東京弁護士会

電子登録債権法制に関する中間試案についての意見書

2006年(平成18年)8月24日
東京弁護士会
会長 吉岡 桂輔

【総 論】

1 電子登録債権の有用性

 売掛金・買掛金管理のIT化・電子化が進んだ現在、売掛金・買掛金の電子的な管理を可能とする電子登録債権は有用な機能を果たすものと考えられる。
また、電子登録債権は、いわゆるシンジケートローンや、グループ企業間取引のキャッシュマネジメントシステムでの利用も期待できるものである。

2 課題

 反面、電子登録債権には、以下のような課題があることは否定できない。
第一に、電子登録債権には、登録の権利推定効、譲渡に伴う人的抗弁の切断及び善意取得といった強力な効果が認められており、これに着目した濫用のおそれがあるということである。特に、電子登録債権については、消費者が債務者となりうることが前提とされている。住宅ローンの流動化等の場面を考えると、これを一律に否定することはできないと考えられるが、そうであるならば、消費者保護の観点は絶対に必要なものであると考えられる。かかる観点からすると、本試案が、消費者が債務者であるときには、人的抗弁の切断を認めないなどの措置を講じていることや、手形訴訟類似の簡易な訴訟類型を設けないとしたことは評価できるものと考えられる。
しかし、例えば、貸金業者が顧客である債務者に対する貸付債権を電子登録債権化する場合の規律については、かかる電子登録債権化を認めるか否かという点をも含めて、これからも十分に検討する必要がある。特段の措置を講じないまま電子登録債権制度を導入すれば、例えば、貸金業者が顧客である債務者に対する貸付債権を電子登録債権化し、その電子登録債権に基づき取立てを行う場合には、貸金業の規制等に関する法律に基づく取立行為規制が働かないということにもなりかねないが、このような事態は絶対に避けなければならない。このように、濫用防止の観点から検討されるべき課題はいまだ多く残されていると言わなければならない。
第ニに、電子登録債権サービスの利用が促進されるためには、登録に対する信頼ができうる限り保護されなければならないということである。
不実の登録がなされ、登録に対する信頼が裏切られるような事態が頻繁に生じるようであれば、電子登録債権の利用が阻害されることは明白である。そのためには、管理機関には、ハッキング等にあうことのない安全なシステムを構築し、また、本人確認・権限確認等を厳格に行う責務を負うというべきであり、管理機関設立の認許可の基準もかかる観点から厳しく設定されるべきである。
第三に、電子登録債権制度の創設にあたっては、わかり易い制度設計を行う必要があるということである。電子登録債権サービスの利用が促進されるためには、制度が一般人にも理解できるわかり易いものであることが必要であることは当然のことであろう。
第四に、電子登録債権の登録については、その多くの部分が管理機関の業務規程に委ねられることとされているが、業務規程の内容によっては、利用者に不測の損害が生じかねないということである。
前記のとおり、電子登録債権については様々な利用形態が考えられ、その利用形態毎に管理機関が設立され、各管理機関が利用形態に即した業務規程を制定するということは認められてよい。また、管理機関がよりよい利用規定を創意工夫することによって競争することは、利用者に対するサービス向上という観点からも是認できるものである。
しかし、業務規程のあり方をすべて管理機関に委ねてしまうと、一方的に管理機関に有利な業務規程が制定されて利用者の利益が害されてしまうという事態も考えられるのであるから、業務規程のあり方については、監督官庁による適切な監督・指導がなされることが要請されるというべきである。
第五に、電子登録債権は、指名債権・手形債権等既存の債権と異なる類型の債権とされており、今後の利用の実情等をみながら、将来におけるグローバル化・条約化をも視野に入れて、適切な法理論の構築と制度の見直しが期待されるということである。
以上のような観点をも加味しながら、以下、本中間試案に対する意見を述べる。

【各 論】

第1 総則

1 電子登録債権の概念

電子登録債権(仮称)は、(1)電子登録債権を発生させる原因となった法律関係に基づく債権とは別個の金銭債権であって、(2)当事者の意思表示に加えて、管理機関(仮称)が作成する登録原簿(仮称)に登録をしなければ発生及び譲渡の効力が生じない債権であって、(3)指名債権・手形債権等既存の債権と異なる類型の債権とするものとする。

(注)電子登録債権は、意思表示に基づいて発生する債権の一種であるから、電子登録債権法制において別段の定めをしない限り、民法の規定が適用される。
例えば、権利能力や行為能力については、 民法の一般原則によって規律されることになる。

【意見】
賛成する。

2 電子登録債権に係る意思表示

(1) 電子登録債権の発生・譲渡等の要件等としての意思表示

  • [A-1案] 電子登録債権の発生・譲渡等の効力が生ずるには、管理機関による登録の他、当事者間の契約及び当事者による登録の申請が要件となるものとする。この場合において、登録の申請は当事者の双方がしなければならないものとする。ただし、管理機関は、当事者の双方が登録の申請をしたことを確認すれば足りるものとする。
  • [A-2案] 電子登録債権の発生・譲渡等の効力が生ずるには、管理機関による登録の他、当事者間の契約及び当事者による登録の申請が要件となるものとする。この場合において、登録の申請は当事者の双方がしなければならないものとし、当該契約の申込み及び承諾は、それぞれ当事者の登録の申請及び管理機関による申請内容の相手方に対する通知により行わなければならないものとする。ただし、一方の当事者が相手方を代理して申請をする場合又は当事者が共同して申請をする場合には、管理機関は、申請内容を相手方に通知することを要しないものとする。
  • [B-1案] 電子登録債権の発生・譲渡等の効力が生ずるにつき、当事者間の契約は要件ではなく、当事者による登録の申請及び管理機関による登録のみが要件となるものとする。この場合において、登録の申請は当事者の双方がしなければならないものとする。
  • [B-2案] 電子登録債権の発生・譲渡等の効力が生ずるにつき、当事者間の契約は要件ではなく、当事者による登録の申請及び管理機関による登録のみが要件となるものとする。この場合において、登録の申請は債務者・譲渡人等のみが行えば足りるものとする。

(注) B-2案は、債務者・譲渡人等による登録の申請及びこれに基づく管理機関による登録が行われれば、それだけで、発生登録に債権者として登録された者又は譲渡登録に譲受人として登録された者が電子登録債権を取得し、当該取得について何らの契約も要しないとするものである。

(注1) 上記のいずれの案を採用したとしても、電子登録債権に係る意思表示(当事者間の契約締結の意思表示及び管理機関に対する登録申請の意思表示の双方を含む。)については、原則として、民法の意思表示に関する規定(93条以下)が適用されるが、電子登録債権の流通性を考慮して、 第三者の保護について民法の特則を設けるものとする((2)参照。)

(注2) A-1案及びB-1案における当事者双方の申請には、共同申請のほかに、当事者のそれぞれが別の時期に同じ内容の申請をすることも含まれ、また、例えば、当事者の一方が管理機関宛に送信した申請書ファイルに当事者双方の電子署名がされているものも、共同申請に該当し、したがって当事者双方の申請に含まれることになる。
なお、このような当事者双方の登録申請について、各管理機関は、業務規程で、その方式を限定すること(例えば、共同申請の方式によらなければならないものとすること)もできる(4(3)参照)。

