東京弁護士会

商法(運送・海商関係)等の改正に関する中間試案に対する意見書

2015(平成27)年5月14日
東京弁護士会 会長 伊藤 茂昭

「商法(運送・海商関係)等の改正に関する中間試案」に関する意見募集に対する東京弁護士会の意見は、以下のとおりである。

提出した意見書(PDF:355KB)

凡例

第1 意見書本文の記載要領

1 論点ごとに、【該当部分】【意見】【理由】を記載した。
2 中間試案に記載の論点の全部について意見を述べているわけではない。

第2 略語一覧

1 法令
船主責任制限法 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律
モントリオール条約 国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(平成15年条約第6号)

2 資料(例示を含む。)
中間試案 法務省民事局参事官室「商法(運送・海商関係)等の改正に関する中間試案」(平成27年3月)
部会資料1 法制審議会商法(運送・海商関係)部会第1回会議(平成26年4月23日開催)商法(運送・海商関係)部会資料1
第1回会議議事録 同第1回会議PDF版議事録

意見書本文

【該当部分】
第1部
第1、2 第2、3(2) 第2、5(1) 第2、5(2) 第2、5(3)
第2、6 第2、8(2) 第2、9 第2、10 第2、11
第3、3 第3、4 第3、5

第2部
第1、1(1) 第1、1(2) 第1、3 第2、1 第2、3
第3、2 第3、4 第3、5 第4 第5
第6、2 第6、3 第7、1(1) 第7、6 第8、2(1)
第8、10 第9、1(3) 第9、2 第9、4
第3部
第1、2

【該当部分】
第1部第1、2

【意見】
乙案に賛成する。

【理由】
 陸上運送は陸上における運送を意味し、海上運送は湖、川、港湾その他の平水区域における運送を含むものを意味すると整理した方が、明確性の観点からは分かりやすい。
 船舶というものは、どこを航行するものであれ堪航能力を備えるべきである。

【該当部分】
第1部第2、3(2)

【意見】
1 同アは、賛成する。
2 同イは、甲案に賛成する。

【理由】
1 意見1について
 運送の安全を確保することは、重要である。

2 意見2について
 乙案によると、消費者や運送品の詳細を知り得ない利用運送人が荷送人となる場合の通知義務としては酷である。

【該当部分】
第1部第2、5(1)

【意見】
賛成する。

【理由】
請求原因と抗弁とが明確に区別され、かつ、それぞれの内容が具体的に規定されている。

【該当部分】
第1部第2、5(2)

【意見】
1 同アは、賛成する。
2 同イは、甲案に賛成する。

【理由】
1 意見1について
 運送品が高価品であることを運送人が知っていたときは、運送人は明告を求めることが可能であり、そのような運送人を免責する必要はないものと考えられる。

2 意見2について
 運送人に重大な過失がある場合には、運送人の故意による場合と同視することができると考えられる。
 乙案のような文言は少なくとも現行の商法の規定には見当たらず、乙案をあえて採用する必要性を見出しがたいものと考えられる。実質的にも、乙案によると、運送人はほとんど常に免責されることとなって、相当でない。

【該当部分】
第1部第2、5(3)

【意見】
甲案に賛成する。

【理由】
 責任限度額については、約款で定めることが可能である。
 延着による損害額は運送品の価額と論理的な関連性を有しているわけではなく、適切な責任限度額を定めることは困難であると考えられる。
 甲案によると、延着のおそれがある場合に物品を故意に滅失させる誘因が運送人に生ずるおそれがある旨の指摘があるが、そのような誘因に関する立法事実の存否については、必ずしも明らかではないものと考えられる。

