東京弁護士会

教育関係三法「改正」法案について慎重審議を求める会長声明

2007年06月12日

東京弁護士会 会長 下河邉 和彦

 学校教育法、地方教育行政組織法、教育職員免許法など教育関係三法改正のための審議が、参議院文教科学委員会で大詰めを迎えている。15日の中央公聴会開催後に採決の運びとも伝えられているが、改正法案には、以下のとおり、見過ごすことができない問題がある。

改正法案では、新たに10項目にわたる義務教育の目標が設けられ、「我が国と郷土を愛する態度」(学校教育法21条3号)など、国や地方公共団体が本来その内容を一義的に決定するには適さない、多様で多義的なことがらが掲げられている。しかし、義務教育の目標がこのような形で学校教育法に定められた場合には、本来多様であるものが、公の立場からする一義的なものとして、教育の現場では子どもに教えられて、その結果、子どもが自主的自律的に、一人の人間として成長発達して、自己の人格を完成実現させていくことを妨げ、子どもにとっての学習権の保障に反することになりかねない。

次に、改正法案は、新たに教員免許更新制度を導入するとともに、任命権者による「指導不適切教員」の認定制度を設けるなど、人事管理の厳格化を企図している(教育職員免許法、教育公務員特例法)。しかし、この新制度は、不適切教員を排除して、その質を向上させるものとして機能するよりも、免許管理者・任命権者の意向をより重視する教員をつくり出すことになりかねず、教員と子どもとの直接的教育的な関わりを困難にするものであって、子どもの学習権保障を疎かにしかねないものである。

さらに問題は、改正法案が学校評価制度(学校教育法42条)を導入する点である。わが国の教育現場において、子どもの人権が侵害されている背景には、教員への強い管理統制によって、子どもの個性に応じた多様な教育が困難になっている現状や、教育の場における過度の競争による子どもへの強いストレス等があることは、国連子どもの権利委員会の総括所見においても指摘されているところであり、当会の「子どもの人権110番」に寄せられる相談においても、つとに確認されているところである。学校評価制度は、学校間、そして学校内における競争の激化により、教員への管理統制の強化と子どもへの強いストレスの負荷をもたらし、子どもを一層追いつめ、いじめなどの重大な人権侵害の状況をさらに深刻化させかねないものである。

以上のとおり、教育三法「改正」法案には、子どもの学習権の保障をそこない、人権侵害の状況を一層深刻なものにさせかねないという問題がある。
当会は、このままでの改正法案の成立には強く反対するとともに、参議院においてこれらの問題点の解消のため、慎重な審議を強く求めるものである。

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