(注3) 上記の各案における「発生・譲渡等」の「等」とは、登録保証、質権設定などを指している。

【意見】
B-1案に賛成する。

【理由】

  1. 権利・義務の発生は当事者の意思に基づくというのが民法の一般原則であり、かかる観点からすると、債権者の関与なしに電子登録債権が発生するというB-2案は採ることができない。B-2案による場合には、債権者は、その意思の関与なしに電子登録債権の受領を強制されることになるが、これは、利益の享受についても自らの意思によらずに強制されることがないという民法の一般原則(民法537条2項等)に反するとともに、例えば、親事業者が下請業者に対して、その承諾なくして電子登録債権を発生させて、事実上、電子登録債権発生登録の際に一方的に定めた支払条件を強いるという弊害が生じるおそれがある。加えて、B-2案には、債権者の意思が表示されていない場合に電子登録債権に対する差押えがなされたときの、その差押えの有効性や、これを有効とした場合の事後の法律関係の処理、電子登録債権の債権者となった者が、その事実を知らずして原因関係上の債権を譲渡した場合における、電子登録債権と原因関係上の債権の行使の優劣などに関して極めて複雑な法律問題を生じさせることになる。
    B-2案を採る論者は、(1)手続的に簡略であること、(2)手形において、手形を送付すれば、それで処理が終了していることと整合的であること、(3)債権者の申請を要するとすると、手形を巡る現在の実務処理よりも手間・手続負担がはるかに増加することをその論拠として挙げる。しかし、(1)については、手続的に簡略であることが上記民法の一般原則を修正すべき理由となるとは考えられないし、簡略な手続を認めるがゆえに上記のような問題点が生じるという点が考慮されるべきである。次に、(2)については、手形の場合には、手形の送付を受けた者は、少なくとも手形が自分宛に送付されたということは直ちに認識できる(したがって、例えば、原因関係上の約定に反する手形を一方的に送りつけられたような場合には、直ちに約定に沿った手形を送り直すように指示するなどの措置を講じることができる)のに対し、電子登録債権の場合には、自らが債権者となったという認識を直ちに持ち得ないのであるから、手形の場合と電子登録債権の場合を同列に論じることはできない。また、(3)については、多くの場合、電子登録債権は債権者と債務者の共同申請によって発生登録等がなされるか、または、債務者が管理機関において発生登録等の申請を行った後、債権者が管理機関の開設するウエブサイト上において、「電子登録債権の発生を承諾する」旨のボタンをクリックするなどの簡便な方法によって債権者による申請がなされると考えられ、電子登録債権を正常な原因関係に基づいて発生させたとすれば、債権者がかかる簡便な方法による申請まで拒否するということは考えられない。また、債務者が、債権者が申請を行ったかの確認を要するという点についても、手形を送付した場合に、手形が届いたか否かを確認する手間・手続負担よりも重くするものであるとは考えられない。以上の理由により、B-2案はにわかには賛成できない。
  2. 2 もっとも、電子登録債権制度を創設する以上、それが利用されるものでなければならないことは当然のことである。
    上記のとおり、債務者の申請を要することとすることによる負担は軽微なものであると考えられるが、債務者の申請を要することによって制度の利用が著しく阻害されるというのであれば、債務者の申請を要しないとし、B-2案を採用することもやむをえない。しかし、その場合には、上記の弊害をどのように防止し、また、上記の法律問題にどう対処するかを明確にしておく必要があると考えられる。具体的には、親事業者が下請業者に対して、その承諾なくして電子登録債権を発生させて、事実上、電子登録債権発生登録の際に一方的に定めた支払条件を強いるという弊害が生じるおそれがあるという点については、下請代金支払遅延等防止法上、電子登録債権をどのように位置づけるかを明確にする必要があるであろう。また、電子登録債権の債権者の意思が表示されていない場合に電子登録債権に対する差押えがなされたときの、その差押えの有効性や、これを有効とした場合の事後の法律関係の処理、電子登録債権の債権者となった者が、その事実を知らずして原因関係上の債権を譲渡した場合における、電子登録債権と原因関係上の債権の行使の優劣という法律問題については、いずれの場合にも、電子登録債権の債務者は電子登録債権に係る債務と原因関係上の債務の双方について支払義務を負う(二重払いの危険を負う)と解釈するのが一つの解決策と考えられるが、かかる結論が、果たして現実の利用者に受け入れられるものなのかを見極めるとともに、仮に、それでやむをえないとするのであれば、このような二重払いの危険があることを利用者に周知徹底すべきであろう。なお、この点については、いわゆる債務負担行為と権利移転行為とを区別し、前者については債権者の申請が不要であるが、後者については債権者の申請が不要とする理論を構築することも考えられないではない。
  3. 3 A-1案は、登録外の契約が存在しないことが、いわゆる物的抗弁事由となるとするものであるが、かかる登録外の契約の存否は、電子登録債権の譲受人が知りえる事由ではないのであるから、このような結論は電子登録債権の流通性を著しく害することとなり、採ることができない。
  4. 4 A-2案は、管理機関が一方の当事者の意思を他方の当事者に通知することにより契約の成立を認めようとするものであるが、管理機関がいかなる立場で一方の当事者の意思を他方の当事者に通知するのかが不明であるとともに(おそらく、使者ということになると考えられる)、管理機関が一方の当事者の意思を誤って通知したり、通知することを失念したりした場合の処理が困難である(おそらく、錯誤によって処理することになると考えられる。)。A-2案によれば、債権者と債務者の双方の申請があっても、管理機関による申請内容の通知がなされなければ、そのことが物的抗弁事由となることになると考えられるが、そのような結論は当事者の合理的意思に反するとともに、電子登録債権の流通性を害すると考えられる。
    もっとも、このような事態が生じることはほとんど考えられないことからすると、A-2案とB-1案とでは、現実の運用はほとんどかわらず、その差異は、法律関係の説明の巧拙というところに帰着するとも考えられる。
  5. 5 B-1案は、契約によらずして電子登録債権の発生等を認めるものであるが、民法上、契約によることなくして権利・義務が発生する場合もあることや(いわゆる合同行為による場合等)、A-2案も、その但書の場合には、必ずしも契約によるものとみることができないことからすると、契約によらずに電子登録債権の発生を認めるB-1案は必ずしも不当なものとは考えられない。以上の理由により、B-1案に賛成する。
  6. (2)意思の不存在・意思表示の瑕疵と第三者保護

    a. 電子登録債権に係る意思表示をした者は、善意かつ無重過失の第三者(詐欺による取消しにあっては、取消し後の第三者に限る。)
    に対して、心裡留保若しくは錯誤による無効又は詐欺[若しくは強迫]による取消しを対抗することができないものとする。

    b. 電子登録債権に係る意思表示をした者が消費者(消費者契約法2条1項に規定する消費者をいう。以下同じ。)である場合には、民法の特則であるaは適用しないものとする。

    【意見】
    賛成する。なお、aについては、強迫による取消しについても善意かつ無重過失の第三者に対抗することができないとすべきである。

    【理由】

     電子登録債権の流通性を高めるためには、強迫による取消しについても善意かつ無重過失の第三者に対抗することができないとすべきである(強迫の程度が著しい場合には、意思能力を欠いた状態での意思表示として無効とすることにより、表意者の保護は一定程度図られることになる。)。

    (3) 他人のためにする電子登録債権に係る意思表示

     (前注)他人のためにする電子登録債権に係る意思表示の方法としては、代理方式(代理人の氏名等を明らかにして意思表示を行う方式)と機関方式(代理人の氏名等を明らかにせず意思表示を行う方式)があるが、そのいずれについても、原則として、民法の規定が適用される。
    例えば、他人のために電子登録債権に係る意思表示をした者が、その権限を有しなかった場合(代理方式における無権代理の場合と、機関方式における本人の名義の冒用の場合)、当該行為は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない(民法113条)が、表見代理の規定(民法109条、110条、112条)が適用又は類推適用されたときは、本人に効果が帰属することとなる。
    また、本人が追認をしたときは、別段の意思表示がない限り、登録のときに遡って効力を生ずるが、第三者の権利を害することはできない(民法116条)ただし、次のa及びbについては、民法の特則を設けるものとする。

    a. 追認・追認拒絶の相手方

     追認又はその拒絶は、電子登録債権に係る債務の債務者(発生登録における債務者及び登録保証人をいう。以下同じ。)又は電子登録債権の譲渡人がこれを行う場合にはその時における電子登録債権の債権者として登録されている者に対して、[電子登録債権の債権者又は譲受人がこれを行う場合にはその時における電子登録債権に係る債務の債務者として登録されている者に対して、それぞれ] しなければならないものとする。

    (注) ブラケットは、電子登録債権の発生・譲渡等の要件等としての意思表示((1)参照)につきB-2案を採る場合には不要になる規定であることを示すものである。

    b. 他人のためにする意思表示をした者の責任

     他人のために電子登録債権に係る意思表示をした者に対する民法117条2項の規定の適用については、同項中「過失」とあるのは「重大な過失」と読み替えるものとする。

    (注1) 手形法8条2文・3文と同様の規定は設けないものとする。

    (注2) 他人名義を冒用して電子登録債権に係る意思表示をした者についても、無権代理人の責任の規定が適用又は類推適用される。

    【意見】

     賛成する。

    (4)申請を行うべき者が複数いる場合の登録の申請

    a. 債務者又は債権者が複数いる場合など登録の申請を行うべき者が2人以上である場合には、その全員が申請を行わなければならないものとする。

    b. 申請を行うべき者の一部に登録の申請をすべきことを命ずる確定判決又はこれと同一の効力を有するものがある場合には、他の申請を行うべき者のみで登録の申請をすることができるものとする。

