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大和都市管財の全被害者の早期救済を求める声明

2007年06月12日

東京弁護士会 会長 下河邉 和彦

 大阪地方裁判所は、平成19年6月6日、大和都市管財国家賠償請求事件について、国の賠償責任を認める判決を下した。
上記判決は、詐欺的商法を行っていた大和都市管財の実態を、監督権限を有する近畿財務局が早くから把握しており、平成9年の時点においては、大和都市管財が資本欠損に陥って、自転車操業状態にあり、短期間のうちに同社が破綻する危険が切迫している事態を容易に認識し得たにもかかわらず、同社に対する帳簿類の検査や預貯金口座の検証など必要不可欠かつ基本的な調査を怠ったまま、同年12月21日に同社の抵当証券業規制法に基づく更新登録をしたことにより、平成10年以降に同社から抵当証券を購入した原告らに被害をもたらしたことを明確に認定した。
身体被害の場合に国家賠償法上の責任を認めた最高裁判決はあるが、大規模な財産被害については、たとえ監督官庁の怠慢が被害を拡大させたとしても、国の賠償責任を認めた例はこれまでなかった。しかし、上記判決は、大和都市管財については、単なる抵当証券のリスクを超えた詐欺的商法による被害であり、その実態を知り得た近畿財務局のみが被害拡大を防止できたとし、「具体的事情の下において、当該規制権限の不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められ、その不行使により国民の受けた被害を当該国民のみに負担させるのが損害賠償制度の根幹をなす損害の公平な分担の見地からもはや許容し得ないようなときには、当該規制権限の不行使は、当該損害を受けた者との関係において、国賠法1条1項の適用上違法となるものと解すべきである。」と判示して、金融商品購入による被害であっても、自己責任を制度的に問えない事態に対して、情報を独占している国が責任を負うべき場合があることを正面から認めたものであり、司法による被害者救済の機能を高めた画期的な内容である。
当会は、被害発生当初の平成13年4月、当会主催による被害者説明会を開催して、弁護団の立ち上げを支援してきた。
国においては、本判決を真摯に受け止め、本件原告のみならず全国で1万7000人以上、被害総額は1100億円とされる大和都市管財の全被害者の早期救済を図るための措置を早急に講ずることを強く要請する。