東京弁護士会

犯罪被害者に対する情報開示に関する意見書

平成16(2004)年1月13日
東京弁護士会
会長 田中敏夫

意 見 の 趣 旨
    
  1.  犯罪被害者に対する情報開示につき、行政裁量によって可否および方法等が決められている現状は妥当ではなく、多様な立場の意見を徴して法制度の整備を行ったうえでなされるべきである。
  2.  このうち少年事件については、加害少年の健全育成や家族等関係者の人権にも十分な配慮がなされた法制度とすべく、特に慎重な検討がなされるべきである。

意 見 の 理 由
    
  1.  犯罪被害者に対する事件処理結果等の通知その他の情報開示は、犯罪被害者に対する最も基本的かつ重要な支援のひとつであるところ、現在、これについては、法務省において局長通達を以て定められているのみであり、国民的な議論の中で多様な立場の意見が反映された法制度が整備されているとは言い難い。
  2.  このような中で、新聞報道(平成15年6月4日付読売新聞夕刊)によれば、法務省は、少年院に収容されている少年の退院・仮退院時期を通知する制度を今年度中にも創設する方針を固めたとされており、その後の報道(平成15年7月14日付共同通信)では、神戸市で平成9年に起きた連続児童殺傷事件で関東医療少年院に収容中の男性について、同少年院から仮退院の申請を受けた関東地方更生保護委員会の担当者が被害者の遺族と面談し、男性の仮退院直後に「仮退院した」などの情報を遺族に開示する方針を伝え、また、既に仮退院申請や矯正教育の内容などが説明されたとされている。さらに、平成15年10月8日付朝日新聞朝刊等によれば、仮退院当日に遺族に対して仮退院の事実を通知するとも報道されている。
  3.  犯罪被害者に対する情報開示については、一定の範囲内において一定の方法により行われる必要性は認められるものの、具体的に、どのような場合にどのような範囲に対して行うべきであるか、また、生じうる弊害をどのように防止するかなどについて行政裁量に委ねられることは相当でない。特に、少年の退院・仮退院情報の開示については、これまで法務省の通達においてすら明確に定められていない。
    今般の事件を契機に、多様な立場の意見を徴したうえで法制度の整備が図られるべきである。
  4.  上記法制度を整備するにあたり、少年事件については、少年の健全育成に悪影響を及ぼさないよう、また、家族等関係者の人権侵害を惹起しないよう、格別な手当がなされるべきであり、慎重な検討を要する。犯罪被害者に対する情報開示が不適切に行われた場合、少年の健全育成にとって決定的な悪影響を及ぼしたり、家族等関係者に致命的な損害を与えたりする可能性があるからである。
    例えば、長崎市の幼児誘拐殺人事件において、補導された少年に関して、インターネットの掲示板に氏名、住所、学校名等が書き込まれたり、顔写真が携帯電話のメール等で出回ったりしたことがあり、これに対して法務省は当該掲示板の管理人に対し削除を要請し、また、当会は、このようなことの行われないよう、マス・メディアをはじめ広く市民に呼びかける会長声明を本年7月15日付けを以て行った。
    犯罪被害者に対する情報開示を行う場合にも、再び同様の問題を生じたり、マス・メディアによる興味本位の報道がなされたりするおそれは十分にあるのであって、このような弊害を防止する方策も検討される必要がある。
    少年法第5条の2が被害者に対する情報開示とともに加害少年の健全育成や家族等関係者の人権にも配慮していることが銘記されるべきである。
以上
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