朝鮮学校を高校無償化制度から不当に排除することに反対する会長声明
2010年03月11日
東京弁護士会 会長 山岸 憲司
1 本年2月25日に衆議院で審議入りしたいわゆる高校無償化法案(「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案」)に関し,政府部内で朝鮮学校を適用の対象外とするか否かについて検討がなされている。
2 高校無償化法案は,「高等学校における教育に係る経済的負担の軽減を図り,もって教育の機会均等に寄与する」ことを目的とし,また高等学校等就学支援金の受給者は私立高等学校等に在学する生徒とされていることとから,朝鮮学校に在学する生徒にも経済的負担を軽減し教育の機会均等が保障されるべき必要性があることに変わりはない。
また,朝鮮学校については,教育課程等の確認ができないとの考え方も報道されているが,朝鮮学校の教育課程に関する情報は,各種学校の認可を受ける際に必要に応じて提出され,現に,これまで多くの大学が朝鮮学校卒業生の大学入学資格を認めてきている。
3 そもそも,朝鮮学校に在籍する生徒には,日本国憲法第26条1項,同第14条,国際人権規約A規約(「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」)第13条,人種差別撤廃条約(「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約」)などにより,学習権が保障され,その保障に関しては平等原則に違反してはならないとされているのであり,朝鮮学校を高校無償化の対象から除外することは,朝鮮学校に在学する生徒の学習権を侵害し,平等原則に違反するおそれが大きい。現に,去る2月25日ジュネーブで開催された国連の人種差別撤廃委員会においても,高校無償化法案で朝鮮学校の除外が検討されていることについて,委員から人権保障の観点から懸念する意見が出されたことが報じられている。
4 当会は,朝鮮学校に在学する生徒の学習権を平等に保障する観点から,朝鮮学校を高校無償化の対象から不当に除外されることのないよう求める。