東京弁護士会

過労死等防止基本法の成立を求める会長声明

2013年11月28日

東京弁護士会 会長 菊地 裕太郎

 現在、超党派の議員連盟及び各党において、過労死等防止基本法案の検討作業が続けられている。同法案の主な柱は、①過労自殺を含む過労死等はあってはならないことを基本認識とする旨を国が宣言すること、②過労死等を防止するために、国・自治体・事業主等の責務を明確にすること、③国が過労死等に関する調査・研究を行い、過労死等を防止するための総合的な対策を推進すること、の3点である。
 内閣府の統計によれば、2012年中の自殺について、原因・動機が勤務問題に関連していたケースは2472件に上っている。また、厚生労働省の発表によれば、2012年度の過労死などの脳・心臓疾患に関する事案の労災補償の請求件数は842件、支給決定件数は338件であり、また、精神障害に関する事案の労災補償の請求件数は1257件、支給決定件数は475件と、前年度に引き続き高水準で推移している。特に精神障害に関する事案の労災補償の支給決定件数は、前年度比150件増で過去最多となっている。これら統計に現れた数字だけからしても、昨今の労働者が置かれている切迫した状況が明らかである。
 日本国憲法第27条は、個人に勤労の権利を保障し、労働基準法1条は「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」ことを明記している。しかし、1990年代後半以降のわが国の労働現場においては、一方では景気の調整弁としての非正規雇用が増大し、他方では、ノルマ重視の正規雇用者による過酷な時間外労働、サービス残業が蔓延する事態となっている。ここ数年、国は積極的にワークライフバランスを唱導するが、本年には長時間労働を強制するなどの「ブラック企業」が流行語にさえなっている。本来、個人や家族の幸福追求の一手段であるはずの労働が、過労死・過労自殺という悲惨な結果をもたらしているこの現状を、これ以上放置することはできない。過労死等防止基本法の制定が緊急に求められる理由がここにある。
 過労死等防止基本法の制定を求める世論はますます高まり、遺族らが同法の制定を求めて集めた署名はすでに約52万件にも達している。また、本年5月17日には、国連の社会権規約委員会が、日本政府に対し、過労死防止対策の強化を求める勧告を行った。本年6月には、過労死等防止基本法の制定を求める超党派の議員連盟も発足し、現在までに120人を超える国会議員が参加している。
 過労死・過労自殺によって命を絶たれた労働者とその遺族の無念は計り知れないし、遺族にとっての精神的な衝撃、経済的な不安も大きい。今後も過労死・過労自殺が多発するような劣悪な労働環境が放置され、国民の生命・身体という最も守られるべき法益が危険にさらされ続けるのであれば、労働の価値そのものが毀損され、労働意欲も低下する。そのような状況が、労働者だけでなく、企業にとっても到底望ましいものでないことは明らかである。
 以上から、当会は、過労死・過労自殺を根絶することを目的とする過労死等防止基本法の速やかな成立を、強く求めるものである。

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