東京弁護士会

産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会
報告書に対する意見書

2008(平成20)年1月15日
東京弁護士会
会長 下河邉 和彦

第1 はじめに

平成19年12月10日、産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会報告書(以下、「報告書」という。)が示された。当会は、平成19年7月30日付「産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会中間整理に対する意見書」(以下、「中間整理意見書」という。)において、(1)販売契約が、無効・取消・解除等により遡及的に消滅したときは、クレジット事業者は、販売業者と連帯して既払い金の返還を含む無過失共同責任を負う旨を法律上明記すること、(2)特定商取引法の適用対象となる取引形態において、個品割賦購入あっせん取引を利用するときには、顧客の総債務残高が手取り年収額の3分の1をこえることとなる新たなクレジットを原則として行ってはならないなどの具体的基準による総量規制を法律上明記すること、(3)割賦払いの要件を撤廃し、1回払いや2回払いのクレジット契約も適用対象とすること、(4)指定商品制を廃止すること、との意見を述べた。
今回、同委員会が、消費者保護法規としての実効性を一層高めるべきであるとの観点から、個品割賦購入あっせん業者に対する登録制の導入と行政処分規定の整備、書面交付義務の強化、加盟店調査等に基づく適正与信義務の導入、与信契約のクーリングオフ規定の導入を報告書に盛り込み、加えて、当会が中間整理意見書において求めていた過剰与信防止義務、割賦の定義及び指定制の見直し、とりわけ限定的ではあっても既払い金の返還ルールを提唱していることについては、大いに賛意を示すものである。
しかしながら、報告書には、なお不十分ないし不明確な部分もあるので、改正の趣旨をさらに徹底させる見地から、当会は、以下のとおり意見を述べる。

第2 意見の趣旨

1 個品割賦購入あっせん取引においては、販売契約の取消・無効・債務不履行による解除のいずれの場合であっても、また、特定商取引法の規制対象取引に限定することなく、クレジット事業者に対し、既払い金の返還を求められるとすべきである。

2 加盟店調査等に基づく適正与信義務の対象について、特定商取引法規制対象取引か否かにかかわらず、個品割賦購入あっせん取引の場合を広く対象にすべきである。

3 過剰与信にあたるか否かの判断基準に、年収基準等の具体的で分かりやすい数値基準を設けるべきである。

第3 意見の理由

1 既払い金返還の対象範囲

報告書は、個品割賦購入あっせん取引において、特定商取引法類型(通信販売を除く)の取引を行う販売業者等が、与信契約に関する重要事項について、不実の告知を行った場合、あるいは、与信契約の締結を必要とする事情又は与信契約締結の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて不実の告知を行った場合、購入者は与信契約を取り消すことができるよう措置を講ずるものとしている。
しかしながら、そもそも個品割賦購入あっせん取引は、販売業者がクレジット事業者から代金の立替払いを受け、販売契約に基づく債務の履行はその後の問題となることから、構造的に、悪質商法に利用されたり、販売業者の信用リスクが顕在化しやすい点に問題がある。購入者が、販売契約の取消・無効・債務不履行による解除によって、契約関係を解消しても販売業者から既払い金を回収できない場合、販売業者の信用リスクを負担するのは、消費者ではなく、加盟店管理を通じて履行体制について調査・確認をすることが容易で、かつ加盟店との提携により利益を得るクレジットシステムの提供者たるクレジット事業者であるべきことは当然といえる。
また、特定商取引法規制対象取引以外の取引についても、悪質な販売業者が個品割賦購入あっせん取引を利用して不適正な販売方法を用いて取引を行っている例は少なくない。例えば、1997年1月に破綻したココ山岡宝飾店は「5年後買戻し特約」を勧誘手段として、個品割賦購入あっせん取引を利用してダイヤモンド等の宝石類を販売していたものであるが、店舗取引まで規制対象に含めなければ、このような大規模かつ深刻な消費者被害にも迅速な対応ができない。また、判断能力が不十分な高齢者等に対し、利用もしない呉服等の服飾品を店舗において次々と購入させるという事案(呉服次々販売)も現に生じているが、これらの場合、報告書の内容での改正案では、特定商取引法規制対象取引ではないという理由のみによって保護されなくなる。この点、全国の消費生活センターに寄せられた次々販売に関する相談は、2006年度には16,113件寄せられ、うち販売信用(クレジット)を利用したケースは約6割で、販売信用の内訳をみると、「個品割賦購入あっせん契約」が9割以上を占めており(国民生活センターHPより)、個品割賦購入あっせん取引が消費者被害を導きやすい取引であることが統計上も明らかとされている。
よって、販売契約の取消・無効・債務不履行による解除のいずれの場合であっても、また、特定商取引法規制対象取引に限定することなく、クレジット事業者に対し、既払い金の返還を求められるとすべきである。
報告書が、現在、特定商取引法の改正において導入が提言されている過量販売取消権と既払い金の返還ルールに関連して言及しているとおり、取消権の行使はクレジット事業者に対する既払い金返還が認められることによって初めて実効性ある救済が可能となるのであり、この趣旨を個品割賦購入あっせん取引一般に及ぼすことは、クレジットシステムが消費者の信頼を獲得し、健全な発展を促す契機ともなると考える。

2 加盟店調査等に基づく適正与信義務の導入

報告書は、加盟店調査等に基づく適正与信義務の導入についても、個品割賦購入あっせん取引、かつ、特定商取引法規制対象取引(通信販売を除く)に限定している。
しかしながら、前述のとおり店舗取引においても重大なクレジット被害が発生している実態に照らし、特定商取引法規制対象取引に限らず適正与信義務を導入すべきである。
また、報告書は、加盟店調査を行う時期について、加盟店契約締結及び消費者等からのクレームが寄せられたとき等適切な時点としている。この点、消費者等からクレームが寄せられたときに調査義務を課すべきことはもちろんであるが、2005年に被害が顕在化し大規模な詐欺事件に発展したいわゆるサムニングループなど、悪質リフォーム事件等においては、監督官庁に対し多数のクレームを受け付けられた販売業者が別名称の会社を設立して同様の営業を継続する例も少なくないという実態も存在することから、加盟店契約締結時に調査義務を課すことは不可欠と考える。

3 過剰与信にあたるか否かの判断基準の具体化

報告書は、過剰与信にあたるか否かの判断基準について、収入・資産等の支払能力、販売数量や過去の購入履歴、購入意思その他の事情について具体的な調査を課すこととし、一律の基準を法定することは適当でないが、考慮すべき要素や何らかの具体的目安を法解釈のガイドラインで提示すべきである、とする。
基本的な方向性には賛成であるが、過剰与信防止の実効性を確保する見地からは、具体的な分かりやすい目安として、年収基準等の具体的な数値基準を設けることが不可欠と考える。

以上
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