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グッドウィルの廃業に伴う、労働者の生活安定支援策と 労働者派遣法の抜本的な見直しを求める会長声明

2008年08月01日

東京弁護士会 会長 山本 剛嗣

昨日、株式会社グッドウィル(以下、「グッドウィル」という)は、去る6月25日に行なった表明のとおり、有料職業紹介事業および一般労働者派遣事業を廃止した。その背景には、人材派遣業界の最大手であるグッドウィルが、労働者派遣法が禁止している港湾運送作業について、派遣先が同作業に従事させていることを知りながら、労働者派遣を継続し、その派遣先がさらに別の港湾運送作業に派遣するという二重派遣による職業安定法違反の労働者供給事業を行ったこと等により、去る1月11日に東京労働局から労働者派遣事業停止命令および改善命令を受けていたこと、さらに、グッドウィルおよび同社従業員3名が、去る6月24日に職業安定法違反幇助により略式命令が発せられ、罰金刑が科せられたこと、同日、厚生労働省が同社に対する労働者派遣事業許可を取消す方針を固めたこと等の事情があった。

 グッドウィルは、労働者派遣法が明確に禁じている危険な港湾運送作業に派遣した上、雇用責任があいまいになることから厳しく禁じられている労働者供給形態で二重派遣を続けてきたものであり、その違法性は極めて強く、厳しく責任が問われるべきである。

 厚生労働省の発表によれば、今年5月時点でもグッドウィルの派遣労働者数は1日あたり平均約7000人にも及んでいる。これらの労働者は、日雇派遣として、劣悪な労働条件で不安定な生活を余儀なくされ、居住場所を確保することさえ困難な生活を送っている者もいるが、さらに、グッドウィルの廃業によって、仕事を失い、雇用保険による保障もなく、生活を維持することが困難になる者が多数に及ぶことが懸念される。

 厚生労働省は、去る6月25日、グッドウィルの事業廃止に伴う派遣労働者等への支援について、対策本部の設置と、全国の労働局、ハローワーク、労働基準監督署での対応等を発表した。しかしながら、日雇派遣労働者が置かれた状況に照らせば十分なものとはいいがたく、国は、安定した雇用の確保のみならず、当面の住居の確保等についても積極的な支援策を講じるべきである。

 また、日雇派遣については、これがワーキングプアの温床であり、労働者に極めて不安定な生活を強いるものであるから、直ちに禁止すべきである。

 雇用は、本来、雇用主による安全配慮義務や賃金支払い義務などの雇用責任が明確となる直接雇用が原則であり、労働者派遣は例外的な就労形態である。しかるに、国は規制緩和政策の下、派遣対象業務を拡大するなどして、非正規雇用を増大させ、更にはグッドウィルのような違法な労働者派遣や職業安定法違反の就労を横行させるに至っている。

 当会は、国に対し、グッドウィルの派遣労働者に対する積極的な支援策を講じるとともに、労働者派遣法についても、違法派遣を取り入れた企業への制裁措置、日雇い派遣の原則禁止、同じグループ内企業だけへの派遣についての上限規制にとどまらず、雇用の安定確保と格差解消のために、より抜本的な見直しを検討することを強く求めるものである。