東京弁護士会

割賦販売法の抜本的改正を求める意見書

2007年2月8日
東京弁護士会
会長 吉岡 桂輔

第1 割賦販売法の抜本的改正の必要性

1 悪質商法被害とクレジット契約とのかかわり

 高齢者を狙ったリフォーム工事、次々販売被害、展示会商法による呉服次々販売被害など、クレジット契約を利用した悪質商法被害が繰り返されている。
クレジット契約は、代金後払いで高額商品を購入できる利便性を有する一方で、悪質な販売行為と結びついて利用されるときは、消費者の支払能力を無視した強引な販売活動を可能にし、欺瞞的な勧誘により高額被害を引き起こすなど、悪質商法を助長する構造的な危険性が顕在化する。
ココ山岡事件やダンシング事件など破綻必至の詐欺商法は、クレジット契約を利用することにより大規模被害に発展したものである。ごく最近では、指定暴力団の幹部らが若い女性に対し、「ホテルに絵画を貸し出せば、レンタル収入が得られる。」との架空のもうけ話を持ち掛け、絵画の購入名目で信販会社とローン契約を結ばせて金員を騙し取ったとして、本年1月10日、警視庁が詐欺と組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)の疑いで同幹部らを逮捕したが、その被害総額は約4億円に上るとの報道がなされた(同日付YOMIURI ONLINE)。

2 現行割賦販売法の問題点

 現行割賦販売法は、こうしたクレジット契約の危険性を排除し、公正な取引を確保する法的措置が決定的に欠けている。とりわけ、クレジット契約の構造的危険性である不適正与信ないし過剰与信について、実効性のある民事責任が定められていない現行法の構造が、「悪質商法を見逃すほど儲かる」仕組みとなって、クレジット会社による自主的な適正化対策を阻害しているといえる。
したがって、悪質商法を防止し、被害者を救済する方策を講じるために、さしあたり割賦販売法において、以下のような法改正を直ちに行う必要がある。

第2 改正すべき点の具体的内容

1 過剰与信防止の実効性確保

 現行法の過剰与信防止の規定(38条)は、抽象的な訓示規定にとどまり実効性が伴っていない。
したがって、クレジット過剰与信の防止のため、クレジット会社に対し、顧客の支払能力の調査を義務づけるとともに、一定の基準を超過する過剰与信を禁止し、違反に対する民事効果を含む規定を設けるべきである。与信基準については、昨年12月に成立した改正貸金業法において、総借入残高が年収の3分の1を超える貸付を原則禁止としたことが参考となる。

2 不適正与信防止義務の法定

 現行法では、不適正な販売行為を排除する不適正与信の防止については、加盟店管理を要請する通達があるにとどまり、法的な義務付けすらない。
クレジット会社が悪質販売業者に対する不適正与信を繰り返さないために、不適正与信防止の具体的義務規定(加盟店調査管理義務)を定め、行政規制の対象とすべきである。

3 クレジット会社の販売業者との共同責任

 現行法では、売買契約が無効・取消・解除となった場合の代金清算については、クレジット会社に対し未払金の支払拒絶を主張しうる(30条の4)にとどまり、「クレジット会社の共同責任」が規定されていない。
クレジット先進国であるイギリスの消費者信用法においては、クレジット会社の共同責任が法定化されることにより、悪質商法による消費者被害の救済を容易にするとともに、クレジット契約を利用する消費者の安心・安全をもたらし、クレジット産業の発展を促進している実情がある。わが国においても、売買契約が解消された場合には、未払金の支払を拒絶できるにとどまらず、クレジット会社は、代金(既払金)の清算について販売業者と共同責任を負うものとすべきである。

4 個品割賦購入あっせん事業者の登録制・契約書面交付義務

 現行法では、被害が最も多発している個品割賦購入あっせんについて、与信業者の登録制もなく、クレジット契約書面の交付義務もクーリング・オフも与信業者の義務とされていない。
クレジット事業を適正化するためには、登録制を導入し、行政規制権限を定め、クレジット会社に契約書面交付義務を定め、クレジット契約についてもクーリング・オフを認めるべきである。

5 割賦払い要件と指定商品制の廃止

 現行法は、指定商品性を採り、かつ一括払方式には規制が何ら及ばない。
しかしながら、このように適用範囲を限定することには何ら積極的な意義は認められないから、指定商品制は廃止し、また一括払いを含めすべてのクレジット契約を法規制の対象とすべきである。

6 適用除外規定の見直し

 事業者がその従業員に対して行う割賦販売についての適用除外についても、モニター商法の実態をみると合理的とは言えないから、見直しを要する。

以上
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