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中国残留孤児国家賠償請求訴訟東京地裁判決に対する会長談話

2007年01月30日

東京弁護士会 会長 吉岡 桂輔

 本日、東京地方裁判所は、いわゆる中国「残留孤児」国家賠償関東訴訟において、国の「早期帰国実現義務」、「自立支援義務」そのものを認めず、原告らの請求を全面的に棄却する極めて不当な判決を言い渡した。
当会は、1986(昭和61)年10月、中国残留邦人に対し、一時帰国者・永住帰国者に対する対策と中国永住者・即時帰国できない者についての対策という2つの視点から、政府に対し、中国残留邦人に関する要望書を提出した。
しかし、その後も中国残留邦人に対する支援策が不十分であったことから、2002(平成14)年12月20日、残留孤児40名が、国に対し、早期帰国実現義務違反と自立支援義務違反に基づく損害賠償請求訴訟を起こした。その後も全国各地で同種の裁判が提起され、現在、全国14地裁、1高裁において約2200名もの中国「残留孤児」が原告となり、被害救済を求めて闘っている。また6割を超える孤児が生活保護のもとでの生活を余儀なくされており、原告らの請求は切実である。
しかしながら、本日言い渡された本判決は、このような原告ら中国「残留孤児」の思いや悲痛な叫びを一顧だにしない、極めて非情で冷酷な判決であった。
2006年12月1日の神戸地裁は、国の「帰国制限」施策の違法および「自立支援義務」違反を厳しく指摘する判決を言い渡した。同日、安倍晋三首相は「中国残留孤児は高齢化しており、大変な苦労があったと思う。国としてきめ細かな支援をしていかなければならない」とコメントしたものの、実際になされた支援は、わずかに、「中国帰国者あんしん生活支援計画」経費(新規分)4億2400万円の予算増額がなされたのみであり、残留孤児の苦難に満ちた人生に対する政府の措置としては不十分極まりないものであった。
戦後60年以上が経過し、残留孤児も高齢化が進み、残留孤児が生きているうちに残留孤児問題を解決するためには一刻の猶予もできない。
当会は、国の責任を否定した本日の東京地裁判決に遺憾の意を表明するとともに、政府及び国会に対し、本日の東京地裁判決を評価するよりも、神戸地裁判決の判断を重く受け止め、引き続きその責任において、残留孤児の老後の生活保障など支援施策の抜本的な見直しや立法措置を行うなどの施策を早急に実現することを求めるものである。