【該当部分】
第1部第2、6

【意見】
甲案に賛成する。

【理由】
 乙案は、「......特に、国際海上運送を中心に、インコタームズのCIF条件等による輸入取引では、運送品が本船の船上に置かれた時にその滅失等の危険が買主に移転して......」(部会資料2の14頁)いる事案を主要な立法事実として想定しているようである。しかし、法制審議会商法(運送・海商関係)部会では、「......陸・海・空の国内運送部分と海商部分を主に審議する......」(第1回会議議事録5頁〔松井信憲幹事発言〕)こととされている。国際海上運送の事案を主要な立法事実として想定する点において、乙案は相当でない。
 国内の商品売買においては、当事者間の特約により、危険の移転時期を商品の引渡し時とすることが最も多いといわれている(滝川宜信『取引基本契約書の作成と審査の実務』67頁、325頁(民事法研究会、第5版、2014)、部会資料7の11頁、第2回会議議事録38頁〔山口修司委員発言〕参照)。また、貸借取引において貸主から借主に商品を運送する事案のように、運送品の全部滅失について荷受人が実質的な利益を有していない場合もあり得る(同議事録37頁~38頁〔道垣内弘人委員発言〕参照)。
 このように、運送がその履行の手段として用いられる契約の類型は多種多様であり、当該契約において実質的な利益の内容及び当該利益が帰属する者も同様なのであるから、荷受人に早期に危険が移転する契約のみを想定する乙案を採用することは、困難である。

【該当部分】
第1部第2、8(2)

【意見】
いずれも賛成する。

【理由】
1 運送品の損傷又は一部滅失の場合は、当該損傷等について必ずしも運送人が悪意(商法589条、566条3項。最判昭和41年12月20日民集20巻10号2106頁)であるとは限らない。
 現行法上も、消滅時効の中断のためには、裁判上の請求等が必要である。
 したがって、運送品の損傷又は一部滅失の場合は、この案は、現行法の規律と大きく異なるものではないと考えられる。

2 これに対し、運送品の全部滅失又は延着の場合は、当該全部滅失等について運送人は常に悪意なのであるから、運送人の責任に係る消滅時効期間は、現行法上、5年間である(商法522条本文)。
 標準貨物自動車運送約款31条1項は、「当店は、貨物の全部滅失に関し証明の請求があったときは、その貨物の引渡期間の満了の日から一月以内に限り、事故証明書を発行します。」と規定している。運送品の全部滅失の原因である事故が一般貨物自動車運送事業者等による事業用自動車に係るものである場合には、当該事故の記録を3年間保存しなければならない(貨物自動車運送事業輸送安全規則9条の2)。したがって、運送人は運送品を大量に取り扱うので証拠の保全を長期に行うことは困難であるとの指摘は、この案の根拠として必ずしも決定的なものではない。
 しかし、一部滅失と全部滅失との相違は相対的であり、両者の場合の間で消滅時効に関する規律を異なるものとすることは、国民に対する分かりやすさという観点からは相当でない。運送品の延着の場合についても、同様のことが当てはまる。

【該当部分】
第1部第2、9

【意見】
乙案に賛成する。

【理由】
1 乙案の(1)について
 運送人の責任については、複数の法律上の責任減免事由の規定があり、画一的に責任の額を定め、あるいは早期かつ画一的に運送人の責任を消滅させる必要性が高い場合が多いと考えられるところ、上記の責任減免事由の規定を不法行為責任にも及ぼすこととしないと、その立法趣旨を全うすることができないこととなるおそれがある。
 他方、当該運送契約による運送を容認していない荷受人については、過失により運送品の滅失等を引き起こした運送人との関係で、上記の責任減免事由の規定を及ぼすことには躊躇される。

2 乙案の(2)について
 被用者は運送人の指揮監督を受けて運送人の事業の執行に従事するものであり、運送人の責任を超える責任を負わせることは妥当でない。
 被用者に重い責任を課すと、事実上その最終的な負担が運送人に転嫁され、運送人に責任の減免を認めた立法趣旨を没却することとなるおそれがある。

