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精神科病院の病床を居住系施設に転換することに反対する会長声明

2014年07月31日

東京弁護士会 会長 髙中 正彦

  2012年の国の調査によると、日本には34万余りの精神科ベッドがあり、30万人以上の患者が入院している。平均在院日数は約292日に及び、長期入院者が世界的に見ても突出して多く、生涯のほとんどを病院の中で過ごして終える人が多い。
  OECD(経済協力開発機構)の2014年7月発表によれば、2011年時点の日本の人口10万人当たりの精神科のベッド数は269床であり、加盟34か国平均68床の約4倍にも達している。
  このような中、厚生労働省は2014年7月「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」が作成した報告書において、条件付きながら空いた病床をその敷地のまま居住施設に転換することを認める結論を取りまとめ、その転換をもって「病床が削減された」とみなして施策を行っていく方針を明らかにした。
  しかしながら、本年1月に政府が批准し、2月から国内的に発効した国連障害者権利条約は、すべての人が障がいの有無を問わず社会に包摂され共に生きる社会をめざすことを目的としている。
  病床転換型居住系施設を認めることは、精神科病棟を居住施設と言い換えることで「退院した、病床が削減された。」とすることを認めるに等しく、精神障がいのある人に対する旧態依然の隔離・収容政策の看板だけを付け替えてその延命を図るまやかしと言わざるを得ない。これは、上記条約に違背する過ちであって、到底容認できず、即時の撤回を求めるものである。
  今求められていることは、精神障がいのある人が地域で人としてあたりまえの暮らしを取り戻すための地域医療・福祉の充実であって、精神科病院も地域生活を支えるための24時間対応相談機関・デイサービス等に生まれ変わり、病院の敷地内ではない、真の意味での地域にこそグループホーム・地域精神医療保健の総合基幹センター等が設立されるべきである。
  当会は、国に対し、国連障害者権利条約に沿った、精神障がいのある人の真の地域移行を実現する地域精神保健福祉政策の推進を強く求めるものである。