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「少年法『改正』法案」について

2000年02月25日

東京弁護士会 会長 飯塚 孝

 衆議院法務委員会では、2月18日、法務大臣の所信表明が行なわれ、継続審議となっている少年法『改正』法案につき、事実認定の適正化を図ることを喫緊の課題として早期成立を期したい旨が表明された。
しかし、今回の『改正』案が、事実認定の適正化に資することはない。
当会は早くから、本『改正』案に対し、少年法の保護主義の理念を後退させるものとして強く反対してきた。
『改正』案のように、少年が自白を撤回して事実を争う事件において、捜査を指揮する立場の検察官が審判に関与し、少年の身体拘束期間を延長することは、捜査段階で受けた恐怖心や迎合の姿勢を再び少年によみがえらせ、事実を語る勇気を喪失させることとなる。
検察官抗告は、たとえ少年が「非行事実なし不処分決定」を得たとしても、いつになったら裁判から解放されるのかわからない状態に少年を追いやるものであり、少年に事実を争うことをためらわせるに違いない。
さる2月7日に出された「草加事件」最高裁判決に乗じて、法案の審議を進めようとする向きがあるが、同判決は、冤罪における少年等への捜査のあり方・自白偏重の問題性を指摘するものであって、本『改正』案の必要性を根拠づけるものではない。むしろ本『改正』案は、冤罪を増加させる危険をはらむものである。また、犯罪被害者の権利回復の手だてともならない。
事実認定の適正化は、少年審判での適正手続の保障、捜査および審判における弁護士の援助の実現によってこそ可能となるものである。
国会での審議が開始されようとしているこの時期に、当会はあらためてこの『改正』法案のもつ問題点を指摘して、関係各位に慎重な検討を求める。