東京弁護士会

非正規切りに遭った労働者に対する緊急支援と労働者派遣法の抜本的改正を求める会長声明

2009年01月15日

東京弁護士会 会長 山本 剛嗣

 アメリカの金融危機に端を発した世界的な不況の中、自動車や電機の大手企業などで、派遣労働者などの非正規労働者を解雇・雇い止めにする“非正規切り”が次々と行われている。厚生労働省の調査では、昨年10月から今年3月までの間に失業する非正規労働者は8万5000人以上にのぼるとされる。しかも、住居の状況が判明しているのは約3万5000人であり、そのうち2000人以上が寮などを追われて住まいも失っている。残りの約5万人については住居喪失の有無すら把握できておらず、実際の住居喪失者の数は更に増加することが予想される。

 こうした中、市区町村の役所が休業となる年末年始の間、NPO法人・弁護士・労働組合などからなる市民の自主的組織が、仕事や住居を失った労働者に対し食事や宿泊場所を提供した日比谷公園での「年越し派遣村」には、“非正規切り”に遭った労働者などが、主催者側の予想を大きく上回って約500人も集まるという事態となった。仕事をなくし自殺を考えていた非正規労働者もこの「年越し派遣村」で生き延びることができたなどの報道もあり、市民の自発的活動が労働者の命を救った形となった。
しかし本来、仕事や住居を失った労働者の救済は、生存権保障の理念からすれば国の責任で行われるべきものである。「年越し派遣村」の主催者が要求するまで宿泊場所の提供等の対応をしなかった国及び自治体には、事態の深刻さの認識において強い反省が求められるとともに、雇用保険財源の有効活用、雇用促進住宅や公営住宅の利用、就職安定資金融資の活用、及び生活保護の迅速な決定などを行うことによって“非正規切り”に遭った労働者に対する緊急支援に全力で取り組むことが求められている。

 そもそも今日の“非正規切り”による労働者の窮状は、従前禁止されていた労働者派遣の解禁、およびそれに続く相次ぐ労働者派遣法の改正などの労働分野での規制緩和により、労働者保護のための法規制が弱められ、正規労働者が非正規労働者に置き換えられていったために生じたものである。
このように今般の労働者の窮状の原因は明確であるにも拘わらず、政府が昨年11月4日に国会に提出した労働者派遣法の改正案は、派遣対象業務を限定せず、労働者が極めて不安定な地位に置かれる登録型派遣も禁止せず、派遣業者の得るマージン率も無制限のまま放置するなど、現在の労働者派遣法によって生じている問題を解決するものには到底なっていないばかりか、かえって、常用型派遣に事前面接を許容することによって正規労働者の常用型派遣への置き換えを進行させるなど、労働者の保護を後退させる側面すら有するものとなっている。
“非正規切り”が横行する今こそ労働者の権利保護を強化するべきであり、派遣労働者の保護を弱めるような、時代に逆行した労働者派遣法の改正は到底容認できない。

 よって、当会は、国及び自治体に対し、“非正規切り”に遭った労働者に対する緊急支援に全力で取り組むことを求めるとともに、国に対し、現在審議されている労働者派遣法改正案ではなく、真に労働者の権利を保護する労働者派遣法への抜本的改正を強く求めるものである。

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