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少年法「改正」法案に対する会長声明

2008年06月12日

東京弁護士会 会長 山本 剛嗣

 本年6月11日、参議院において、政府提出にかかる少年法一部「改正」法案が、民主、自民、公明三党により修正されたうえで可決成立した。
この問題について法制審が発表した少年法「改正」要綱(骨子)について、当会は、本年2月13日に会長談話を発表し(被害者等審判傍聴規定の新設を含む法制審要綱についての会長談話)、多くの単位弁護士会からも反対意見や慎重な審議を求める意見が出されていた。にもかかわらず、このような重大な「改正」が、短期間の国会審議でなされたことは非常に残念である。

 当会は、被害者等による少年審判の傍聴については、少年審判規則29条に基づき、裁判所が認める範囲で審判への在席が認められる場合があり、それ以上の規定を設けるべきではないと考えてきた。
その理由は、(1)被害者の審判傍聴を意識することにより、少年が萎縮して事実を説明したり心情を語ったりすることが困難になり、また、裁判官も傍聴被害者に配慮することにより審判の教育的、福祉的機能が損なわれてしまうおそれが大きいこと、(2)適切な処遇選択に不可欠な少年の特性や生い立ち、家族関係等、プライバシーに深く関わる事項を取り上げることが困難になること、(3)内省が深まっていない少年の発言や態度によって被害者がさらに傷ついたり、審判廷内でトラブルが生ずることも否定できないことなどである。

 国会の審議において、被害者傍聴の要件として、「少年の健全育成を妨げるおそれがない」ことが明記されたこと、12歳未満の少年の事件は傍聴対象事件から除外したうえで、12歳、13歳の少年の事件への被害者傍聴については、少年が精神的に特に未成熟であることを十分考慮しなければならないとされたことなどの修正がなされたことには一定の意義がある。しかし、問題の重大性に比してごく短期間の審議しかなされておらず、修正された「改正」法についても根本的な問題点が払拭されたとは到底言えない。例えば、被害者傍聴を認める際に弁護士付添人を付することを要しない場合が生じることは、上記の弊害を一層深刻化させる可能性が大きい。

 当会は、今なされるべきことは、各関係機関が、2000年少年法「改正」で導入された、被害者等による記録の閲覧・謄写(少年法5条の2)、被害者等の意見聴取(少年法9条の2)、審判の結果通知(少年法31条の2)の各規定の存在を、被害者等に対し、さらに丁寧に知らせ、これを被害者等が活用する支援体制を整備すること、あわせて、犯罪被害者に対する早期の経済的、精神的支援の制度、および国費による被害者代理人制度を、すみやかに拡充ないし新設すべきであると考える。当会は、今後、「改正」法により導入された制度の運用を注視しつつ、少年の権利擁護と成長支援及び被害者支援に向けた具体的活動を充実・強化する決意である。

以上