東京弁護士会

東京都議会におけるヤジについての会長声明

2014年07月28日

東京弁護士会 会長 髙中 正彦

  2014年6月18日、東京都議会の本会議で、塩村文夏議員が妊娠や出産に関する都の支援策について東京都に質問していた際に「自分が早く結婚したらいい」「産めないのか」などの複数のヤジが飛び、議場はそのヤジを制止するどころか笑いまで起きた。
  6月23日 になって、ヤジ発言を否定していた鈴木章浩議員がヤジ発言の一部を認め、塩村議員に謝罪した。鈴木議員は自民党会派を離脱したが、議員は辞職していない。都議会では、ヤジ発言者の特定と辞職を求める決議が提出されたが、議会の大多数により否決され閉会した。
  なお、本年4月の衆議院総務委員会では、自民党の大西英男衆議院議員が「早く結婚して産まないとダメだぞ」などのヤジを発したことが報道されている。
  これらのヤジ発言の背景には「女性は(仕事よりも)結婚して産んでこそ一人前」という価値観があるが、そもそも、結婚するかしないか子どもを産むか産まないかは、個人が自己決定すべき問題である。このような発言は、女性の自己決定権を侵害し、また、結婚していない女性や、子どもを産みたくても産めない不妊女性を揶揄、蔑視するものであり、女性差別発言に他ならない。そして、「女性は仕事よりも家庭」という偏見を助長するものである。こうした偏見が、職場や議会等意思決定機関への女性の進出を妨げる障害のひとつとなっていると言っても過言ではない。女性を含む都民の信任を得た議員で構成された議会において、女性のライフスタイルの自由を否定し、性別による差別の意味合いを含むヤジが発せられ、しかもそれを笑っていい発言として受け止められ何ら制止もされないことに重大な懸念を表する。
  政治家による女性差別発言は、例えば石原慎太郎東京都知事(当時)の「女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄」と述べたいわゆる「ババア発言」や、柳澤伯夫厚生労働大臣(当時)の「女性は子どもを産む機械」発言など、これまでも再三繰り返されてきた。こうした女性差別発言が政治家によって繰り返される背景にあるのは、もはや世界的にスタンダードである、女性の妊娠や出産を自己決定として尊重するリプロダクティブヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康とその権利)の視点の欠如である。そして、女性の妊娠や出産を、家や国家を存続ならしめるための責務であるとする、「女の役割は子を産むこと」という差別的発想である。このような発想は、家や国家のためには個人としての女性の自由は制約してもよいとするものであり、看過することはできない。女性差別発言をした議員は、差別・偏見を率先してなくすべき政治家としての資質の欠如を露呈したものであって、まさに都議会において成立した東京都男女平等参画基本条例第14条「何人も、あらゆる場において、性別による差別的取扱いをしてはならない。」との規定に違反するものである。
  当会は、東京都議会に対し、差別発言をした議員を調査特定したうえで厳正に処分し、徹底した再発防止措置を講ずることを求める。また、塩村議員の議員活動が女性差別発言で妨害された事態でもあるのに、発言を議長がこれを制止しなかったことについても議長に猛省を促すものである。東京都議会会議規則105条に「議員は、議会の秩序及び品位を重んじなければならない。」とあるが、差別的発言を禁止する規定はないことも、再検討すべきである。
  さらに、国会及び各地方議会、全政党・議員に対し、議場等公共の場での女性差別発言・行為が行われないよう強く求める。

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