【該当部分】
第1部第2、10

【意見】
賛成する。

【理由】
 現在の取引実務では、複合運送契約は一般的であり、諸外国の法制においても、複合運送契約に関する規律を設けるものがみられること等に照らすと、複合運送契約をめぐる法律関係を明らかにするため、新たに商法に規律を設けることが望ましい。
 運送区間ごとにその運送手段に応じた規律に服することとするのが、分かりやすさという観点から望ましい。
 日本法が準拠法となり、我が国の商法の適用を受ける複合運送契約を締結した荷主の予測可能性を重視することが、分かりやすさという観点から望ましい。

【該当部分】
第1部第2、11

【意見】
賛成する。

【理由】
陸上運送における貨物引換証については、近時の陸上・航空運送実務においてその利用例は紹介されていない。

【該当部分】
第1部第3、3

【意見】
1 同(1)本文は、乙案に賛成する。
 ただし、緊急の必要性がある場合その他の運送が行われる特殊な事情により、旅客の生命又は身体に関する運送人の責任を免除し、又は軽減することが相当と認められる運送については、運送人の責任の一部を免除する特約(当該責任の限度を定めるものを含む。)に限り、乙案の規律の例外とすることが望ましい。
 同(注)に記載の条項は、乙案を採用する場合は、削除することとしてもよい。

2 同(2)は、賛成する。

【理由】
1 意見1について
(1)旅客の生命及び身体の安全は、旅客運送において最も重要な要請である。
 自然人に対し日常的かつ大量に提供される役務において、旅客運送は、その生命及び身体に対する危険の程度が最も高いものの一つといってよい。
 したがって、乙案のような規律を設ける必要性は高い。

(2)消費者契約法上、旅客は必ずしも消費者(同法2条1項)に該当するわけではないので、同法により旅客の生命及び身体の安全を十分に図ることは困難である。そもそも、旅客と運送人との間に旅客運送に係る契約関係がない場合もあり得る。
 旅客が同法の消費者に該当する場合であっても、上記のとおり旅客の生命及び身体の安全は旅客運送において最も重要な要請なのであるから、軽過失による責任の一部免除(同法8条1項2号・4号参照)を許容すべきではない。また、運送人の責任の制限等を内容とする特約が、消費者の利益を一方的に害する条項として無効となる(同法10条)か否かは、必ずしも明らかではない。

(3)乙案を採用する場合、同案中「旅客に不利なもの」について、①運送人の責任の全部を免除するもの、②運送人の責任の一部を免除するもの(当該責任の限度を定めるものを含む。)、③運送に関し注意を怠ったことの主張立証責任を旅客に負わせるもの等の例示を加えるなど、その意味を明確にすることが望ましい(国際航空運送に関する規定ではあるが、モントリオール条約26条参照)。

(4)他方、大規模な災害が生じた場合等には、上記(3)の①から③までの各特約のうち②については、これを許容すべき場合があり得る。この場合等であっても、同①及び③の各特約についてまで許容すべき理由はないものと考えられる。
 そこで、緊急の必要性がある場合その他の運送が行われる特殊な事情により、旅客の生命又は身体に関する運送人の責任を免除し、又は軽減することが相当と認められる運送については、運送人の責任の一部を免除する特約(当該責任の限度を定めるものを含む。)に限り、乙案の規律の例外とすることが望ましい(物品運送に関する規定であるが、強行法規の例として、国際海上物品運送法17条参照)。

(5)乙案は、(注)に記載の条項の趣旨を拡充し、広く運送手段を問わない規律にするものということができるから、乙案を採用する場合は、当該条項を削除することとしてもよい。
 他方、万が一甲案が採用された場合は、繰り返し述べるように旅客の生命及び身体の安全は旅客運送において最も重要な要請なのであるから、当該条項を削除すべきではない。

(6)中間試案では商法590条1項自体は維持することが前提とされているが、上記本文において甲案と乙案のいずれを採用するかを問わず、同項の「注意ヲ怠ラザリシコトヲ証明スル」と民法415条との関係を含め、商法590条1項自体の内容を明確にすることが望ましい。

