東京弁護士会

国民生活センターの直接相談業務等廃止反対の意見書

2001年9月19日
東 京 弁 護 士 会
会 長 山 内 堅 史

第1 意見の趣旨

 現在政府において進められている行政改革の議論において、国民生活センターの直接相談業務及び商品比較テスト・自主調査テストの業務を廃止するとの提言がなされているが、反対である。むしろこれらの業務は、消費者生活の安全・向上を目指して一層拡充・強化する 方向で改革を進めるべきである。


第2 意見の理由

1 本年8月10日、内閣に設置されている特殊法人等改革推進本部において「特殊法人等の個別事業見直しの考え方」が報告・公表された。これによると、国民生活センターの事業について、(1)同センターが直接行う消費生活相談事業を廃止し、地方公共団体の消費生活センターに対する助言や問題事案の早期発見・情報分析に絞ること、(2)商品テスト事業のうち商品比較テストや自主調査テストを廃止し、危害商品の苦情処理テストに限定すること、(3)各種事業につき客観的な事業評価を実施し国民に情報提供すること、などを提示している。このうち、(3)事業評価システムの設定については、非営利事業の特性を配慮することを前提に、基本的に賛同し得るものであるが、(1)直接相談業務の廃止、(2)商品比較テスト及び調査テストの廃止については強く反対する。


2 国民生活センターが行う事業は、経済活動の歪みから多発する消費者問題について、苦情相談の処理や調査・分析を行い、未然防止に向けた情報提供を行うものであり、国及び地方公共団体が行うべき消費者行政機能そのものである。とりわけ、経済状況が複雑多様化している今日において、その重要は一層増大しており「特殊法人改革」という一般論に乗って国民生活センターの事業を縮小し、弱体化することは誤った方向といわざるを得ない。


3 今回の提言のうち相談業務に関することは、直接の相談業務は地方公共団体の消費生活センターに委ね、国民生活センターは地方公共団体の消費生活センターに対する助言や問題事案の早期発見・情報分析に特化すべきというものである。しかし、国民生活センターが行う消費生活相談事業は、地方公共団体の補完的役割としてではなく、国の消費者政策を推進するために不可欠の独自なものである。最近の消費者被害は、インターネット取引被害など、従来になかった新たな情報機器・手段を利用したものや、ココ山岡事件や各種モニター商法・抵当証券被害などに見られるように全国的規模にわたるものが増えている。このような新規かつ多様・大規模な被害に適切に対処するためには、国民生活センター自身が直接相談処理を行うことを通じて最先端の紛争解決水準を獲得していることが不可欠の前提である。「現場こそ最良の教師である」とは、われわれ弁護士にもいわれることであるが、真の被害解決のためには、実際の被害・相談を目にすることが大切であり、そのような役割がコンピューターを通じて各地から寄せられるデータを分析することで果たし得ると考えることは、消費生活相談の現場を無視した机上論といわざるを得ない。


4 また、今回の提言のうち商品テストに関することは、国民生活センターの行う商品テストを人の生命・身体等に重大な影響を及ぼす苦情処理テストに限定し、商品比較テストや自主調査テストは廃止するというものである。これは、商品比較テストや自主調査テストは民間の消費者向け雑誌等が行うものに委ねれば足りるという趣旨かとも思われる。しかし、国民生活センターが行う商品テストは、民間雑誌に多く見られるような新製品の性能や特徴を比較するではなく、新製品に限らない各種製品の安全性や適正な表示の有無など製品のマイナス部分を含む総合的な情報提供を行うことで消費者の選択に供することを目的としているもので、こうした観点でのテストを民間雑誌に期待することは困難である。


5 以上のとおり、真に消費者行政の機能を強化するためには、国民生活センターをはじめとする各地の消費生活センターが、消費生活相談の現場に立って、トラブルの実態を把握することが不可欠である。従って、国民生活センターの直接相談処理業務及び商品比較テスト・自主調査テストを廃止することは反対であるし、逆に大幅に拡充・強化するこそ進められるべきである。


以 上

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