東京弁護士会

各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入及びパリ原則に準拠した政府から独立した国内人権機関の設置を求める決議

本会は、わが国における人権保障を推進し、国際人権基準の実施を確保するため、2008年の国際人権(自由権)規約委員会の総括所見をはじめとする各条約機関からの相次ぐ勧告をふまえ、国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度の導入及び国連の「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」に合致した、真に政府から独立した国内人権機関の設置を政府及び国会に対して強く求める。

2011(平成23)年5月31日
東京弁護士会

【決議の理由】

1 個人通報制度について

個人通報制度とは,国際人権(自由権)規約をはじめとする各人権条約によって保障された権利を侵害されたと主張する個人が,裁判などの国内での救済手段を尽くしてもなお救済されない場合に,人権条約上の委員会に直接通報し,権利救済を図ろうとする制度である。

この個人通報制度を導入するためには,各人権条約の人権保障条項について個人通報制度を定めている選択議定書を批准する又は同条約の個人通報条項の受託宣言をすることが必要である。

残念ながら,わが国の裁判所が国際人権条約の適用には積極的ではないこと,民事訴訟法の定める上告理由に国際条約違反が含まれていないことなどから,わが国において,国際人権基準の国内的実施が極めて不十分となっている。そのため,各人権条約における個人通報制度がわが国で実現すれば,人権を侵害された個人が各人権条約上の委員会に見解・勧告等を直接求めることが可能になる。その結果,人権侵害に対する具体的救済の可能性が広がるのみならず,わが国の裁判所も国際的な人権解釈に目を向けざるを得なくなることにより,わが国における人権保障水準が国際基準にまで前進し,また,憲法の人権条約の解釈が前進するなどの著しい向上が期待される。

2 国内人権機関の設置について

国連決議及び国連人権諸機関は,国際人権条約及び憲法等で保障される人権が侵害され,その回復が求められる場合には,司法手続よりも簡便で迅速な救済を図ることができる国内人権機関を設置するよう求めており,多数の国が既にこれを設けている。

国内人権機関を設置する場合,1993年12月の国連総会決議「国内人権機関の地位に関する原則」(いわゆる「パリ原則」)に沿ったものであることが必要である。具体的には法律に基づいて設置されること,権限行使の独立性が保障されていること,委員及び職員の人事並びに財政等についても独立性が保障されていること,委員の多様性が保障されていること,調査権限及び政策提言機能を持つことなどが必要とされている。

国連人権理事会,人権高等弁務官,政府報告書を審査する各人権条約上の委員会等の国連人権諸機関は,わが国に対し,早期にパリ原則に合致した国際人権機関を設置するよう勧告している。また,国内人権NGOからも国内人権機関設置の要望が高まっている。

現在,わが国には法務省人権擁護局の人権擁護委員制度があるが,独立性等の点からも極めて不十分な制度である。

このような状況の中で,日本弁護士連合会は2008年11月18日,パリ原則を基準とした「日弁連の提案する国内人権機関の制度要綱」を発表した。

さらに,2010年6月22日には,法務省政務三役が「新たな人権救済機関の設置に関する中間報告」において,パリ原則に則った国内人権機関の設置に向けた検討を発表するなど,国内人権機関設置に向けた機運が高まっている。

3 本会は,わが国における人権保障を推進し,また国際人権基準をわが国において完全実施するための人権保障システムを確立するため,国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度を一日も早く導入し,パリ原則に合致した真に政府から独立した国内人権機関をすみやかに設置するよう政府及び国会に対して強く求めるものである。

以上

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