東京弁護士会

加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめに対する意見書

第1 はじめに

 消費者庁及び農林水産省の共催で開催された「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」は、2016年11月29日付で「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ」(以下「本取りまとめ」という。)を公表した。食品表示は食品の安全性を担保する役割を担うものの1つであり、また、食品表示が適切にされることによって、消費者は自主的かつ合理的な食品の選択をすることが可能となる。そこで、食品表示のこのような役割を前提に、主に消費者が自主的かつ合理的な食品の選択をすることを可能とするという観点から、以下の意見を述べる。

第2 意見の趣旨

  1. 本取りまとめが、原料原産地の義務表示の対象を全ての加工食品とする点について賛成する。
  2. 本取りまとめが、義務表示の対象とする原材料を製品に占める重量割合上位1位の原材料のみとする点について反対する。重量比率の上位の原材料から順に当該加工食品の重量の一定割合を占めるまでの原材料を対象とする方法あるいは上位3位までの原材料を対象とする方法のいずれかを選択できるとする方法を検討すべきである。
    また、いわゆる「冠表示」については、商品名に含まれる原材料について、重量割合に関わらず当該原材料の原産地を記載すべきである。
  3. 本取りまとめが、義務表示の例外として、「可能性表示」、「大括り表示」を認める点について反対する。事業者の実行可能性への配慮は必要であるが、このような例外を設けないと対応することが不可能かについてはさらに検討すべきである。
  4. 本取りまとめが、中間加工原材料について、当該中間加工原材料の「製造地表示」という方法をとる点について反対する。中間加工原材料の製造地に加えて、原料の原産地も表示すべきである。
  5. 第3 意見の理由

    1 義務表示の対象を広げる点について

     現行法上では、原料原産地の義務表示の対象が22食品群と4品目に限られているところ、義務表示の対象を全ての加工食品に広げる点は、消費者に十分な情報を開示し、自主的かつ合理的な選択を可能とするものであり、賛成である。

    2 義務表示の対象とする原材料について

    1.  義務表示の対象とする原材料を製品に占める重量割合上位1位の原材料のみとすると、上位1位の原材料が当該加工食品に占める割合が少ない場合、食品の選択に十分な情報が得られないこととなる。例えば、重量割合上位1位の原材料が当該加工食品に占める割合が10%であり、その産地がA国である場合、2位以下の原材料の産地が全てB国であるとすると、当該加工食品のうち、90%を占める割合の原材料の産地はB国ということになり、原材料の主要な産地がA国であると信頼して購入した者の信頼は裏切られることとなる。
      この点については、重量比率で一定程度の割合までを占める原材料について原産地表示をすることが適切であると考えられる。
      もっとも、その一定程度の割合までを占める原材料数が多い場合、限られたスペースの中で表示を行うことが困難となる場合がある。
      そこで、重量比率の上位の原材料から順に当該加工食品の重量の一定程度(例えば50パーセント)を占めるまでの原材料を対象とする方法あるいは上位3位までの原材料を対象とする方法のいずれかを選択できるとする方法を検討すべきである。
    2.  特定の原材料の名称を、商品名または商品名の一部として使用するいわゆる「冠表示」については、当該原材料が当該食品の特徴となっており、消費者が高い関心を持つ点である。事業者自身がその原材料を当該食品のいわゆる売りとして名称を付け販売する以上、重量割合にかかわらず、当該原材料の原産地を記載すべきである。

    3 義務表示の例外を認める点について

    1.  「可能性表示」について
      本取りまとめは、対象原材料の産地について、国別に重量の割合の高いものから順に国名を表示する国別重量順表示を原則としつつ、国別重量順表示を行った場合に容器包装の変更が生じると見込まれる場合には、過去の使用実績を踏まえて、使用可能性のある複数国を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示する「可能性表示」という方法を認める。
      しかし、この方法では、実際にどの国のものが原材料として使われているかが不明である。
      本取りまとめは、使用可能性のない国名が表示されることはなく、表示された国名以外の原産国の原材料が使われることがないから有意な情報を提供する方法であると述べるが、A国、B国、C国の名称が記載されており、このうちのどれかの国が原産地だということがわかっても、結局、当該原材料の原産地がどこであるかが不明であるのでは、表示の意味がない。
      また、本取りまとめは、「可能性表示」は使用実績又は使用計画等に基づき産地を列挙する方法と述べている。使用計画に基づく表示が認められるのだとすると、今後使用する計画さえあれば、従来その国を原産地とする原材料を使用したことがなくとも表示の対象とすることができ、事業者の恣意的表示が可能となり、正確な情報提供がなされない可能性もある。
    2.  大括り表示について
      本取りまとめは、対象原材料の産地について、国別重量順表示を行った場合に、3以上の外国の産地表示に関して容器包装の変更が生じると見込まれる場合には、3以上の外国の産地表示を「輸入」と括って表示する「大括り表示」という方法を認める。
      しかし、この方法では、先ほどの「可能性表示」以上に、どの国を原産地とするのかが不明である。
      また、本取りまとめは、輸入品と国産を混合して使用する場合には、輸入品と国産との間で、重量の割合の高いものから順に表示するとし、国産原料か外国産原料かは明確であり、有意な表示であるとする。
      しかし、消費者の関心の対象は、国産であるか否かという点だけではなく、外国産の場合はどの国を原産地とするかという点にもある。大括り表示を認めては、消費者の自主的かつ合理的な選択が困難となる。
    3.  大括り表示+可能性表示について
      本取りまとめは、大括り表示を用いても容器包装の変更が生じると見込まれる場合に、3以上の外国の産地表示を「輸入」と括って表示できるとした上で、「輸入」と「国産」を使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示できる「大括り表示+可能性表示」を認める。
      しかし、この方法では、そもそも輸入品なのか国産なのかもわからず、表示をする意味が全くなく、到底認められる方法ではない。
    4.  事業者の実行可能性について
      たしかに、容器包装の変更が生じうるという事業者の実行可能性への配慮自体は必要であるが、例外を設けないと対応することが不可能かさらに検討すべきである。
      仮に例外を設けることが避けられないとしても、例外を定める際は、例えば、ホームページでの表示や問い合わせ窓口の設置等、必ず消費者が実際の原産地を知ることができる機会を確保すべきである。また、例外を定める際は、全ての加工食品を原材料の義務表示の対象とした趣旨が没却されないよう、要件を限定すべきである。

    4 中間加工原材料の製造地表示について

     本取りまとめは、対象原材料が中間加工原材料である場合に、当該中間加工原材料の製造地を「○○(国名)製造」と表示するとする。
    しかし、この方法では、原料の原産地が不明であり、自主的かつ合理的な選択に必要な情報を消費者に提供できない。また、消費者が製造地を原産地と誤認する可能性がある。中間加工原材料の製造地に加え、原料の原産地の表示も義務付けるべきである。
    中間加工原材料については、一般の原材料と比較し、原材料の原産地を明示することが困難な場合があるのであれば、それについては、要件を限定して、例外を定めることによって対応すべきであり、一律製造地のみを表示の対象とすべきではない。

    以上

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