(7)【意見】1のただし書並びに上記(3)、(4)及び(6)については、あくまで当該例外の追加及び規律の明確化等をすることが望ましいことを述べるにすぎない。当該例外の追加及び規律の明確化等が困難であることが判明した等の場合には、繰り返し述べるように旅客の生命及び身体の安全は旅客運送において最も重要な要請なのであるから、乙案のまま要綱案の内容とすべきである。

2 意見2について
 現在の裁判実務では、損害額の算定に当たり、被害者及びその家族の情況は斟酌されている。また、商法590条2項を存置することとしても、その適用結果は裁判所に一任されることとなり、必ずしも旅客の保護に資するわけではない。

【該当部分】
第1部第3、4

【意見】
いずれも賛成する。

【理由】
 同(1)については、旅客の身回り品についても、携帯手荷物と同様の規律とすることが実態に合致する。
 同(2)については、携帯手荷物についての責任が受託手荷物についての責任より重いのは、不均衡である。

【該当部分】
第1部第3、5

【意見】
賛成する。

【理由】
現行法の規律と同様であり、これを変更する必要はないものと考えられる。

【該当部分】
第2部第1、1(1)

【意見】
1 同アは、反対する。
2 同イは、賛成する。

【理由】
1 意見1について
 発航の準備を終えた船舶に対する差押え等を許容することは、賛成する。しかし、そのためには、単に商法689条を削除すれば足りるのであって、同条を改正する必要はない。中間試案では、差押え等は「航海中の船舶(停泊中のものを除く。)に対してはすることができない」という改正が提案されているが、執行実務上、航海中の船舶を差押えできないことは当然の理であって、それを新たに明文化することに意義はない。むしろ、括弧内の「停泊中」の意義が必ずしも明白であるとは言えず、解釈上混乱を招くことを危惧する。そして、このような意義のない規定内容の反射として、発航の準備を終えた船舶に対する差押えが許容されるという解釈を導こうとすることは、迂遠にすぎる。反対に、商法689条を削除しても、発航の準備を終えた船舶に関する点を除いて、現在の執行実務に何ら影響を及ぼさない。端的に言って、差押え等ができるのは、執行官が本船に乗船して船舶国籍証書を取り上げることが可能な場合に限られるのであり、明文規定の必要性は認められない。

2 意見2について
 商法702条2項には合同会社についての規定が欠落しており、それを補正して、会社法上の制度に対応する必要がある。

【該当部分】
第2部第1、1(2)

【意見】
同エは、反対する。

【理由】
 中間試案は「契約で定める期間ごとに」に定めるが、この規定に反対する。商法701条2項は任意規定であって、任意規定がその規定内容の一部を「契約」に委ねることは自己撞着の誹りを免れない。言うまでもなく、任意規定は当事者間に特約がない場合に適用されるものである。このような規定内容を許すと、当事者が契約で定めなかった場合に適用されるべき本項が何らの意義も有しないことになる。したがって、「契約で定める期間ごとに」は「一定の期間ごとに」に修正されるべきである(この文言は交互計算の定義規定(商法529条)でも用いられている)。「一定の期間ごとに」と定めるときは、当事者が契約で定めなかった場合に、何をもって「一定の期間」とすべきかが探求されるという点に本項の意義が見出される。

【該当部分】
第2部第1、3

【意見】
1 同(1)は、賛成する。
2 同(2)は、賛成する。ただし、一部に疑問がある。
3 同(3)は、賛成する。
4 同(4)は、賛成する。

【理由】
意見2について
 定期傭船契約の内部的な権限分配の定め方は適切である。しかし、「船舶の利用に関する必要な指示(航路決定に関するものを含む。)」の括弧書きに疑問がある。定期傭船者は、特定の航海について船積み港と荷揚げ港を指定する(以下、「航海指定」という)。航路決定が航海指定を意味するのであれば、それは船舶利用の本質的な要素であって、ことさらに括弧書きを付す必要はない。他方、括弧書きを付すことによって航路決定に航海指定以外の意味を持たせるのであれば、その意味内容を明らかにする必要がある。このような曖昧さの一因は括弧書きという方式にある。括弧書きを用いるのであれば、法文上でその理由を理解できるように配慮することが望まれる。

