東京弁護士会

貸金業者の広告掲載中止の要請

添付資料(PDF)

2007年(平成19年)6月6日
東京弁護士会
会長 下河邉 和彦

【要請の趣旨】

 利息制限法違反の貸付けを行っている貸金業者の広告掲載を、速やかに全面的に中止することを要請します。

【要請の理由】

第1. 多重債務問題の抜本的解決への国内の動き

 我が国の多重債務問題が依然深刻な社会問題であることは、平成18年度の個人自己破産申立件数が16万5917件(速報値)、平成17年の経済・生活苦による自殺者が7756人(総自殺者数3万2552人)に達していることからも明らかです。特に経済・生活苦による自殺者数は1995年が約2800人程度であるから急激な増加であるとともに、同年の交通事故死者数6871人を上回る自殺者数であり、我が国の人口10万人当たりの自殺者数がG8諸国の中でもロシアに次ぐ2位であることに鑑みれば(WHO資料)、極めて異常な事態といえます。
かかる多重債務問題の主たる原因が、貸金業者による利息制限法の上限金利(元本が10万円未満の場合は20%、10万円以上100万円未満の場合は18%、100万円以上の場合は15%)を超えた高金利による、且つ、消費者の返済能力を超えた過剰貸付にあったことは周知の通りです。それを踏まえて昨年12月13日、貸金業法等の一部を改正する法律案が可決され、概ね3年の間に刑事罰の上限金利となる出資法の上限金利は20%に引き下げられ、貸金業法43条のみなし弁済規定は廃止となります。この改正を受けて、政府により多重債務者対策本部が設置され、本年4月20日に多重債務問題改善プログラムが決定され、我が国全体において多重債務者対策の円滑かつ効果的な推進を図るための体制が整いつつあります。銀行系のカード会社等においては、概ね3年の経過期間を待たずして、既に利息制限法の適法金利内での営業に切り替えている業者も少なからず見受けられます。
ところが、俗にサラ金と呼ばれる貸金業者においては、依然として利息制限法違反の違法無効の高金利での営業が続けられており、サラ金大手5社の本年5月現在の貸付け上限金利を例とすると、武富士27.375%、アコム27.375%、プロミス25.555%、アイフル28.835%、三洋信販29.0%と依然として民事無効の違法高金利となっています(但し、アコムは本年6月18日以降の新規貸付けについては、利息制限法レベルへの引き下げが予定されています)。したがって、概ね3年の経過期間において新たな多重債務者の発生が懸念されています。

第2. 利息制限法違反業者の広告の自主的規制の必要性

1. 新聞雑誌等の広告の多重債務問題への影響
新聞広告については、消費者金融の総広告量は平成13年をピークに減少傾向にあり、平成18年においても大きく減少し、そのため、金融・保険業種全体の新聞広告費が前年度の91.2%となっています(資料7)。しかしながら、なお高い水準にあることは否定できず、夕刊紙、雑誌等に視野を広げれば、十分な貸付け条件を掲示しない中小業者の広告や、超高金利の実態を隠蔽し、利便性のみを強調したヤミ金業者の広告まで入り乱れて多数掲載されています。
大手サラ金業者で借り入れができなくなった多重債務者が、中小貸金業者を経てヤミ金業者に流れていくのは典型的なヤミ金被害の実態であり、返済資金に窮し追いつめられた債務者がこのような安易な広告に飛びつき、ヤミ金被害を多発させる要因になっていることは否定できません。
また、消費者金融を借入先とした理由の第1位が「たまたま宣伝を見たから」というものであり、新聞広告は、宣伝媒体中のテレビに次ぐ第2位(40.5%)である(平成18年3月22日独立行政法人国民生活センター「多重債務問題の現状と対応に関する調査研究」(資料4))ことから、高い影響力を有していることは明らかです。

