東京弁護士会

「商品先物取引法施行規則」及び「商品先物取引業者等の監督の基本的な指針」改正案に対するパブリックコメント

2014(平成26)年4月25日
東京弁護士会  会長 髙中 正彦

「商品先物取引法施行規則」及び「商品先物取引業者等の監督の基本的な指針」改正案について以下のとおり意見する。

意見内容

 商品先物取引法施行規則(以下「施行規則」という。)改正案第102条の2第2号は、7日間の熟慮期間を設け、その後書面で顧客の理解度等を確認すれば、69歳以下の者に対する不招請勧誘禁止を解禁するものであるが、この程度の留保をつけても、商品先物取引が委託者等に対する保護が欠けている取引である状況を改善できないので、反対する。
 商品先物取引業者等の監督の基本的な指針(以下「監督指針」という。)改正案Ⅱ-4-2(4)②イに新設された規定を加えても、不招請勧誘に伴う弊害の防止には全く不十分であるので反対する。

理由

1 施行規則改正案第102条の2第2号は、現行商品先物取引法が政令で商品先物取引の取引所取引を不招請勧誘禁止取引として指定し、先物被害を劇的に減らすことに成功したものを、省令の改正によって実質的に骨抜きにし、再び被害を拡大させるものである。

2 商品先物取引の悲惨な被害事例は過去において枚挙にいとまがなく、当会においても長年その被害撲滅に力を注いできたものである。先物取引被害の生じる原因は、商品先物取引が本来相場師などプロ中のプロがしのぎを削る特殊な世界の取引であり、素人が予想もできないスピード感で値動きをするにもかかわらず、そこに知識も経験もない消費者が参入させられることで、プロの外務員の言いなりにならざるを得なくなり、手数料稼ぎの意図を持つ外務員の思うままにハイリスク取引を頻繁に繰り返させられるからである。
 消費者である顧客が先物取引に参入するきっかけは、外務員の言葉巧みなセールストークを信じ込んで契約を決意するのがほとんどで、参入後も外務員の言いなりになるのは、最初のセールストークを信じて誤った信頼感を抱き続けてしまうからである。すなわち、消費者の先物取引被害の大半は、不招請勧誘の弊害に由来するものである。平成23年1月1日施行の現行商品先物取引法により不招請勧誘が禁止されて以降、先物取引被害が劇的に減少したのはまさに不招請勧誘と先物取引被害との間に一定の因果関係があったことを推認させるものである。

3 このように、不招請勧誘は、先物取引の危険性を全く知らない消費者に外務員の巧みなセールストークが真実であると誤信させ、外務員に対する盲目的な信頼を醸成させるきっかけを作る。そのため、今回の施行規則改正案第102条の2第2号が定める69歳以下の者について不招請勧誘を緩和する一定の条件は、不招請勧誘による被害拡大を防止するのにほとんど役立たないであろうことが容易に理解できる。
 まず、7日間の熟慮期間であるが、外務員のセールストークを信じ込んでいる者は、7日間程度の時間があっても、外務員が「これが規則ですので、1週間間を空けてそれから注文します」と言えば、それを信じて待つだけである。
 そもそも熟慮期間の制度は、旧海外商品先物取引規制法に14日間の熟慮期間の制度が置かれながら、消費者被害を防止するにはほとんど役立たなかった経緯がある。

4 また、熟慮期間経過後、理解度等を書面で確認する制度についても、過去の被害事例でも外務員を信頼する顧客らは、自らに不利な書面であっても外務員が指示するなら言われるままに書いてしまう傾向が多々みられ、ほとんど被害防止に役立ってこなかった。
 よって、施行規則改正案第102条の2第2号のような改正を行えば、69歳以下の消費者に対してはほぼ何の障害もなく不招請勧誘を行えるようになり、実質的には不招請勧誘禁止の無条件の廃止と同じことになる。 

5 なお、今回の施行規則改正案とともに公表されている監督指針改正案は、そのⅡ-4-2(4)②イにおいて、不招請勧誘に際し、年金生活者への勧誘を禁じ、また、これまで先物取引の経験のない者に対しては90日間の新規委託者保護規定を設け、投資可能資金額として顧客自らが申告した額の3分の1までしか証拠金として使わせないとする規定を新設した。
 しかしながら、これらの規定も「新設」とはいいながら、過去に類似の自主規制、ガイドラインが存在しながらも、いずれも多くの潜脱事案が報告されたなど、被害防止の決め手とはなっていなかったものである。いずれの場合も顧客が外務員に誤った信頼を寄せ、外務員が頼むと事実と異なる書面も作成してしまうために、「年金以外に収入がある」とか「投資可能金額を拡張して欲しい」などの書面を差し入れさせることで容易に潜脱が可能なのである。
 よって、監督指針改正案に新設規定をおいても、今回施行規則改正案で不招請勧誘禁止を事実上撤廃してしまえば、被害防止の決め手を欠くこととなり、多くの先物取引被害を発生させる危険性が大いに高まると容易に想定される。従って、当会は、表題の改正案に反対する。

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