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社会資本整備審議会住宅宅地分科会民間賃貸住宅部会 「中間とりまとめ」に対する会長声明

2009年12月22日

東京弁護士会 会長 山岸 憲司

(2010年1月29日付の最終とりまとめに対する意見書はこちら

 国土交通大臣の諮問機関である社会資本整備審議会の住宅宅地分科会に設置された民間賃貸住宅部会は、民間賃貸住宅を巡る紛争の未然防止や滞納・明け渡しを巡る紛争等について検討し、2009年8月12日付で「中間とりまとめ」を公表し、年内にも「最終とりまとめ」を公表し、国土交通大臣に答申することとなっている。
しかし、上記「中間とりまとめ」については、以下のような問題があるため、最終的な答申のとりまとめにあたっては、それらの諸点を踏まえたものとすべきである。

(1) 近時、滞納・明け渡しを巡るトラブルが増加しており、家賃債務保証業者による違法な追い出しが問題となっている。同業種について、自主規制によっては十分に規制することはできないことから、許可制または義務的な登録制を導入し、業務の範囲を限定し、法手続によらない追い出しを禁止するなどの行為規制を設けて、違反した場合の罰則を規定する必要がある。

(2) また、家賃債務保証業に限らず、賃貸住宅の管理会社や管理業務を行う賃貸人(サブリース業者を含む)についても、上記の行為規制の対象とすることで潜脱を防止すべきである。

(3) 民間賃貸住宅の分野において、事業者側に金融機関の信用情報を利用した契約の拒否を認めることは、社会的弱者を民間賃貸住宅から排除することとなるおそれがあるから、そのような信用情報の集積・利用は、認めるべきではない。

(4) 明け渡しを認める基準については、明け渡しの円滑を求めるが余り、賃借人の居住権と適正手続の保障が損なわれることがあってはならない。明け渡しについて簡易に債務名義を得る仕組みについて、一部委員からは「公正証書による明け渡しの強制執行認諾」が提唱されているが、認めるべきではない。

(5) 賃借人の義務違反による賃貸人からの契約解除について、現在の最高裁判例による「信頼関係破壊の法理」により、信頼関係を破壊するに足りる程度の不誠意があるか否かという視点から個別の事情に応じて、具体的にその適否が判断されてきたものであって、これを否定し又は骨抜きにするような立法措置がとられるべきではない。