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共通番号法(マイナンバー法)制定に反対する会長声明

2012年07月12日

東京弁護士会 会長 斎藤 義房

本年2月14日、政府は、「共通番号法」(正式名称「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」、略称「マイナンバー法」)案を国会に提出し、延長された今国会会期内の成立を目指している。

本法案はいわゆる「共通番号制度」の創設を目指すものであり、もともと「共通番号」(納税者番号)を用いて国民の所得を正確に捕捉し、それに基づいて「公平な税制」や「社会保障の充実」(必要な人に対する必要な社会保障の給付)を目的とするとされていた。

しかし、たとえ番号制を導入しても「正確な所得の捕捉」が非現実的であることは、昨年6月30日に発表された「社会保障・税番号大綱」で政府自らが認めるところである。さらに加えて、本年6月15日に成立した「税と社会保障一体改革」に関する民自公三党修正合意によれば、税制に関しては、消費税増税を先行させ、所得税・相続税等の累進課税強化は今後の検討課題として先送りされ、社会保障の充実に関しても、その目的や理念の骨格自体が揺らいでいるといってよい。

このように「税と社会保障一体改革」という目的や理念が揺らぎ、具体的内容が混沌としている中で、その手段と位置づけられた「共通番号制度」の創設だけを先行させることは本末転倒であるし、全体で数千億円とも推計される構築費等も貴重な税金の無駄遣いになりかねない。

そもそも、この「共通番号制度」は、1つの番号を、広く行政と民間分野において、本人を特定する背番号(納税者番号、社会保障番号)として、事実上オープンに利用する制度であるから、この番号をマスターキーとして多くの分野の個人情報が芋づる式に名寄せ・データマッチング(統合)され得ることになり、個人のプライバシーが大きく侵害されかねない危険性をもたらす。また、一旦データベースから情報が漏洩した場合などには、誰もが「共通番号」をマスターキーとして、情報の名寄せ・統合ができるという危険性や、他人による「なりすまし」の危険性をもたらすのである。そして、このような危険性は、第三者機関の創設や厳罰化では防止できない。

以上のように、その目的や理念の面においても、プライバシー保障の面においても、今回の「共通番号制度」は問題が多すぎると言わざるを得ず、当会は、共通番号法(マイナンバー法)の制定に強く反対するものである。