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「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」に関する声明

2008年06月11日

東京弁護士会 会長 山本 剛嗣

 本日、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」(促進法、通称「ハンセン病問題基本法」)が参議院本会議で可決・成立した。

 促進法は、国の強制隔離政策によりハンセン病の患者であった者等が人権上の制限、差別等を受けたことに対する反省から平成13年6月「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支払い等に関する法律」を制定し、ハンセン病患者であった者等の被害の回復を図ったが、なお、未解決の問題が多く残されていることから、ハンセン病の患者であった者等の福祉の増進、名誉の回復等のための措置を講ずることによりハンセン病問題の解決の促進を図るために制定されたものである。

 促進法は、ハンセン病問題に関する施策は、ハンセン病の患者であった者等が受けた被害を可能な限り回復することを旨として行われなければならないこと、ハンセン病問題に関する施策を講ずるに当たっては、入所者が現に居住する国立ハンセン病療養所等において、その生活環境が地域社会から孤立することなく、安心して豊かな生活を営むことができるように配慮されなければならないこと、何人もハンセン病の患者であった者等に対して差別その他の権利利益を侵害する行為をしてはならないことを基本理念として定めている。そして、この基本理念にのっとり、諸施策を策定・実施する国及び地方公共団体の責務を明記するとともに、国立ハンセン病療養所等における療養及び生活の保障、社会復帰の支援並びに日常生活及び社会生活の援助、名誉の回復及び死没者の追悼、親族に対する援護に関する規定を定めている。

 日本弁護士連合会(日弁連)は、2001(平成13)年6月21日の「ハンセン病患者であった人々の人権を回復するために」(勧告)、同年11月9日の人権大会におけるハンセン病問題についての特別決議、2005(平成17)年9月28日の「ハンセン病患者であった人々の人権を回復するために」(勧告)などにおいて、国に対し、終生在園の保障と療養所の医療・看護体制などの整備・充実を含め、社会復帰支援、医療と生活の保障、住居の確保、親族関係の調整、精神的ケア、名誉回復措置、差別と偏見の除去等のあらゆる分野にわたり、十分な施策を講ずるよう求めてきた。

 また、東京三弁護士会は、2001(平成13)年及び2006年(平成18年)に「ハンセン病の患者であった人々の人権を回復するために(要望)」と題する要望書を東京都に提出し、本年3月10日には、当会は、国に対し、ハンセン病の患者であった人々の高齢化を十分に踏まえて、ハンセン病の患者であった人々の意見を最大限尊重して、ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決を実現するために、早期に「ハンセン病問題基本法」を制定するよう強く要望する意見書を公表した。

 今回の促進法の内容は、日弁連及び当会がこれまで求めてきたものの基本的な部分が法律として明文化されたものであり、積極的に評価することができる。

 今後、国及び地方公共団体は、この促進法にのっとった施策を迅速に実施することが求められている。

 当会は、ハンセン病問題の解決に向けて引き続き積極的に取り組む決意を表明するとともに、国及び東京都が促進法の内容を実現するための諸施策を迅速に策定・実施するよう求めるものである。