    【意見】

     賛成する。

    3 電子登録債権と原因関係等

     発生登録・譲渡登録等の電子登録債権に係る登録の原因となった法律関係(原因関係)の有効性は、当該電子登録債権の有効性の要件とはしないものとする。

    • (注1) 原因関係が無効であることは、原因関係の当事者間における人的抗弁となる。
    • (注2) (1)一定の原因関係に基づいて電子登録債権を発生させる場合に、原因関係上の債権(原因債権)が消滅するかどうか、また、(2)原因債権と電子登録債権が併存する場合に、いずれを先に行使すべきかについては、当事者の意思に委ねられる方向で、なお検討する。
    【意見】
     賛成する。なお、(注2)については、当事者の意思に委ねられるとすることに賛成する。
    【理由】
     電子登録債権の発生が原因関係にどのような影響を与えるかは、ひとえに当事者の意思解釈の問題であり、特別な規律を設ける必要はないものと考えられる。
    4 登録
    1. (1) 登録のあり方
      • a. 管理機関は、この試案に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請がなければ、登録をすることができないものとする。
      • b. 管理機関は、法令及び業務規程に従い適式な申請がされた場合等には、遅滞なく、当該申請等に基づき登録をしなければならないものとする。
      • c. 管理機関は、同一の電子登録債権に関し、登録の申請が2以上あったときは、申請があった順序に従って登録をしなければならないものとする。
      • d. 管理機関は、各電子登録債権ごとに区分して登録原簿を作成しなければならないものとする。
      • e. 登録原簿は、磁気ディスクをもって調製しなければならないものとする。
        • (注) 登録原簿は、管理機関の事業の承継等がされる場合以外は、他の管理機関に移転されないものとする。
    【意見】
     賛成する。ただし、bに「遅滞なく」とあるのは、「直ちに」とすべきである。
    【理由】
     登録に対する信頼を高め、関係者の利益を保護するためには、適式な申請等がなされた場合の登録は、申請等の後直ちに行われるべきである。
    1. (2) 不実の登録の訂正
      • a. 管理機関は、次のいずれかに該当する場合には、当事者の申請によらずに、登録事項の訂正をすることができるものとする。ただし、登録原簿上の利害関係を有する第三者があるときは、当該第三者の同意があるときに限るものとする。
        1. 1.申請の内容と異なる登録がされている場合
        2. 2.申請がないにもかかわらず、申請を要する事項について登録がされている場合
        3. 3.管理機関が自らの権限により登録すべき事項について、事実と異なる登録がされている場合
          • (注) 管理機関が不実の登録内容の訂正をする場合、その前又は後に当該登録申請の当事者に対して、その通知をしなければならないものとするかどうかについて、なお検討する。
      • b. 管理機関がaにより登録内容の訂正をするときは、訂正日及び訂正事項をも記録しなければならないものとする。
    【意見】
     賛成する。なお、aの注については、少なくとも訂正の後には通知をしなければならないものとすべきである。訂正前の通知まで要するか否かについては、なお、検討を要する。
    【理由】
     登録が不実であるか否かについて、当事者と管理機関の認識が食い違う場合があり、かつ、この点について管理機関の認識が誤っている可能性が存在するのであるから、少なくとも訂正の後の通知は行うべきである。
    (3) 申請の方式等
     管理機関は、この試案に別段の定めがない限り、業務規程で、当事者の申請及びその撤回の方式、申請事項の内容その他申請に関する事項を定めることができるものとする。
    【意見】
     賛成する。
    (4)登録の権利推定効
     登録原簿上、電子登録債権の現在の債権者として登録されている者は、当該電子登録債権を適法に有するものと推定するものとする。
    • (注)「登録原簿上、電子登録債権の現在の債権者として登録されている者」には、支払等登録において支払等をしたことが登録されている登録保証人、民事保証人その他の支払等によって生じた法定代位により電子登録債権を取得した者を含んでいる。
    【意見】
     賛成する。
    (5) 不実の登録についての管理機関の責任
     管理機関は、登録原簿に当事者の申請と異なる内容が登録されたとき、申請がないにもかかわらず登録がされたとき又は管理機関が自らの権限により登録すべき事項について事実と異なる登録がされたときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負うものとする。[ただし、管理機関が[不可抗力によることを][その職務を行うについて注意を怠らなかったことを]証明した場合は、この限りでないものとする]。
    • (注) この責任規定は、(1)管理機関が記録した内容が当事者の申請内容と異なっていた場合、(2)管理機関が過失等により当事者の申請がないにもかかわらず記録をした場合、(3)管理機関が二重に発生登録をした場合、(4)管理機関の従業員で登録原簿の管理権限を有しない者によって記録がされた場合、(5)ハッキングによって記録がされた場合(履歴を記録することなく、発生登録等の内容が変更された場合(変造)を含む。)などについて適用される。
    【意見】
     不実の登録がなされた場合には、管理機関は無過失責任を負うものとすべきである。
    【理由】
     電子登録債権の流通性を高めるためには、登録内容に高度の信頼性が認められるべき必要性がある。また、不実の登録は、管理機関の支配領域内で起こるものであり、これについて管理機関に無過失責任を負わせたとしても酷であるとまで言うことはできないし、管理機関は、リスクを手数料や保険に転嫁することができる。以上により、管理機関は、無過失責任を負うものとすべきである。
    (6)申請権限のない者の申請に基づき登録をした管理機関の責任
    • [A案] 申請権限のない者の申請に基づき登録をした管理機関の不法行為責任については、特段の規定を設けず、民法の規定(709条、715条)によって処理するものとする。
    • [B案] 申請権限のない者の申請に基づき登録をした管理機関の不法行為責任の適用については、過失が推定されるものとする。
    • [C案] 申請権限のない者の申請に基づき登録をした管理機関は、無過失責任を負うものとする。
      • (注) 申請権限のない者の申請としては、無権代理人による申請や他人名義の冒用による登録の申請がある。
      • (後注) 申請者の行為能力の制限や意思の不存在・意思表示の瑕疵を看過して申請を受けた管理機関の注意義務及び責任については、特段の規定を設けない(民法の一般原則に従うこととなる結果、管理機関は、原則として責任を負わない。)ものとする。
    【意見】
     C案に賛成する。
    【理由】
     電子登録債権の流通性を高めるためには、登録内容に高度の信頼性が認められるべき必要性があり、管理機関には、申請権限の確認について厳格な責任を負わせるべきである。かかる理由により、C案に賛成する。
    第2 電子登録債権の発生
    1 電子登録債権の発生の要件