【該当部分】
第2部第2、1

【意見】
賛成する。

【理由】
従来から学説の指摘するところであり、船長に過重な責任を負わせる理由はない。

【該当部分】
第2部第2、3

【意見】
1 同(1)は、賛成する。
2 同(2)は、賛成する。

【理由】
1 意見1について
 商法713条2項は、海員が航海ごとに雇用されることを前提する規定である。わが国にこのような雇用実態がない以上、不要な規定である。

2 意見2について
 商法717条は、通信・交通が未発達であり、航海中の船舶が孤立した状態にあった時代の規定である。現在では航海中の船長も容易に船舶所有者と連絡をとることができるので、不要な規定である。

【該当部分】
第2部第3、2

【意見】
いずれも賛成する。

【理由】
1 「(2)」について
 堪航能力担保義務違反による責任につき、外航の場合に適用される国際海上物品運送法では過失責任とされている。また、現代の船舶は機関・構造の複雑化や船体の大型化から、船舶の不堪航が隠れた欠陥によることも多く、相当な注意を尽くしたとしてもこれを発見できないような場合も多いとされるところ、そのような現代における無過失責任の維持は、運送人に不可能を強いるような場面を招来しかねず極めて酷な結果となる一方、不堪航の防止にどれほど効果的であるか疑問である。そこで、このような現状を踏まえた改正を行い、この点に関する我が国における内航と外航との不均衡を是正する本提案に異論はない。

2 「(3)」について
 堪航能力担保義務には、海上航行の安全を図るという公益的な意義も有していることから、運送契約当事者間の合意による免責を認めない規律を維持する本提案に異論はない。
 また、船舶所有者の過失又は船員その他の使用人の悪意重過失により生じた損害の賠償責任に係る免責特約を無効とする旨の規律は、免責約款の濫用による荷主あるいは証券所持人の権利の過度な制約に歯止めをかけるべくなされた1888年のブリュッセル国際商法会議における決議の趣旨に沿って定められたものとされているが、現在では、標準内航運送約款及び標準契約書式や内航海運業法8条による規律等、荷主を保護する規律も相当程度整備されてきており、運送人を不当に利して荷主あるいは証券所持人の利益を 一方的に害する特約が濫用されるような事態になることは想定し難いといえる。さらに、海上運送契約の当事者は事業者であることが多いことや、陸上運送契約においてはこのような免責特約の禁止が特段定められていないという現状もある。そこで、このような現代の状況を背景に、本来運送契約の内容如何は当事者の自治に委ねられるべきことを前提とし、運送人と荷主との適切な利益調整を実現するという観点からすれば、同規律を削除する本提案にも合理性が認められるため、異論はない。

3 「(5)」イについて
 (ア)については、裁判所の関与による審査の機会の確保、運送人の負担という点を併せ考慮すると、複数の手続を要する必要性合理性ともに乏しいと考えられるため、本提案に異論はない。
 (イ)及び(ウ)については、同規律は運送賃を掛けの後払いとすることが多い実務にそぐわず、また、競売権を行使しない場合における運送賃等請求権の消滅は運送人の利益を過度に害しうる一方、荷主としても、運送人による留置権の行使(商法753条2項)がなされた場合には運送賃等の支払を事実上強制される立場にあり、同規律を削除したとしてもその利益の過度な制約とはならないと考えられるため、本提案に異論はない。

