アクセス
JP EN

防衛装備移転三原則の5類型制限撤廃等に反対し撤回を求める会長声明

2026年06月05日

東京弁護士会 会長 石原 修

与党(自由民主党及び日本維新の会)は、本年(2026(令和8)年)3月4日、現行〈防衛装備移転三原則〉の「運用指針」の基本原則である5類型制限を撤廃して、殺傷能力のある武器の輸出をも広く認めること等を内容とする提言を取りまとめ、これを受けて政府は、本年4月21日、防衛装備移転三原則とその運用指針を改定する閣議決定及び国家安全保障会議決定を行った。

今回の改定は、運用指針の基本となっていた、完成品としての武器の輸出は、救難、輸送、警戒、監視及び掃海のいわゆる「5類型」に限られるとする制限を撤廃し、戦闘機、護衛艦、潜水艦等、直接人を殺傷し、又は武力紛争の手段として物を破壊することを目的とする「自衛隊法上の武器」の完成品を輸出することを、広く認めるものである。

その移転先については、国連憲章の目的と原則に適合する方法で使用することを義務付ける「国際約束の締結国」に限定するとされているものの、その内容は抽象的であり、必ずしも絶対的なものではない。他方で「現に戦闘が行われていると判断される国」に関する一定の限定についても、「特段の事情」があれば可能とするものであって、その基準は抽象的で不明確であり、歯止めとしての機能は弱い。

我が国では、戦後半世紀にわたり、武器輸出を原則禁止する〈武器輸出三原則〉が堅持されてきたが、この原則が、2014(平成26)年に安倍内閣によって、〈防衛装備移転三原則〉に転換されて以降、閣議決定だけで運用指針が改定されて、武器輸出先等の制限が緩和され続けてきた。当会は、平和国家の歩みに反するとして、それに反対する会長声明をそのつど発出してきた(2014(平成26)年4月15日付「「防衛装備移転三原則」に反対する会長声明」、2024(令和6)年4月16日付「多国間共同開発兵器の第三国輸出に反対し撤回を求める会長声明」)。

そもそも、従来の〈武器輸出三原則〉は、戦後の防衛産業の復興とともに武器輸出への動きが取りざたされるなかで「平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避する」(1976(昭和51)年2月政府答弁)という我が国の平和主義を体現する国是として掲げられたものである。今回の運用指針の改定によって、殺傷能力のある武器の輸出が解禁となれば、たとえ輸出時点において相手先が紛争当事国でないと判断されたとしても、その後に当該地が紛争当事国となるならば、日本製武器が人の殺傷に使用されることを押しとどめることはできない。また、「特段の事情」があるとして、紛争当事国に日本製武器が輸出されるならば、それが紛争の相手国に敵対行為とみなされるおそれは増大する。

日本国憲法9条1項は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と、我が国の恒久平和主義が武力によらない国際平和の保持とともにあることを定めている。今回の改定に際して、高市早苗内閣総理大臣は、5類型の制限を撤廃しても平和国家の基本理念を堅持することに変わりはない旨述べている。しかし、この撤廃は、他国を通して戦争・紛争に加担し、武力の行使を助長することにもなりかねず、「平和国家としての我が国の立場」を変容させるものであって、日本国憲法が掲げる恒久平和主義の理念に反するものである。

今回の改定が日本国憲法の平和主義との関係で孕む問題は上記のとおりであるが、仮にその点を措くとしても、日本の国のかたちをこれほど大きく変更する国家としての意思決定が、国会を全く関与させず、閣議決定及び国家安全保障会議の決定だけでなされるということも看過できない。これは、国の重要な政策について民主的・国民的議論がなされないまま、政府だけで決定したということを意味するのであって、日本国憲法の国民主権、議会制民主主義をないがしろにするものというほかない。

当会は、防衛装備移転三原則の運用指針の基本となる5類型の制限撤廃等の政府決定に対し、日本国憲法が掲げる恒久平和主義の理念に反するものとして強く反対し、撤回を求めるものである。

                            

印刷用PDFはこちら(PDF:96KB)