     電子登録債権は、当事者の意思表示に加えて、発生登録をしなければ発生しないものとする。

    【意見】
     賛成する。
    2 発生登録手続
    1. (1)当事者の申請
      • a. 必要的申請事項
        発生登録の申請は、次に掲げる事項に関する情報を管理機関に提供してしなければならないものとする。
        1. 1. 電子登録債権の金額
          • (注)債権額は、確定した金額で申請しなければならないものとする。
        2. 2. 債務者の氏名又は名称及び住所
        3. 3. 債務者が2人以上ある場合において、その債務が不可分債務又は連帯債務であるときはその旨、可分債務であるときは債務者ごとの電子登録債権の金額
          • (注)債務者の共同相続については、可分債務説を採ることを前提として、この試案を作成しているが、可分債務になることは民法の原則どおりであるから、試案に特段の定めを設けていない。この場合における共同相続人名義への登録手続については、第6の2(1)cロ参照。
        4. 4. 債権者の氏名又は名称及び住所
        5. 5. 債権者が2人以上ある場合において、その債権が不可分債権であるときはその旨、可分債権であるときは債権者ごとの電子登録債権の金額
          • (注) 債権者の共同相続の場合の取扱いについては、次の2つの案があるところ、共同相続人間の紛争に管理機関が巻き込まれないようにするという観点をも考慮しつつ、共同相続人名義への登録手続(第6の2(1)cロ参照と併せて、なお検討する。
            • [A案] 電子登録債権は、共同相続の場合には、当然に共同相続人間で相続分に従って分割されるが、一部譲渡が禁止又は制限されている電子登録債権の場合には、当該禁止又は制限に反する形での一部譲渡の登録をすることはできないものとする。
            • [B案] 電子登録債権は、共同相続の場合には、不可分債権になるものとする。
        6. 6. 支払期日
          • (注) 支払期日は、確定日で申請しなければならないものとする。
        7. 7. 申請者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
        8. 8. 代理人によって申請する場合にあっては、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
        9. 9. 管理機関が業務規程で定める事項
          • (注) 電子登録債権の必要的発生登録事項の一部の補充を債権者に委ねる、白地手形類似のものは認めないものとする。
      • b. 法定の任意的申請事項
        発生登録をしようとする者は、業務規程に別段の定めがある場合を除き、発生登録の申請において、aに掲げる事項のほか、次に掲げる事項の記録を求めることができるものとする
        1. 1. 支払方法に関する事項
          • (注) 例えば、支払先口座として登録された口座に振込をして支払をする旨等が考えられる。
        2. 2. 支払期日に関する事項
          • (注) 例えば、期限の利益喪失約款等が考えられる。
        3. 3. 分割払とする旨及び各支払期日における元本の支払額
        4. 4. 利息及び遅延損害金に関する事項
          • (注) 例えば、確定利率や変動利率等が考えられる。
        5. 5. 電子登録債権が債権者を受託者とする信託財産となる場合には、信託財産である旨
        6. 6. 譲渡、登録保証又は質権の設定の制限に関する事項(第3の2参照)
        7. 7. 善意取得及び人的抗弁の切断に関する事項
          • [A案] 発生登録における当事者は、善意取得及び抗弁の切断の規定のいずれをも適用しない旨の登録の申請をすることができるものとする。
          • [B案] 発生登録における当事者は、抗弁の切断の規定を適用しない旨の登録の申請をすることはできるが、善意取得の規定を適用しない旨の登録の申請をすることはできず、善意取得の規定を適用しない旨の登録は無益的登録事項となるものとする。
          • [C案] 何人も善意取得又は抗弁の切断の規定を適用しない旨の登録の申請をすることはできず、その旨の登録は無益的登録事項となるものとする。
            • (注) B案又はC案を採る場合には、管理機関は無益的登録事項となる事項を記録してはならないとすることも考えられる。
      • c. 法定外の任意的申請事項
        発生登録をしようとする者は、業務規程で定める範囲内で、発生登録の申請において、a及びbに掲げる事項以外の事項の記録を求めることができるものとする。
    【意見】
     (1)a5.については、A案に賛成する。(1)b7.については、A案に賛成する。
    (1)b3.については、電子登録債権については分割払いを認めないとすることも検討されるべきである
    その余については、すべて賛成する。
    【理由】
     (1)a5.については、金銭債権は、共同相続の場合には、相続分に応じて当然に分割されるというのが確立した判例理論であり、A案に賛成する。
    (1)b7.については、電子登録債権につき、当事者が流通性を持たせない使い方を希望する場合(例えば、キャッシュマネジメントシステムのために用いる場合)にこれを否定すべき理由がないこと、かかる観点から譲渡禁止特約を認めるとすれば、善意取得及び人的抗弁の切断の適用がない場合を認めない理由がないことからA案に賛成する。
    (1)b3.については、電子登録債権については分割払いを認めず、1回の支払期日毎に1個の電子登録債権を構成するとすることも検討されるべきである(このような立場をとっても、支払期日を異にする複数の電子登録債権を束ねることによって、事実上、分割払いを認めたのと同様の効果を生じさせることができると考えられる。)。
    1. (2) 管理機関による登録
      管理機関は、発生登録の申請があったときは、遅滞なく、登録原簿に次に掲げる事項を記録しなければならないものとする。
      1. 1. 当事者が申請した(1)aの1.から6.までの事項並びにb及びcに掲げる事項
      2. 2. 管理機関が業務規程において譲渡の制限に関する事項その他の電子登録債権に係る私法上の権利義務の制限に関する事項を定めている場合には、その内容
      3. 3. (1)aの9.の事項のうち、管理機関が登録事項として業務規程で定める事項であって当事者が申請したもの
      4. 4. 電子登録債権の番号
      5. 5. 登録日
        • (注1) 登録原簿に記録することにより当該電子登録債権を無効とする有害的登録事項は、これを設けないものとする。
        • (注2) 業務規程により申請事項を制限した場合には(第1の4(3)参照)、その対象となる事項については、申請をすることができないから、登録がされることもないという整理である。
    【意見】
     賛成する。ただし、本文中、「遅滞なく」とあるのは、「直ちに」とすべきである。
    【理由】
     登録に対する信頼を高め、関係者の利益を保護するためには、適式な申請があった場合には、直ちに登録がなされるべきである。
    第3 電子登録債権の譲渡
    1 譲渡による移転の要件

