東京弁護士会

組織的犯罪対策三法案に関する会長声明

1998年07月29日

東京弁護士会 会長 二宮 忠

 政府は、本年3月13日、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制に関する法律案」、「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案」のいわゆる組織的犯罪対策三法案を通常国会に提出した。

 これらの三法案は、自民党、社民党、さきがけの三党が行った当時の与党協議会において大幅な修正が必要であることが確認されたにもかかわらず、原案のまま国会に提出されたという経緯がある。

 7月30日に臨時国会が召集されるが、流動的な政局の成り行きによっては、充分な審議を尽くすことなく組織的犯罪対策三法案が成立してしまうことが危惧される。

 組織的犯罪対策三法案は、そもそも現行の法律にどのような問題点があるのか、また急いで立法すべき緊急性・必要性があるのかに重大な疑問がある。さらにそれだけでなく、法案自体にも次のような重大な問題点の存在を指摘することができる。

第1に、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制に関する法律案」は、「団体」や「組織」の定義があいまいなために、合法的に活動している市民運動団体や労働組合などに適用されて、それらの団体の弾圧に濫用される危険性を有している。また、マネーロンダリング規制については、いわゆる麻薬特例法の立法時に、日弁連が麻薬特例法に限定する措置として是認したものであるが、この法律案ではさらに非常に広範囲にマネーロンダリング規制を拡大しようとしている。

 第2に、「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」は、証人尋問を制限する規定を新設しようとするものであるが、規定の仕方があいまいで、被告人・弁護人の防禦権に対する不当な制限となるおそれが強い。

 第3に、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案」は、いわゆる盗聴を合法化する規定を新設しようとするものである。盗聴が憲法で保障された通信の秘密やプライバシーという重要な権利を侵害するものであるにもかかわらず、対象とする犯罪は極めて広範であり、必ずしも組織的犯罪であることが要件とされていない。その上、将来の犯罪に対する盗聴やいわゆる別件盗聴等が認められるばかりか、盗聴期間も最大30日間の長期間が許容されており、事後通知や不服申立ても極めて限定的であるなど、憲法31条の適正手続き保障や憲法35条の令状主義の要請を充たすことは極めて困難な内容となっている。また、違法盗聴に対して、法案の罰則が電気通信事業法、有線電気通信法の1年以下の懲役の限度であることは公務員の違法行為に対する制裁として軽きに過ぎ、かつ違法収集された盗聴の証拠排除についても法案の規定は充分でない。

 以上の理由から、当会は、このような組織的犯罪対策三法案に反対することを表明する。

1998(平成10)年7月29日

東京弁護士会 
会長 二宮 忠

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