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特定秘密保護法案の衆議院での採決強行に対する会長声明

2013年11月28日

東京弁護士会 会長 菊地 裕太郎

 本年11月26日、特定秘密保護法案が衆議院で強行採決された。東京弁護士会は、この採決に強く抗議し、参議院での廃案を求めるものである。
 国民主権のもとでは、政府の持つ情報は、基本的に国民の財産であるから、可能な限り開示されるべきであり、国民は豊富で正確な情報にアクセスできて初めて国の在り方や政府の方針について正しい判断ができる。ところが、同法案は、これとは全く逆の立場に立ち、国民に対して多くの情報を隠蔽しようとするものである。
 同法案は、以上の通り国民主権原理に反するものであるだけでなく、憲法上の基本的人権を侵害し、恒久平和主義をないがしろにするものであり、到底容認できないことは、これまでの当会の会長声明や意見書で繰り返し明言してきたところである。しかし、衆議院の審議を経ても、こうした同法案のもつ問題点の根幹は、何ら是正されていない。
 むしろ、衆議院の審議の中では、①行政機関の長がその部門に都合の悪い情報を恣意的に特定秘密にすることの防止策は曖昧なままであり、特定秘密の対象に歯止めをかける方策がなされていないこと、②刑事事件の起訴状にすら秘密の内容が書かれず、被疑者・被告人が何の罪で裁かれようとしているのかさえ不明であるため、その防御権が奪われること、③「特定秘密」の秘匿のために、その取得・漏えいなどの実行行為そのものだけでなく、過失犯、共謀、独立教唆、煽動という広範な行為をも独立して処罰できるとされており、罪刑法定主義に反すること、④処罰の対象者が公務員だけでなく、広く一般国民にまで及ぶこと、⑤特定秘密指定期間の上限を60年とするなど、その適正さをおよそ検証できず、指定権者の責任も全く追及できないほどに長期の年数を定めていること、⑥国民の信託を受けた国会の国政調査権にまで大きな制限を加えているなど、知る権利の侵害が極めて重大であることなどの問題点が、改めて浮き彫りになった。ところが政府は、まず採決ありきでその後で修正すればいいなどと、同法案の欠陥を自らが自認しているにもかかわらず、実質審議を省いて強引に衆議院で採決したのである。
 実際、4党による修正案については提出されたばかりであり、ほとんど実質的な審議らしきものはまだなされていない。地方公聴会も1回しか開かれず、しかもその公聴会の意見のすべてが慎重意見ないし反対意見であったにもかかわらず、その翌日に採決をするなどということは、数にものいわせた暴挙としか言いようがない。
 当会は、憲法を擁護する立場から、このように重大な欠陥のある同法案を拙速に強行採決したことに強く抗議するとともに、民主主義の在り方に著しい変容を強いる同法案を成立させることに対して強く反対し、あくまで廃案とすることを求めるものである。