     電子登録債権を譲渡する場合には、当事者の意思表示に加えて、譲渡登 録をしなければ、移転の効力は生じないものとする。

    • (注) 電子登録債権の債権者に相続その他の一般承継が生じた場合又は法定代位が生じた場合には、電子登録債権は、譲渡登録を要件とせずに 移転するものとする。
    【意見】
     賛成する。
    2 電子登録債権の自由譲渡性
    • [A案] 電子登録債権については、全面的な譲渡禁止特約をすることはできないものとする。
    • [B案] 譲渡禁止特約についての特則は設けず、電子登録債権についても譲渡禁止特約を認めるものとする。
      • (注1) A案は、管理機関が業務規程で譲渡の禁止について定めていない場合に当事者が全面的な譲渡禁止特約を定めること及び全面的な譲渡禁止を管理機関が業務規程によって行うことのいずれも認めない(第1の4(3))の「別段の定め」として、全面的な譲渡禁止の定めを業務規程に置くことが許されない旨の定めを設ける。)との立場である。
      • (注2) A案を採る場合であっても、電子登録債権の発生登録の当事者が、管理機関が業務規程で定める範囲内において、全面的な譲渡禁止特約以外の譲渡の制限に関する登録(当該電子登録債権の譲渡の相手方、譲渡(譲渡登録)の回数又は譲渡期間を制限する登録等)をすることはできるものとする。
      • (注3) 業務規程により譲渡の回数・譲渡期間を制限した場合には(第1の4(3)参照)、当事者の申請がなくとも、その内容が登録される(第2の2(2)2.参照)。
    【意見】
     B案に賛成する。
    【理由】
     電子登録債権につき、当事者が流通性を持たせない使い方を希望する場合にこれを否定すべき理由がないこと、実際の取引においては、譲渡禁止特約が様々な場面で用いられており、電子登録債権についても同様のニーズがあると考えられることから、B案に賛成する。
    3 譲渡登録手続
    1. (1) 当事者の申請
      • a. 必要的申請事項
        譲渡登録の申請は、次に掲げる事項に関する情報を管理機関に提供してしなければならないものとする。
        1. 1. 譲渡する電子登録債権の番号
        2. 2. 譲受人の氏名又は名称及び住所
        3. 3. 申請者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
        4. 4. 代理人によって申請する場合にあっては、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
        5. 5. 管理機関が業務規程で定める事項
      • b. 法定の任意的申請事項
        譲渡登録をしようとする者は、業務規程に別段の定めがある場合(業務規程による譲渡の制限については、その旨の登録がされている場合に限る。)を除き、譲渡登録の申請において、aに掲げる事項のほか、次に掲げる事項の記録を求めることができるものとする。ただし、発生登録をした者の申請により発生登録に別段の定めが記録されている場合は、この限りでないものとする。
        1. 1. 電子登録債権の一部を譲渡する場合においては、次に掲げる事項
          • イ 電子登録債権の一部を譲渡する旨
          • ロ 一部譲渡される電子登録債権の金額
          • ハ 一部譲渡の元となった電子登録債権の登録原簿に一部譲渡の回数の制限の登録がされているときは、一部譲渡される電子登録債 権について、更に一部譲渡をすることができる回数
        2. 2. 電子登録債権が譲受人を受託者とする信託財産となる場合には、信託財産である旨
          • (注) 発生登録における「別段の定め」には、(1)一部譲渡の禁止、(2)一部譲渡の回数の制限、(3)一部譲渡がされた後の各電子登録債権の債権額の制限等があると考えられる。
      • c. 法定外の任意的申請事項
        譲渡登録をしようとする者は、業務規程で定める範囲内で、譲渡登録の申請に当たり、a及びbに掲げる事項以外の事項の記録を求めることができるものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (2) 管理機関による登録
      • a. 原則
        管理機関は、譲渡登録の申請があったときは、遅滞なく、登録原簿に次に掲げる事項の記録をしなければならないものとする。
        1. 1. 当事者の申請した(1)a2.、b2.及びcに掲げる事項
        2. 2. 一部譲渡に関する事項((1)bの1.に掲げる事項)がある場合には次に掲げる事項
          • イ 一部譲渡する旨
          • ロ 一部譲渡後の電子登録債権の残額
          • ハ 一部譲渡の回数の制限の登録がされているときは、当該電子登録債権について、更に一部譲渡をすることができる回数
          • ニ 一部譲渡により譲渡登録がされた電子登録債権の番号
        3. 3. (1)aの5.の事項のうち、管理機関が登録事項として業務規程で定める事項であって当事者が申請したもの
        4. 4. 登録日
      • b. 一部譲渡される電子登録債権についての登録
        管理機関は、譲渡登録の申請において、一部譲渡に関する事項((1)bの1.に掲げる事項)がある場合には、遅滞なく、登録原簿に次に掲げる事項の記録を行わなければならないものとする。
        1. 1. 当事者が申請した(1)bの1.ロ及びハに掲げる事項
        2. 2. 電子登録債権の番号
        3. 3. 一部譲渡の元となった電子登録債権の登録原簿に記録されていた事項(債権額及び一部譲渡の回数の制限の登録を除く)。
        4. 4. 登録日
    【意見】
     賛成する。ただし、a及びbの本文中、「遅滞なく」とあるのは、「直ちに」とすべきである。
    【理由】
     登録に対する信頼を高め、関係者の利益を保護するためには、適式な申請があった場合には、直ちに登録がなされるべきである。
    4 譲渡登録の効力
    1. (1) 権利移転の効力
      譲渡登録がされることによって、電子登録債権及びこれに付随する権利(基本権としての利息債権、登録保証債務履行請求権が含まれる。)が移転されるものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (2) 善意取得
      譲渡登録の申請により電子登録債権について譲渡登録を受けた者は、悪意又は重大な過失がある場合を除き、当該電子登録債権を取得するものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (3) 人的抗弁の切断
      • a. 原則
        電子登録債権に係る債務の債務者は、原則として、譲渡人に対する人的関係に基づく抗弁をもって譲受人に対抗することができないものとする。
      • b. 例外
        • [A案] 譲受人が債務者を害することを知って電子登録債権を取得したときは、債務者は、当該抗弁をもって譲受人に対抗することができるものとする。
          • (注) 「債務者を害することを知って」とは、「電子登録債権の支払期日において債務者がある特定の抗弁を主張することが確実であることを認識して」という意味である。
        • [B案] 譲受人の主観にかかわらず、登録原簿に登録がされている抗弁に限り譲受人に対抗することができるものとする。
    【意見】
    aについては、賛成する。
    bについては、A案に賛成する。
    【理由】
     いかに、電子登録債権の流通性を高める必要があるといっても、いわゆる害意のある譲受人まで保護する必要性は認めがたい。したがって、A案に賛成する。
    なお、B案については、例えば、同時履行の抗弁権が登録されているとしても、実際に債務者が同時履行の抗弁権を行使しうる状況にあるか否かは登録だけからは判明しない。この場合、同時履行の抗弁権が登録されている以上、譲受人の主観如何にかかわらず、債務者が常に同時履行の抗弁権を対抗しうるとすれば譲渡の安全性が害されるし、実際に同時履行の抗弁権が対抗しうる状態にあることが登録されている場合にのみ、債務者がこれを対抗できるとするのであれば、債権者がこのような変更登録に応じることは事実上ありえないのであるから、非現実的な議論と言わざるをえない。したがって、B案は採りえない。
    1. (4) 消費者保護
      電子登録債権に係る債務の債務者が消費者である場合には、人的抗弁の切断の規定の適用はないものとし、電子登録債権の譲渡人が消費者である場合であって、当該譲渡人に係る譲渡登録が権利移転の効力を有しないときは、善意取得の規定の適用はないものとする。
    【意見】
     電子登録債権に係る債務の債務者が消費者である場合に人的抗弁の規定の適用がないとする点には賛成するが、電子登録債権の譲渡人が消費者である場合であって、当該譲渡人に係る譲渡登録が権利移転の効力を有しないとするときは善意取得の規定の適用がないとする点は、なお、検討を要する。
    【理由】
     まず、譲渡人が無権利者であった場合、譲渡人が消費者であるからといって善意取得の規定の適用が否定されないことは当然のことである。
    そうすると、「電子登録債権の譲渡人が消費者である場合であって、当該譲渡人に係る譲渡登録が権利移転の効力を有しないとするとき」とは、譲渡人が行為無能力者であったり、意思表示に瑕疵があったりする場合を指すものと考えられる。
    しかし、本試案は、電子登録債権における権利能力や行為能力については、民法の一般規定によって規律されるとされており(第1の1の(注))、意思表示の瑕疵についても特別の規律を置いている(第1の2(2))。「電子登録債権の譲渡人が消費者である場合であって、当該譲渡人に係る譲渡登録が権利移転の効力を有しないとするときは善意取得の規定の適用がない」とすることは、上記の規律との整合性や必要性の観点から疑問があり、この点については、なお、検討を要する。
    1. (5) 支払期日後の譲渡登録
      • [A案] 支払期日後の譲渡登録であっても、支払期日前の譲渡登録と同様の効力を有するものとする。
      • [B案] 支払期日後の譲渡登録には、善意取得及び人的抗弁の切断の規定の適用はないものとする。
        • (注) 支払期日後に電子登録債権の譲渡を受けた者等が、錯誤等による意思表示の無効や詐欺等による意思表示の取消しの場合の第三者保護規定(第1の2(2)参照)の適用によって保護されることの可否についても、併せて検討する。
    【意見】
     B案に賛成する。ただし、そこにいう「支払期日後の譲渡登録」とは、登録された支払期日(第2の2(1)a6.参照)後の譲渡登録を指すものとし、期限の利益喪失条項に基づき期限の利益を喪失した後の譲渡登録を含まないものとすべきである。
    【理由】
     およそ電子登録債権は、支払期日において弁済されるのが通常のあり方であり、支払期日後の譲受人は、注意深くこれを譲り受けるべきであって、善意取得及び人的抗弁の切断による保護を与えるべき必要性に乏しい。
    また、電子登録債権においては、弁済と支払等登録の同期性を厳格に保つことは技術的に困難であり、本来の支払期日に弁済を行った債務者が二重払いのリスクを負わないようにするためには、支払期日後の譲渡登録については人的抗弁(支払済みの抗弁)は切断されないものとすべきである。以上の理由により、B案に賛成する。
    なお、期限の利益喪失事由が定められた電子登録債権については、譲受人には期限の利益喪失事由の発生により当該電子登録債権の期限が到来しているか否かは判明しないのであるから、B案にいう「支払期日後の譲渡登録」とは、登録された支払期日(第2の2(1)a6.参照)後の譲渡登録を指すものとすべきである。
    また、分割払いの定めのある電子登録債権については、分割払の支払期日及び支払金額毎に複数の電子登録債権が存在するものとみなすことによって、B案を適用することが可能であると考えられる。
    第4 電子登録債権の消滅等
    1 支払の方法