【該当部分】
第2部第3、4

【意見】
いずれも賛成する。

【理由】
1 「(1)」について
 国内海上運送と国際海上運送とで異なる規律を維持する必要性合理性ともに乏しいこと、また諸外国の法制においても内航・外航の区別なく船荷証券の規律を定めるものが多いように、船荷証券に関する規律につき統一化を図ることには合理性があるものと思料する。また、内航海運では船荷証券が使用される事例が少ないとの指摘もあることからも、通常これが使用されている外航海運を規律する国際海上物品運送法に合わせた規律とする本提案の内容に異論はない。

2 「(2)」について
 上記(1)における理由と同様である。

3 「(7)」について
 商法に新しく複合運送を規定する以上、現に複合運送証券も船荷証券と同様のものとして流通していること、JIFFAにおける国際複合運送証券の記載事項の大部分が船荷証券のそれと同様であること等の状況を踏まえ、複合運送証券に関する規定を設け、これについても船荷証券と同様の規律を及ぼすことが合理的と思料する。

【該当部分】
第2部第3、5

【意見】
いずれも賛成する。

【理由】
1 「(1)」について
 そもそも海上運送状が船荷証券に代わって利用されるようになった理由の一つは、海上運送状には船荷証券とは異なり有価証券性がないという特色等があり、船荷証券とは異なった柔軟な対応が可能であるためと考えられる。したがって、海上運送状に一種の証拠証券を超えた証拠力を付与するか否か、どのような方法によりこれを提供することができるか等の判断は、当事者の事案に応じた柔軟な判断に委ねるのが妥当である。

2 「(2)」について
 船荷証券の代替として海上運送状の利用を認める以上、その記載事項を船荷証券のそれと同様のものとすることは合理的と考えられる。

3 「(3)」について
 上記(1)記載の理由と同様である。

【該当部分】
第2部第4

【意見】
賛成する。

【理由】
 まず堪航能力担保義務の点(商法786条1項、738条、739条)については、商法590条に関して大審院判例が示すとおり、旅客運送契約の内容には当然に旅客の安全な運送が含まれ、堪航能力担保義務違反の責任を過失責任とすることとなれば、なおさら旅客運送契約に基づく運送人のかかる義務と堪航能力担保義務とを区別することは困難になるものと思われる。また、商法590条による過失推定をも併せ考慮すれば、旅客の保護という観点から見ても特段に欠けるところはないといえ、海上旅客運送契約に基づく義務と独立して殊更に堪航能力担保義務を存置し、同義務違反に基づく損害賠償請求を観念することには実益が乏しいと思料する。
 その他の規定についても、いずれも現代の取引実態に適合しない規律であると思われ、また同規定の各事項は契約当事者の私的自治に委ねるのが相当であると考えられることから、殊更にこれらの規定を存置する必要性合理性はともに乏しいと思料する。

【該当部分】
第2部第5

【意見】
いずれも賛成する。

【理由】
 共同海損についてはヨーク・アントワープ規則(以下「YAR」という。)が国際的に受け容れられており、実務上も、任意規定たる現行商法の規律が適用されることはほとんどなく、同規則に則って処理されるのが通常である。
 よって、我が国においても、共同海損に関する規律を基本的にYARに整合せしめるという方向性は妥当と考えられ、かかる趣旨からなされている本提案に異論はない。

【該当部分】
第2部第6、2

【意見】
甲案に賛成する。

【理由】
 乙案は、衝突条約の規定に沿うものであり、それによると貨物運送契約等において航海過失免責等が適用される場合に求償の循環が起きるという不都合を回避でき、保険金支払いの実務にも合致するとされている。
 しかし、日本における裁判において衝突条約が直接適用されず日本の民商法の規定が適用される場合は、利害関係人が全て日本に属する場合、条約加盟国以外の船舶が関わる衝突の場合であって日本法が適用される場合等であるところ、内航船による貨物運送契約において航海過失免責が合意されることは多くなく、今回の改正で航海過失免責の規定は商法に取り入れないことが提案されているため、商法の規定が適用される場合に、求償の循環が生じ得ることはそれ程多くないと考えられる。また、求償の循環という不都合については、契約で対処される等しており、現規定で実務上不都合は生じていない。他方、共同不法行為者を不真正連帯債務の関係とせず、それぞれの債務を分割債務とした場合、被害者保護に欠け、他の不法行為の場合と比較して不相当と考える。したがって、甲案に賛成である。

