東京弁護士会

ヤミ金融対策法の制定等を求める意見書

2003年(平成15年)3月24日
東京弁護士会
会 長 伊礼勇吉

第1 意見の趣意

 被害救済とヤミ金融摘発を進める観点から出資法第5条に違反する貸付の民事無効やヤミ金融業者の広告・勧誘・取立を刑事罰をもって規制をする等の「ヤミ金融対策法」の緊急立法を立法当局に対して求めるとともに、裁判所・行政当局・警察に対しても個別被害救済や被害防止・摘発の観点から適切な措置をとるよう求めるものである。

第2 意見の理由

1. ヤミ金融被害の深刻化
近時、「10日で4割」(トヨン)、「10日で5割」(トゴ)などという出資法上限金利を大幅に上回る超高金利で貸金業を営む「ヤミ金融」による被害が続発している。すなわち東京都知事登録業者のうち登録して3年未満の登録番号が「都(1)」のいわゆる「トイチ」業者の大半は、適法業者を仮装して、スポーツ紙等への広告を出したり、ダイレクトメールや電話等で勧誘を行い、実際には契約書面等の交付なしに3万~5万円といった少額の貸付を違法な超高利で行っているものと考えられている。
また、ヤミ金融の手口は多様化・巧妙化しており、資金難に陥っている中小零細事業者を食い物とする「システム金融」や出資法の金利規制を免れるためリース契約を仮装する「家具リース」、「車リース」、年金証書・銀行通帳・キャッシュカード・印鑑などを預かり、実質的に年金を担保にとる「年金担保金融」、事務所を持たずに携帯電話一本で貸付を行う「090金融」、代金後払いの金券販売を仮装して金融を行う「チケット金融」といった実に様々な形態のヤミ金が市民から暴利を貪っている。
むろん、これらは、いずれも出資法違反の高金利を収奪する犯罪行為であり、摘発されるべき対象である。
そして、これら違法高利ヤミ金業者は、貸金の回収という名目で、手段を選ばず金を取り立てることに狂奔しており、借主の自宅や勤務先に押しかけるだけでなく、子どもの学校にまで押しかけて恐喝行為を行ったり、自宅の不法占拠、関係者の拉致監禁といった暴力的・脅迫的行為に及んでいる。自殺や夜逃げに追い込まれる多重債務者も決して少なくない。
ヤミ金融の全てではないにせよ、その一部が確実に暴力団に流れており、その資金源となっているのは由々しき事態である。

2. これまでの摘発・取締り等の不十分さ
他方、ヤミ金融業者の行為は、出資法違反・貸金業法違反・恐喝・脅迫といった明らかな犯罪行為であるにもかかわらず、警察当局は、かつては摘発に消極的であった。昨今は、取締りの強化に努めているが、激増するヤミ金融に手が回らないのが実情である。
また摘発に至った事件でも、数億から数十億円単位の不当な利益を上げながら、罰金や執行猶予等で終了するケースが多かったため、刑罰の威嚇力も不十分であったといえる。
登録ヤミ金融業者が集中している東京都に苦情が殺到したことを受けて、東京都も、悪質な業者に対する摘発・行政処分を積極的に行うとともに、2002年3月には東京都議会は、登録制度から営業許可制度への変更・業務改善命令制度の創設・営業保証金制度の創設等を内容とする「貸金業の規制等に関する法律の改正に関する意見書」を採択している。
東京都においても、上記のとおりヤミ金融対策に力を入れているが、現行法下では、対応策も限られ、また増え続けるヤミ金融業者に対応しきれていない状況であり、東京都の取り組みを後押しするためにも早急な立法的手当てが必要である。
また、ヤミ金融に対する債務不存在確認・不当利得金返還請求等の民事訴訟においてもヤミ金融の実態を看過した、被害救済に十分でない裁判例が遺憾ながら散見される。ヤミ金融の「貸付」行為とそれに伴う、執拗な暴力的・脅迫的取立行為は犯罪行為であり、そもそも「金銭消費貸借契約」として保護に値する代物ではないのであって、ヤミ金融の不法な利益が法的に保護される結果になってはならない。

3. 当会のヤミ金融対策への取り組み
当会はヤミ金融撲滅に関して、率先して取り組んできた。すなわち、2002年10月9日には、第一東京弁護士会および第二東京弁護士会とともに、違法高金利業者に関する三会会長共同声明を発表し、出資法違反の高金利による貸付を業として行う者はその貸付行為自体が犯罪行為であり、民事上その貸付行為は公序良俗違反となり、ヤミ金融から受領した金銭が不法原因給付となり返還義務がないこと、ヤミ金融に対して支払った金銭を不当利得として返還請求すること、刑事告発・行政申告等を積極的に行うこと等を内容とした「違法高利業者対応の東京三弁護士会統一基準」に則って、当会所属弁護士がヤミ金融が関わっている債務整理に毅然と対処すること等を明確に宣言した。そして、四谷・神田法律相談センターを中心とするクレジット・サラ金法律相談における当会会員らによるヤミ金対策及び受任体制を強化し、他会と協力しつつ、率先してその対策に取り組んできた。上記両センターでの相談件数は、2002年10月の1ヶ月で1914件を数えているが、そのうち4割程度がヤミ金融が関与する事案であると推計されており、相談件数、ヤミ金融の関与割合は増加の一途をたどっている。
また同年10月12日には東京三弁護士会により、「違法高金利金融業者による被害者のための無料相談会」を開催し、多数の被害者の相談を受け、必要な案件については担当弁護士が直接受任した。同年12月13日には「ヤミ金110番」を設置し、被害にあっている市民からの電話相談を受け付けたところ、時間中、相談を求める電話の呼び出し音が鳴りやむことはなく、合計133件の相談に対処した。
当会は今後とも、ヤミ金融を撲滅し、被害に遭っている市民を救済するため、一層その努力に邁進するものであるが、抜本的・根本的なヤミ金融対策のためには立法による手当が是非とも必要である。

4. 早期のヤミ金融対策法制定を
下記のような内容のヤミ金融対策法の立法を求めるものである。
(1) 契約の無効及び不法原因給付たることの明文化
出資法第5条1、2項、及び同法附則8項「日賦貸金業者についての特例」に違反する金利の約定を含む貸金契約は無効とする。
前項の貸金契約をした貸主は、貸金契約によって交付した金員の返還を請求することはできない。
(2)ヤミ金融業者の行為規制
ヤミ金融業者の出資法第5条、貸金業規制法第11条無登録営業の予備的な行為(広告・勧誘・銀行口座開設等)を刑事罰をもって規制すべきである。
(3)ヤミ金融による取立行為の禁止
ヤミ金融業者、同従業員、及び同者らから債権の取立の依頼を受けた者(又は受けたと自称する者)又は債権譲渡を受けた者(又は受けたと自称する者)が、借主、その保証人及びその他の者に対し、ヤミ金融業者が貸付けた金員の返還を求める行為を行った場合には、その行為を罰則をもって禁止する。
(4)警察官の責務の明確化
警察官は通報等により、債務者又はその親族等の関係者がヤミ金融業者などから取立を受けている疑いがある場合には、取立の制止等債務者らが取立によって被害を受けることを防止するために必要な措置を講じなければならない。
(5)営業許可制・営業保証金制度の創設
貸金業の登録にあたって、1000万円程度の営業保証金制度を導入すること。 また行政監督権限を強化すること。
(6)罰則の強化
出資法第5条1、2項違反、貸金業規制法第11条違反等の各罰則を大幅に強化する。また、不法収益については没収できるものとすべきこと。

以上
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