2. 現時点における広告の自主的規制の必要性
ところで、上記のとおり、概ね3年の経過期間においては現行の出資法上限金利での営業が可能です。貸金業者大手5社(武富士、アコム、プロミス、アイフル、三洋信販)の無担保貸付残高は計5兆7893億円と依然高水準であり(平成19年度3月期中間単体決算(資料5))、広告量はこの間一部業者の不祥事等に伴うテレビCM自粛のため減少傾向にありますが、上記5社の広告費用の合計は半期で230億円以上の高水準を依然として維持しています(資料5)。この経過期間において違法金利業者の広告が続けられることは、利息制限法違反の貸付けを、適法な金利での営業であるとの誤解を与え、明らかに違法営業による被害の拡大を助長することとなります。
上記多重債務問題改善プログラムにおいては、貸金業者の広告については、借り手保護の観点から、方法や内容等を制限することが定められ、金融庁において具体的規制内容の策定作業が進められています。
かかる現状に鑑みれば、利息制限法違反の金利を掲げた広告が行われ続ける状況は、上記の多重債務問題対策の流れに完全に逆行するものです。かかる現状に鑑み、概ね3年の経過期間を待たずしての貸金業者の貸付金利の適正化を促し、新たな多重債務者の発生を防止すべく、利息制限法違反の貸付け業者の広告は、概ね3年の経過期間を待たずして早期に中止されることが必要です。

3. メディアによる自主規制基準の遵守の要請
ところで、放送、新聞メディアは、視聴者・読者の利益を図るため、広告について既に次のとおり自主規制基準を設けていますが、利息制限法違反営業の広告は、明らかにその規制基準に該当します。
(1) 新聞広告倫理綱領及び新聞広告掲載基準
日本新聞協会は、「新聞広告の及ぼす社会的影響を考え、不当な広告を排除し、読者の利益を守る」趣旨のもと、新聞広告倫理綱領を定め、その中において、「新聞広告は、真実を伝えるものでなければならない」、「新聞広告は関係諸法規に違反するものであってはならない」旨の基本原則を定めています。この基本原則を受けて、「新聞広告掲載基準」の中で、「取引などに関し、表示すべき事項を明記しないで、実際の条件より優位または有利であるような表現のもの」の掲載を禁止しています。
(2) 上記自主規制基準への該当性
利息制限法に違反する金利での貸付け広告は、明らかに「不当な広告を排除し、読者の利益を守る」趣旨に反し、民事上無効の違法金利を適法金利と誤解させる広告は「真実を伝えるもの」とは到底いえないものと考えます。
一連の最高裁判決において、みなし弁済規定が事実上適用の余地がなくなり、また、これを踏まえてみなし弁済規定の廃止、グレーゾーン金利の撤廃が決まった以上、出資法の上限金利を基準として適法な営業と考えることはもはや出来ません。
もとより、貸金業者に概ね3年の経過期間を待たずして、自主的な違法金利での広告の中止を期待することは全く出来ません。上記のような、貸金業者に対する広告規制の動きや、現に貸金業者の広告量が減少傾向にある現状に鑑み、各広告媒体主の自主規制基準を適用の上、早急に違法金利業者の広告を中止することを要請します。

第3. サラ金広告の真の問題点

昨今のサラ金の広告は、「契約内容をよくご確認下さい」「収入と支出のバランスを大切に」等の借り手に対する抽象的な注意書を附するものが主流となっています。しかし、多重債務問題の主たる原因は、利息制限法違反の高金利による返済能力を超えた貸付けにあります。にもかかわらず、依然違法金利を明示した広告がなされ、それが民事上の無効の違法金利である旨は一切告知されず、このような広告は、かえって適法な貸付けであるかのような誤解を与える効果を有しています。また、夕刊紙、雑誌等の中小貸金業者の広告については、十分な貸付け条件さえ示されず、中には貸金業者を装ったヤミ金業者の広告も掲載されています。
問題は違法な高金利、それを隠蔽する広告のあり方そのものにあります。にもかかわらず、今後も違法金利業者の広告を認めるのであれば、放送、新聞・雑誌業界の違法性の認識に問題があると考えざるを得ません。
したがって、各メディアが、多重債務問題の対策の流れに逆行することなく、自主的判断のもと違法金利業者の広告を速やかに中止されることを強く要請します。

以上
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