【該当部分】
第2部第6、3

【意見】
賛成する。

【理由】
 衝突条約7条1項は、船舶の衝突によって生じた債権につき、損害の種類を限定することなく、事故発生日から2年の消滅時効を定めている。現行商法798条1項は、船舶衝突によって生じた債権は1年を経過したときは時効によって消滅すると規定されており、解釈上これは財産上の損害についてのみ定めたものと解されている。本改正は、財産権侵害に関する債権に限り、同条約に沿うように、1年の消滅時効を事故日から2年に変更するものである。
 衝突による損害を早期に特定する必要性と衝突の原因に関する証拠の保全が困難であるという海上危険の特異性から、衝突条約に従い、財産上の損害について上記のような特則を規定することには、一定の合理性がある。他方、民法の一部を改正する法律案(閣法第63号)724条の2では、人身損害に係る不法行為による損害賠償請求権について被害者等が損害及び加害者を知った時から3年間とする現在の規律を5年間に伸長することとされているところ、人身損害に関する債権の消滅時効を2年とすることは、人身保護の観点から疑問がある上、このような流れに逆行するものである。したがって、財産上の損害に限って、衝突条約に合わせ、事故日から2年の消滅時効を定める特則を設けることに賛成である。

【該当部分】
第2部第7、1(1)

【意見】
賛成する。

【理由】
 海難救助については、我が国は1910年の海難ニ於ケル救援救助ニ付テノ規定ノ統一ニ関スル条約(「10年救助条約」)を批准しており、日本船籍の船舶が他の締約国に属する船舶を救助した場合等は、10年救助条約が直接適用され、全ての利害関係人が日本に属する場合等は日本の民商法が適用される。また、1989年には、IMOにおいて海難救助に関する国際条約(「89年救助条約」)が成立し、我が国はこれを批准していないものの、同条約の内容は、LOF2011等契約書式等を通して、実務上広まっている。救助船舶等の船籍という偶然の事情により結果が異なり得るのは望ましくなく、国際的流れにも一致することから、基本的に上記各条約に沿った改正を行うことに異論はない。
 現行の規定は「義務なくして」規定する一方、802条では契約で救助料を定めた場合につき定めており、同法の規律が任意救助と契約救助のいずれを対象としたものであるか否か明らかではない。実務上は、専門的な救助業者が救助契約に基づき契約することが多い一方、救助業者以外の者が任意救助に従事する可能性も否定できないことからすると、各条約と同様に、本規定を任意救助及び契約救助を対象とした規律とすることは妥当と考える。したがって、提案に賛成である。

【該当部分】
第2部第7、6

【意見】
賛成する。

【理由】
 現行商法で1年としている期間を89年条約に従って2年にするものである。条約に従った改正であり、国際的流れに沿うものであり、賛成できる。

【該当部分】
第2部第8、2(1)

【意見】
賛成する。

【理由】
 保険法においては、質問応答義務が規定されているが、海上保険については、対象となる危険の個別性が高く、危険の内容及び程度を一般的に推定することが困難であり、また、危険開始までの期間が短く、質問応答義務による対応が時間的に困難な場合も少なくない。さらに、世界的に見て、海上保険は自発的申告義務が一般的であり、実務上それが浸透している。以上のとおり、海上保険について自発的申告義務を定めることは、内容として妥当であり、実務にも沿うものであるから、賛成である。

【該当部分】
第2部第8、10

【意見】
賛成する。

【理由】
 保険委付により、保険者が権利を取得すると、保険者に、船外撤去費用として多大な不利益が発生することがあり、約款上も保険委付することができない旨が定められている。委付は実務に沿わないものであり、規定を置く必要性が乏しいと考えられるため、賛成である。