     電子登録債権の支払期日における支払の方法については、法令上は規定を設けないものとする。

    • (注1) 発生登録における当事者が任意的登録事項として支払方法を登録した場合にはその方法によって支払い、その登録がされていない場合には民法484条や商法516条により債権者の住所や営業所に持参して支払うことになる。
    • (注2) 手形法39条2項のような規定は設けず、一部支払については民法に従って取り扱うものとする。
    • (注3) 支払期日前の支払や、支払期日後の支払については、支払期日における支払と異なる規定(手形法40条1項及び2項のような規定)は設けないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    2 支払免責
    • [A案] 電子登録債権の債権者として登録されている者で当該電子登録債権を有しないもの又は電子登録債権の質権者として登録されている者で当該電子登録債権の取立権を有しないものに対してした支払は、当該支払をした者に悪意又は重大な過失がない限り、その効力を有するものとする。
    • [B案] 電子登録債権の債権者として登録されている者で当該電子登録債権を有しないもの又は電子登録債権の質権者として登録されている者で当該電子登録債権の取立権を有しないものに対してした支払は、当該支払をした者の主観を問わず、支払としての効力を有するものとする。
    【意見】
     A案に賛成する。
    【理由】
     債務者に悪意・重過失がある場合にまでこれを保護すべき必要性は見出し難いうえ、かかる場合の支払を有効とすることは真の権利者を害することになる。以上の理由によりA案に賛成する。
    3 支払等の効力と支払等登録との関係
    1. (1) 支払を受けた債権者との関係
      電子登録債権に係る債務の債務者が債権者に支払をした場合には、支払等登録をしていないときであっても、債権者は、更に支払の請求をすることはできないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (2) 支払を受けた債権者以外の者との関係
      電子登録債権に係る債務の債務者が債権者に支払をした場合において、支払等登録をしていないときは、弁済の抗弁は、人的抗弁として取り扱われるものとする。
      • (注) 弁済の抗弁を人的抗弁として取り扱うことになることから、支払期日後の譲渡登録について、人的抗弁の切断の効力を認めるか否か(第3の4(5)参照)によって、支払等をした者で支払等登録をしていなかったものが取得者に弁済の抗弁を主張することができるかどうかが決せられることとなる。
    【意見】
     賛成する。
    1. (3) 支払等登録の申請の承諾請求権
      • a. 電子登録債権について支払等があった場合には、当該支払等をした者は、当該電子登録債権の債権者、質権者又は差押えをした債権者(以下「債権者等」という。)として登録されている者に対して、当該電子登録債権の支払等登録の申請をすることについて承諾すべきことを請求することができるものとする。
      • b. 電子登録債権に係る債務の支払をする場合には、aにかかわらず、当該支払をする者は、債権者等に対し、支払をするのと引換えに、支払等登録の申請をすることについて承諾すべきことを請求することができるものとする。
        • (注) 「支払等」とは、支払、相殺等の債権の消滅原因事実を指すものである。
    【意見】
     賛成する。
    4 支払等登録
    1. (1) 当事者の申請
      • a. 申請権者等
        • イ. 債権者等として登録されている者又はその一般承継人は、単独で支払等登録の申請をすることができるものとする。
          • (注) 質権者は、被担保債権の支払を受けたときは、当該被担保債権について支払を受けた旨の支払等登録の申請を行うことになる。
            また、質権者が直接取立権により電子登録債権を行使して支払を受けたときは、当該電子登録債権及び被担保債権について支払等登録の申請を行うことになる。
        • ロ. 債権者等の全員の承諾がある場合における電子登録債権の支払等をした者も、イと同様とするものとする。
          • (注) 電子登録債権の支払等をした者は、3(3)により債権者等に承諾をすべきことを命ずる確定判決又はこれと同一の効力を有するものを取得すれば、ロにより、当該支払等をした者のみで支払等登録の申請をすることができることになる。
      • b. 必要的申請事項
        支払等登録の申請は、次に掲げる事項に関する情報を管理機関に提供してしなければならないものとする。
        1. 1. 電子登録債権の番号
        2. 2. 支払等に係る債権の特定に関する事項
          • (注) 発生登録に係る債務か、登録保証債務か等支払を受けた債権を特定するために必要な事項のことである。
        3. 3. 支払等に係る債権の金額
        4. 4. 支払等の内容
        5. 5. 支払等があった日
        6. 6. 支払等をした者の氏名又は名称及び住所並びにその者が支払等をすることについての正当な利益の有無
        7. 7. 申請者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
        8. 8. 代理人によって申請する場合にあっては、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
        9. 9. 管理機関が業務規程で定める事項
      • c. 法定外の任意的申請事項
        支払等登録をしようとする者は、業務規程で定める範囲内で、支払等登録の申請において、bに掲げる事項以外の事項の記録を求めることができるものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (2) 管理機関による登録
      • a. 当事者の申請による支払等登録
        管理機関は、支払等登録の申請があったときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記録しなければならないものとする。
        • 1. 当事者が申請した(1)bの2.から6.まで及びcに掲げる事項
        • 2. (1)bの9.の事項のうち、管理機関が登録事項として業務規程で定める事項であって当事者が申請したもの
        • 3. 登録日
      • b. 当事者の申請によらない支払等登録
        管理機関が電子登録債権の支払に係る送金手続をする場合には、管理機関は、入金手続を終えた後(債権者の支払先口座に入金がされたことを確認した後)、直ちに、当事者の申請によらずに、(1)b2.から6.までの事項及び登録日を記録しなければならないものとする。
        • (注) 管理機関が、送金手続と当事者の申請によらない支払等登録の同期性を確保するために、業務規程で支払期日後の一定期間のみについて譲渡登録を禁止することもできると考えられる。
    【意見】
     賛成する。ただし、bに「遅滞なく」とあるのは、「直ちに」とすべきである。
    【理由】
     登録に対する信頼を高め、関係者の利益を保護するためには、適式な申請等がなされた場合の登録は、申請等の後直ちに行われるべきである。
    なお、支払と支払等登録の同期性を保つことは、電子登録債権が広く利用されるようになるための必須の条件であり、かかる観点からすると、bの当事者の申請によらない支払等登録は、きわめて重要なものであると考えられる。
    5 弁済以外の消滅原因
    1. (1) 相殺
      電子登録債権が相殺により消滅した場合であっても、支払等登録をしない限り、相殺の抗弁は人的抗弁として取り扱われるものとする
    【意見】
     賛成する。
    1. (2) 混同
      • a. 電子登録債権に係る債務の債務者は、当該電子登録債権を取得した場合であっても、支払等登録をしない限り、混同(民法520条本文)による債務の消滅を主張することはできないものとする。
      • b. 電子登録債権の発生登録における債務者は、当該電子登録債権を取得した場合であっても、登録保証債務の履行請求権を行使することはできず、また、登録保証人は、自己が登録保証をした電子登録債権を取得した場合であっても、他の登録保証人に対する登録保証債務の履行請求権(自己が登録保証債務を負担する前に取得したことがあるものを除く。)を行使することはできないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (3) 消滅時効
      • (前注) 消滅時効については、以下に掲げる事項のほかは、民法の消滅時効に関する規定が適用される。
        電子登録債権(登録保証債務の履行請求権及び特別求償権を含む。)は、支払期日から3年間、行使がされないときは、時効によって消滅するものとする。
      • (注) 電子登録債権が時効により消滅した場合に、電子登録債権の債権者が、発生登録における債務者や登録保証人に対し、これらの者が受けた利益の限度において償還請求をする権利(手形における利得償還請求権のようなもの)について、法令上の規定は設けないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    第5 登録保証等
    • (前注1) 「登録保証」とは、電子登録債権に係る債務を保証するものであって、登録原簿に登録しなければ効力を生じない保証をいい、電子登録債権について登録原簿への登録によらずに締結される保証契約(これは民法上の保証であり、以下「民事保証」という。)とは別のものである。
    • (前注2) この試案に別段の定めがない限り、保証に関する民法の規定に従うという前提である。
    1 登録保証の要件等

     登録保証は、保証登録をしなければ、その効力を生じないものとする。

    • (注) 管理機関は、業務規程により保証登録の申請を禁止又は制限することができる(第1の4(3)参照)。
    【意見】
     賛成する。
    2 登録保証の内容
    1. (1) 保証の範囲の限定
      保証登録の当事者は、管理機関が業務規程で定める範囲内で、登録原簿に登録することにより、登録保証債務の内容(保証債務額等)を限定することができるものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (2) 登録保証には、民法452条(催告の抗弁)、453条(検索の抗弁)、456条(数人の保証人がある場合)及び458条(連帯保証人について生じた事由の効力)の規定は適用しないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    3 登録保証の独立性
    1. (1) 独立性
      登録保証債務は、その主たる債務者が申請に係る意思表示の無効、取消し等によりその債務を負担しない場合であっても、その効力を妨げられないものとする。
      • (注) 「無効、取消し等」の「等」とは、そもそも主たる債務者が債務負担の意思表示をしていない場合(名義の冒用)等を指すものである。
    【意見】
     賛成する。
    1. (2) 主たる債務者の相殺権の行使
      登録保証には、民法457条2項(主たる債務者の債権による相殺の主張)の規定は適用しないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (3) 時効中断
      主たる債務者に対する時効中断の効果(民法457条1項参照)は、登録保証人には及ばないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    4 保証登録手続
    1. (1) 当事者の申請
      • a. 必要的申請事項
        保証登録の申請は、次に掲げる事項に関する情報を管理機関に提供してしなければならないものとする。
        1. 1. 電子登録債権の番号
        2. 2. 登録保証である旨
        3. 3. 保証人の氏名又は名称及び住所
        4. 4. 主たる債務者の氏名又は名称及び住所
        5. 5. 申請者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
        6. 6. 代理人によって申請する場合にあっては、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
        7. 7. 管理機関が業務規程で定める事項
      • b. 法定の任意的申請事項
        保証登録の申請の当事者は、業務規程に別段の定めがある場合を除き、保証登録の申請において、aに掲げる事項のほか、次に掲げる事項の記録を求めることができるものとする。ただし、発生登録をした者の申請により発生登録に別段の定めが記録されている場合は、この限りでないものとする。
        • 1. 保証債務の内容の限定に関する事項
        • 2. 保証登録における債権者に対する抗弁をその後の譲受人に対抗することができる旨
      • c. 法定外の任意的申請事項
        保証登録をしようとする者は、業務規程で定める範囲内で、保証登録の申請に当たり、a及びbに掲げる事項以外の事項の記録を求めることができるものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (2) 管理機関による登録
      管理機関は、保証登録の申請があったときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記録しなければならないものとする。
      1. 1. 当事者が申請した(1)aの2.から4.まで、b及びcに掲げる事項
      2. 2. (1)aの7.の事項のうち、管理機関が登録事項として業務規程で定める事項であって当事者が申請したもの
      3. 3. 登録日
    【意見】
     賛成する。
    5 特別求償権
    1. (1) 登録保証人が登録保証債務を履行した場合において、支払等登録がされたときは、民法459条、462条、464条及び465条の規定にかかわらず、その登録保証人は、次に掲げる者に対して、履行した額及び履行した日以後の遅延損害金及び支出した費用で避けることができなかったものを請求することができる権利(以下「特別求償権」という。)を有するものとする。
      1. 1. 主たる債務者
      2. 2. 自己の主たる債務と同一の債務を主たる債務とする登録保証人(以下「共同保証人」という。)
      3. 3. 主たる債務者として登録された者が、債務を負担してそれを支払ったとすれば、特別求償権を行使することができる者
    【意見】
     賛成する。
    1. (2) 他の共同保証人(登録保証債務を履行した者が当該債務を負担する前に取得した登録保証債務履行請求権に係る保証人を除く。)に対する特別求償権は、各自の負担部分についてのみ行使することができるものとする。
      • (注) (3)の場合を除き、民法の原則に従い、特段の合意がない限り、共同登録保証人間の各自の負担部分は等しいものとなる。
    【意見】
     賛成する。
    1. (3) 登録保証人は、自己の登録保証債務についての債権者となったことがある他の共同保証人に対しては、特別求償権を行使することができないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (4) 登録保証には、民法463 条(通知を怠った保証人の求償の制限)の規定は適用しないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    • (後注1)特別求償権は、基本的には電子登録債権としての性質を有するものであることを前提としている。例えば、特別求償権の発生には、支払等登録を受けることが必要であり、また、弁済者が特別求償権を譲渡する場合には、譲渡登録を要し、民法の定める指名債権譲渡の方式により譲渡を行うことはできない。
      なお、特別求償権を譲渡登録によって譲渡した場合には、登録保証人が法定代位により取得した電子登録債権もこれに伴い移転することとなる。
    • (後注2) 登録保証人は、一部支払をした場合であっても、支払等登録をすることにより、特別求償権を行使することができる(第4の4(1)aイ、ロ、b3.、(2)a1.参照)。
    • (後注3) 登録保証人は、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に該当するから、登録保証人が弁済した場合には、法定代位により、弁済を受けた者が有する電子登録債権や当該電子登録債権を被担保債権とする担保権を取得する(民法500条)。
      特別求償権は、保証人の求償権の特殊なものであるから、登録保証人は、自己の権利に基づいて求償することができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができることとなる(民法501条)。
    •  したがって、登録保証人が弁済をしたにもかかわらず、支払等登録をしていない場合には、特別求償権を行使することができないから、代位した電子登録債権を行使することもできないことになる。
    • (第5関係後注) 譲渡人の担保責任は、発生登録における債務者の支払を担保するものであるところ、登録保証に独立性を認めることにより、担保責任は、譲渡人が発生登録における債務者を登録保証することによってまかなうことができるため、手形における担保責任(遡求義務)のような規律は設けないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    第6 登録事項の変更
    • (前注)登録事項の変更には、登録の申請に過誤があった場合、当事者が電子登録債権の内容を変更する旨の合意をした場合、商号変更等により当事者の属性が変更された場合、電子登録債権又はこれに係る債務について一般承継が生じた場合等いかなる原因であるかにかかわらず、登録原簿に記録された事項を変更する場合をすべて含む。
      また、登録事項の変更については、登録事項が別の内容となる場合のみならず、登録の申請に錯誤があり、登録事項の全部又は一部が削除される場合も含まれる。
    1 意思表示による電子登録債権の内容の変更の要件

