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いわゆる「ロコ・ロンドン貴金属取引」被害に関する会長声明

2007年03月28日

東京弁護士会 会長 吉岡 桂輔

 近時、「ロコ・ロンドン貴金属取引」などと称する、海外における貴金属の現物価格を差金決済指標として差金の授受等をする私的差金決済取引が創出され、被害が急増している。いわゆる「ロコ・ロンドン貴金属取引」は、証拠金の10倍から20倍程度の想定元本の現物の売買を行った場合の差金決済契約上の地位が付与され、かつ決済期限を繰り延べしていく取引である。商品先物取引に類似する取引であるから、このような商法を行うことは商品市場類似施設の開設を禁止する商品取引所法第6条に違反するものであると考えられるうえ、商品市場における取引によらないで商品市場における相場を利用して差金の授受をすることを禁止する商品取引所法329条の趣旨にも反するものと考えられる。
また、私的差金決済取引は、賭博罪の構成要件に該当するものであり、法令又は正当な業務による行為として違法性阻却がなされない限り、少なくとも一般消費者に対して勧誘される私的差金決済取引は許容されるものではない。またこのような取引を行う業者はそれ自体が賭博場であり、そこで利益を図ろうとするものとして、賭博場等開帳図利罪(同法第186条第2項)に該当しうるとも考えられる。
「ロコ・ロンドン貴金属取引」商法は、いわゆる「外国為替証拠金取引商法」(正常な金融商品取引としてされる外国為替証拠金取引と区別するため「外国為替証拠金取引商法」という)と同一の人的系譜を持ち勧誘方法も同様である。「外国為替証拠金取引商法」においては、99歳の高齢者から金員の交付をさせたり、個人が会社法人格を詐称したり、取引の終了を申出た後に仮装取引による証拠金の返還を拒絶するなど、信じがたい深刻な被害事案が多数見られたが、このような商法の生起・蔓延は、私的差金決済取引を任意に創出して一般消費者を対象に無差別の勧誘をする商法自体に対する法規制のあり方が充分でなかったことに起因することに思いを到さなければならない。
「外国為替証拠金取引商法」被害は、数年間に亘り被害の拡大が阻止されなかった。「ロコ・ロンドン貴金属取引」商法に対して早急に適切な手当をしなければ、「外国為替証拠金取引商法」被害による教訓が活かされずにその轍を踏み、今後も差金決済指標を任意に設定して創出される可能性がある詐欺的商法による被害を漫然と生起・拡大させることが強く懸念される。
よって、国(衆参両議院、金融庁、経済産業省、検察庁、警察庁)に対し、喫緊の課題として、いわゆる「ロコ・ロンドン貴金属取引」と上記関係法令の関係を正しく認識し、適正な対処がなされることを求めるため、本声明を発することとする。