【該当部分】
第2部第9、1(3)

【意見】
乙案に賛成する。

【理由】
 船舶先取特権の被担保債権は、原則として船舶の航海に関して発生した債権である。したがって、甲案でも乙案でも、当該船舶への乗組みに関しない債権は被担保債権から除外されることになる。船長その他の船員が予備船員として取得した債権は、そもそも被担保債権の範囲から除外されると解されるので、甲案でも乙案でも結果に差異は生じない。乙案は「当該船舶への乗組みに関して生じたもの」という限定を明文化するが、注意的にそのことを明示することに意義が認められる。他方、船長その他の船員の雇用契約債権が船舶先取特権の被担保債権とされるのは、船員保護という社会政策的理由によるものであるが、乙案による場合でも船員保護に欠けることはない。なお、予備船員としての地位に基づく債権について特別な保護が必要であるとしても、それは船舶先取特権とは別個の問題である。

【該当部分】
第2部第9、2

【意見】
1 同(1)は、賛成する。
2 同(2)は、甲案・乙案ともに反対し、(注)の考え方に賛成する。

【理由】
意見2について
 第4順位の「航海継続の必要によって生じた債権」に生じる船舶先取特権は、外航船については、「航海」の意義を限定的に解すべきであり、また燃料や需品を船舶所有者が直接購入するという実態を考慮すべきであって、船舶抵当権に劣後させることが望ましい。しかしながら、内航船については、船舶所有者が必ずしも十分な信用力を有しているとは言えず、国内の燃料販売業者等を保護する必要性が認められる。したがって、無余剰の場合を想定すると、船舶先取特権を船舶抵当権に優先させるべきである。船舶抵当権に対する優劣について、外航船と内航船とを区別しないのであれば、国内業者を保護するために、この先取特権を一律に船舶抵当権に優先するという取扱いにすべきである。
 第5順位の「船主責任制限法第2条第6号に規定する物の損害に関する債権(同法第95条第1項)」は、同法の定める制限債権者が責任制限の対抗を受けるのに、その他の債権者が無限責任を追及できることが不公平であることから、公平をはかるために先取特権が付与されたものである。他方、船主責任制限法に基づく先取特権が船舶抵当権に劣後することになると、先取特権を付与した趣旨が没却してしまう。また、実務上この先取特権がよく利用されていることに鑑みると、抵当権に劣後し、無余剰によって実行できないという事態を回避する必要性がある。したがって、第5順位の先取特権が抵当権に優先することを確保すべきである。
 以上の理由から、中間試案に注記された「上記のようなただし書を設けない(現行法の規律を維持する)という考え方」に賛成する。

【該当部分】
第2部第9、4

【意見】
乙案に賛成する。

【理由】
 商法704条2項にいう「船舶の利用につき生じたる先取特権」は、船舶先取特権に限定されると解すべきである。船舶先取特権は民法上の先取特権に対する関係で、いわば特別法の地位にある。そのため、法律は、両者が競合する場合を想定した規定を置いていない。その整備を伴わないまま、民法上の先取特権の効力を船主に対して及ぼすことには反対であり、定期傭船者についても同様である。

【該当部分】
第3部第1、2

【意見】
甲案に賛成する。

【理由】
 国際海上物品運送法における高価品免責の規律の趣旨について、制定当時は、高価品は単に高価であるのみならず紛失しやすいものであるから、あらかじめその種類及び価額の明告がない場合に、他の運送品と同様に責任の限度額まで賠償責任を負うのでは運送人の保護に十分でないためであると説明されているようである。
 このような規律の実質が現在において適切でないことが明らかであるとまではいえないものと考えられる。

  • 法律相談インターネット予約
  • 中小企業法律支援センター
  • 弁護士会の法律相談センター
  • 借金専門法律相談センター
  • 日弁連ひまわりお悩み110番