     意思表示による電子登録債権の内容の変更は、当該意思表示に加えて、変更登録をしなければその効力を生じないものとする。

    【意見】
     賛成する。
    2 変更登録手続
    1. (1) 申請権者
      • a. 原則
        • イ. 特定の登録の当事者及び当該登録について登録原簿上の利害関係を有する者(以下「利害関係者」という。)は、業務規程に別段の定めがある場合を除き、当該登録の変更登録の申請をすることができるものとする。
        • ロ. 申請権者が2人以上あるときは、イの申請は、全員でしなければならないものとする。
      • b. 改名等の場合の取扱い
        aのロにかかわらず、登録原簿に記録された者の改名、住所変更等による氏名若しくは名称又は住所についての変更登録は、その者が単独で申請をすることができるものとする。他の者の権利義務に影響がないことが明らかな事項であって管理機関が業務規程で定めるものの変更登録についても同様とするものとする。
      • c. 一般承継が生じた場合の取扱い
        • イ. 電子登録債権に係る債務の債務者又は債権者等として登録された者に一般承継があった場合には、aのロにかかわらず、一般承継人は、 単独で自己を債務者又は債権者等とする旨の変更登録の申請をすることができるものとする。
        • ロ. 共同相続
          • [A案] 相続人が2人以上あるときは、各相続人は、単独で変更登録の申請をすることができるものとする。
          • [B案] 相続人が2人以上あるときは、変更登録の申請は、相続人が全員でしなければならないものとする。
          • [C案] 債務者の相続人が2人以上あるときは、各相続人は単独で変更登録の申請をすることができるが、債権者の相続人が2人以上あるときは、相続人が全員で変更登録の申請をしなければならないものとする。
            • (注) 電子登録債権又はこれに係る債務について一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、変更登録をしなくても、当該債権又は債務を承継することとの関係で、共同相続の場合における変更登録の申請権者については、承継された債権又は債務の性質(第2の2(1)a3.の注及び5.の注参照)と関連させつつ、なお検討する。
        • ハ. 一般承継人の変更登録と譲渡登録の申請の関係
          債権者の一般承継人は、被承継人の氏名等を一般承継人の氏名等に変更する旨の変更登録をすることなく、譲渡登録の申請をすることができるものとする。
          • (注) 債権者の一般承継人が一般承継により取得した電子登録債権の支払等登録をしようとするときも、当該一般承継人名義への変更登録を経ることなく支払等登録の申請をすることができるものとする。
    【意見】
     cロについては、B案に賛成する。
    cハには、反対する。
    その余は賛成する。
    【理由】
    • 1 電子登録債権の共同相続においては、例えば、遺言によって当該電子登録債権の相続人が指定されることによって、法定相続分によると異なる形で当該電子登録債権が相続される場合がある。したがって、かかる場合に各相続人が単独で変更登録を行うことができるとすると実態と異なる登録が出現することを認めることとなり、登録に対する信頼が失われることになる。また、電子登録債権の登録には権利推定効が認められ、登録名義人からの譲受人には善意取得が認められることになるが、そうすると、本来、相続によって権利を取得したはずの真の権利者が善意取得が認められる反面において権利を失うこととなり、不当に害されることとなる。加えて、管理機関が共同相続人間の紛争に巻き込まれないようにするためにも、電子登録債権の共同相続においては、変更登録の申請は、相続人が全員でしなければならないものとすべきである。
      また、電子登録債権に係る債務の共同相続においても、一部の共同相続人が相続を放棄することにより、法定相続分によるのと異なる形で当該電子登録債権に係る債務が相続される場合があり、各相続人が単独で変更登録を行うことができるとすると実態と異なる登録が出現することを認めることとなり、登録に対する信頼が失われることになることは同様である。したがって、電子登録債権に係る債務の共同相続においても、変更登録の申請は、相続人が全員でしなければならないものとすべきである。
      以上の理由により、cロについては、B案に賛成する。
    • 2 電子登録債権の一般承継があった場合に、債権者が被承継人の氏名等を一般承継人の氏名等に変更する旨の変更登録をすることなく譲渡登録の申請をすることができるものとすると、例えば、電子登録債権の相続の場合、登録原簿上、既に死亡していることが明らかな被相続人から譲受人に対する譲渡登録がなされることを認めることになるが、これは、常識的な処理とは考えられない。かかる場合、いったん相続人への変更登録を経たうえで譲渡登録を行わせるとしても、手間やコストはほとんど変わらないと考えられる(登録手続の際に必要となる資料等は同一のはずである。)。
      以上の理由により、cハには、反対する。
    1. (2) 当事者の申請
      変更登録の申請は、次に掲げる事項に関する情報を管理機関に提供してしなければならないものとする。
      1. 1. 電子登録債権の番号
      2. 2. 変更の対象となる登録事項の特定に必要な事項
      3. 3. 2.の記録を変更する旨
      4. 4. 変更後の内容(登録事項を削除するときは、削除する旨)
      5. 5. 申請者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
      6. 6. 代理人によって申請する場合にあっては、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときは代表者の氏名
      7. 7. 管理機関が業務規程で定める事項
    【意見】
     賛成する。
    1. (3) 管理機関による登録
      管理機関は、変更登録の申請があったときは、遅滞なく、登録原簿に、次に掲げる事項を記録しなければならないものとする。
      1. 1. 当事者が申請した(2)の2.から4.までに掲げる事項
      2. 2. (2)の7.の事項のうち、管理機関が登録事項として業務規程で定める事項であって当事者が申請したもの
      3. 3. 登録日
    【意見】
     賛成する。ただし、本文中、「遅滞なく」とあるのは、「直ちに」とすべきである。
    【理由】
     登録に対する信頼を高め、関係者の利益を保護するためには、適式な申請等がなされた場合の登録は、申請等の後直ちに行われるべきである。
    3 登録事項の変更の瑕疵
     (前注) 変更登録の申請をすべき者の一部の申請がないにもかかわらず変更登録がされた場合、変更登録の申請をした者の一部の申請に係る意思表示が無効又は取り消された場合、当該申請が無権代理人等によって行われて表見代理等が成立しない場合、変更権限のない者が変更登録をした場合、変更登録をすることなく登録事項が変更された場合(いわゆる変造)等、登録事項の変更の要件を充たさずに変更が行われることを「変更の瑕疵」という
    1. (1) 変更前に債務を負担した者の責任
      変更の瑕疵がある場合には、その変更がされる前に債務を負担した者は、変更前の登録内容に従って責任を負うものとする。ただし、変更登録の有効な申請をした者の間においては、当該申請をした債務者は、変更後の登録内容に従って責任を負うものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (2) 変更後に債務を負担した者の責任
      変更の瑕疵があっても、その変更がされた後に当該電子登録債権について債務を負担した者は、変更後の登録内容に従って責任を負うものとする。
    【意見】
     賛成する。
    第7 その他
    1 質権
    1. (1) 質権の設定方法
      電子登録債権の質入れは、当該電子登録債権の登録原簿に質権を設定する旨の登録(以下「質権設定登録」という。)をしなければ、その効力を生じないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (2) 質権設定登録手続
      • a. 当事者の申請質権設定登録の申請は、次に掲げる事項に関する情報を管理機関に提供してしなければならないものとする。
        1. 1. 質権を設定する電子登録債権の番号
        2. 2. 質権を設定する旨
        3. 3. 質権者の氏名又は名称及び住所
        4. 4. 被担保債権の債務者の氏名若しくは名称及び住所、被担保債権額その他被担保債権の特定に関する事項(質権が根質権であるときは、被担保債権の範囲及び極度額)
