東京弁護士会

教科書無償措置法「改正」法成立を受けての会長声明

2014年04月15日

東京弁護士会 会長 髙中 正彦

 去る4月9日、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(教科書無償措置法)の改正法が参議院本会議で可決成立した。この改正法は、複数の市町村により教科書の採択地区を構成する場合に、当該採択地区内の市町村の教育委員会に、採択地区協議会の協議の結果に基づく教科書の採択を義務づけること等を内容とするものである。

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地方教育行政法)は、教科書の採択を教育委員会の権限としているが(同法23条6号)、その趣旨は、地方教育行政における政治的中立性や教育の自主性・自律性を確保し、憲法及び子どもの権利条約が保障する子どもの学習権、成長発達権を充足しようとする点にある。
 しかし、教科書無償措置法の改正法は、採択地区協議会の協議結果に基づく教科書の採択を義務づけることにより、市町村の教育委員会が有する教科書採択権限を実質的に奪うものであり、教育内容に対する政治的介入や国家管理を招き、ひいては子どもの学習権を侵害するおそれが大きい。採択地区協議会制度は、従来から存在した共同採択地区制度をより実効化しようとしたものであるが、そもそも、教科書無償措置法が採択地区制度を採用した目的は、「無償措置の円滑な実施」(同法1条)、すなわち教科書の無償措置手続の効率化にある。かかる目的を実現するために、採択地区内の市町村の教育委員会が有する教科書採択権限を失わせてまで、無償措置の円滑な実施を貫かねばならないという必要性・合理性は到底認められない。特に、今回の改正法の国会提出の契機が、沖縄県の竹富町教育委員会が、同町が所属する採択地区協議会で答申された教科書とは異なる、現政権が好ましくないと考えていると思われる教科書を採択したことにあったことを考えると、今回の改正により教育内容への政治的介入や国家管理を招来しかねないとの危惧を強く抱かざるを得ない。

 当会は、教育内容に対する政治的介入や国家管理を招くことのないよう、教科書無償措置法改正法の今後の運用を注視し、教育現場における子どもの学習権、成長発達権が保障されるよう支援していく決意である。

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