんの他に相続人がいないため、弁護士に頼み、家庭裁判所で「相続財産清算人」を選任してもらいました。さまざまな手続きを経て、ようやく大家さんが家賃の支払い等を受けられたのは、相続発生から1年ほどたってからでした。
ところで、実は父親には生前、部屋に通って世話をやいてくれるBさんという女性がいました。一緒にお酒を飲んだとき、父親はこう言ったそうです。「実は、俺には子どもがいるんだけど、とっくに縁を切って連絡先もわからないから、将来、俺が死んでも財産をやるつもりはない。そのときは、君が全部もらえばいいよ」
しかし、父親は遺言書を残さなかったため、Bさんが財産をもらうことはできません。調べたところ、家庭裁判所で「特別縁故者」と認めてもらえれば財産をもらえる可能性があるようですが、手続が大変そうだったのであきらめました。最終的に、Aさんの残りの財産は、国庫に入ることになりました。
このように、離婚して疎遠になった子どもがいる人の場合、「もう子どもとは縁を切ったんだから、遺産相続は関係ない」と考えがちです。しかし、時間がたっても親子関係がなくなるわけではなく、親の死後、相続人として登場することになります。そのとき、子どもが財産を相続するか、このケースのAさんのように相続放棄するかは誰にもわかりません。
もし、いま大切にしている人がいるのなら、その人に財産を遺贈して、子どもには最低限の財産を相続させるなどの遺言をすることが考えられます。将来、スムーズに遺言の内容を実現するためには、法律の専門家である弁護士を遺言執行者に指定して、公正証書遺言にすると良いでしょう。さらに、一人暮らしの人が亡くなると、アパートの大家さんなどまわりの人が困る可能性があるので、それが心配なら、弁護士と「死後事務委任契約」を結んで死後の事務処理を頼んでおくと安心です。葬儀や納骨についても依頼できます。
「私の場合、将来の遺産相続はどのようになるんだろう」と疑問に思った方がいれば、ぜひお気軽に弁護士にご相談ください。
(本田桂子)