          • (注) 「極度額」を必要的申請事項・登録事項としているのは、後順位質権の設定登録も原則として認めること((3)の注2参照)を前提とするものであって、包括根質を電子登録債権については認めないことを意味するものであるが、その当否については、後順位質権の設定登録を認めることの当否の問題と併せて、なお検討する。
        5. 5. 申請者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
        6. 6. 代理人によって申請する場合にあっては、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
        7. 7. 管理機関が業務規程で定める事項
      • b. 法定の任意的申請事項
        質権設定登録の申請の当事者は、業務規程に別段の定めがある場合を除き、質権設定登録の申請において、aに掲げる事項のほか、質権が質権者を受託者とする信託財産となる場合には、信託財産である旨の記録を求めることができるものとする。ただし、発生登録をした者の申請により発生登録に別段の定めが記録されている場合は、この限りでないものとする。
      • c. 法定外の任意的申請事項
        質権設定登録をしようとする者は、業務規程で定める範囲内で、質権設定登録の申請において、aに掲げる事項以外の事項の記録を求めることができるものとする。
      • d. 管理機関による登録管理機関は、質権設定登録の申請があったときは、遅滞なく、登録原簿に、次に掲げる事項を記録しなければならないものとする。
        • 1. 当事者が申請したaの2.から4.まで、b及びcに掲げる事項
        • 2. aの7.の事項のうち、管理機関が登録事項として業務規程で定める事項であって当事者が申請したもの
        • 3. 登録日
          • (注) 管理機関は、業務規程により質権設定登録の申請の禁止をすることができる(第1の4(3)参照)。
    【意見】
     賛成する。
    なお、a4.の(注)については、電子登録債権については、包括根質を認めないこととすべきである。
    【理由】
     後記のとおり、電子登録債権については、後順位質権の設定登録も原則として認めるべきであり、したがって、包括根質を認めないこととすべきである。
    1. (3) 質権設定登録の効力
      質権設定登録にも権利推定効、善意取得及び人的抗弁の切断を認めるものとする。
      • (注1) 電子登録債権を目的とする質権には、この試案に別段の定めがない限り、民法の債権質の規定が適用される。
      • (注2) 質権設定登録がされたとしても、質権設定者は、譲渡登録の申請や、後順位質権について質権設定登録の申請をすることができる(ただし、業務規程や発生登録において、質権設定者による譲渡登録等の申請を禁止又は制限することは可能である。)ものとして整理しているが、これらの申請をすることを認める必要があるのかどうかについては、なお検討する。
    【意見】
     賛成する。
    なお、(注2)については、質権設定者は、譲渡登録の申請や後順位質権の設定登録の申請ができるものとすべきである。
    【理由】
     きわめて稀であるかもしれないが、電子登録債権に質権を設定した者が電子登録債権を譲渡する必要がある場合も否定できないと考えられる。例えば、質権設定者が営業譲渡を行い、譲渡される営業に係る質権の被担保債務を営業の譲受人に免責的に引き受けさせるとともに、電子登録債権を営業の譲受人に譲渡するような場合である。
    また、後順位の質権設定を認めた方が、電子登録債権を利用してより多額の資金調達を行う途を開くことになる。
    したがって、(注2)については、質権設定者は、譲渡登録の申請や後順位質権の設定登録の申請ができるものとすべきである。
    1. (4) 転質等
      転質、質権の移転等について、所要の規定を整備するものとする。
    【意見】
     賛成する。
    2 信託
    1. (1) 電子登録債権については、信託財産に属する旨を登録原簿に登録しなければ、当該電子登録債権が信託財産に属することを第三者に対抗することができないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (2) 登録手続
      信託の登録は、発生登録、譲渡登録又は質権設定登録であって受託者が債権者又は質権者として記録されているものにおいて、信託財産に属する旨を記録することにより行うものとする。
    【意見】
     賛成する。
    3 登録原簿等の開示
    1. (1) 登録事項についての開示
      • a. 次に掲げる者は、管理機関に対し、当該管理機関が業務規程で定める手数料を納付して、電子登録債権につき登録原簿に記録されている事項の閲覧又は当該事項の全部若しくは一部の証明をした書面若しくは電磁的記録(以下「証明書等」という。)の提供を請求することができるものとする。ただし、その者が当該事項を利益を得て第三者に通報するために請求を行ったときその他登録原簿に記録された者の利益を害するおそれがあるときは、この限りでないものとする。
        1. 1. 自己の氏名又は名称が、いずれかの登録の当事者として登録原簿に登録されている者
        2. 2. これらの者の財産の管理及び処分をする権限を有する者
        3. 3. 管理機関が業務規程で定める者
      • b. 管理機関は、業務規程で定めることにより、aの3.に掲げる者に対するaの請求による開示の範囲を限定することができるものとする。
      • c. 管理機関は、業務規程で定めることにより、法定外の任意的登録事項についての開示の範囲を限定することができるものとする。
      • d. b又はcにより開示の範囲を限定した場合において、登録原簿に記録されている事項で開示をしないものが生ずるときは、登録事項の証明書等の提供の場合にあっては開示をしない事項のあることを当該証明書等に記録し、閲覧の場合にあっては当該事実を閲覧者に告げなければならないものとする。
        • (注) cによる開示の範囲の限定のほかに、bによる開示の範囲の限定をする必要性と合理性があるのかどうか(aの3.に掲げる者について、必要的登録事項又は法定の任意的登録事項の全部又は一部を開示しないこととする必要性と合理性があるか)について、なお検討する。
    【意見】
    賛成する。(注)については、なお、検討を要する。
    1. (2) 申請に関する書面等についての開示
      登録の申請において申請者として表示された者は、管理機関に対し、当該管理機関が業務規程で定める手数料を納付して、当該申請に関する書面(電磁的記録を含み、添付情報を含む。)の閲覧又はその謄本若しくは抄本(申請に関する情報が電磁的記録に記録されているときは、記録された情報の内容の全部又は一部を証明した書面又は電磁的記録)の提供を請求することができるものとする。当該申請につき利害関係を有する者についても、正当な理由があるときは、 同様とするものとする。
      • (注) 申請に関する書面等についての開示請求権者の範囲及び開示請求の要件については、なお検討する。
    【意見】
     賛成する。(注)については、なお、検討を要する。
    1. (3) 閲覧の方法
      登録原簿の閲覧及び申請に関する情報が電磁的記録に記録されている場合における当該情報の閲覧の方法は、 記録されている事項を紙面に出力して表示する方法又は映像面に表示する方法の双方又はいずれかであって管理機関が業務規程で定めるものとする。
    【意見】
     賛成する。
    1. (4) 登録原簿の登録内容の保存等
      管理機関は、ある電子登録債権について、すべての登録について支払等登録又は登録事項を削除する変更登録がされた後一定期間、登録原簿の登録内容を保存しなければならないものとする。
      • (注) 「一定期間」としてどの程度の期間が相当かについては、管理機関に対する監督の観点からの検討もされるものと考えられる。
    【意見】
     賛成する。
    4 電子登録債権に関する差押え等

     電子登録債権に関する強制執行、仮差押え及び仮処分の執行、競売並びに没収保全(以下「差押え等」という。) に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定め、差押え等その他の処分の制限がされた場合の登録に関し必要な事項は、法律又は政省令において所要の規定を整備するものとする。

    • (後注) 手形訴訟類似の簡易な訴訟制度は、設けないものとする。
    【意見】
     賛成する。
    5 その他

     以上のほか、罰則その他所要の規定を整備するものとする。

    【意見】
     賛成する。
    以上
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