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参議院選挙定数配分に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明

2014年12月04日

東京弁護士会 会長 髙中 正彦

   2014年11月26日、最高裁判所大法廷は、2013年7月21日に施行された参議院議員通常選挙(選挙区選出議員選挙)で選挙区間の投票価値の較差が最大4.77倍に達していたことについて、「平成24年改正法による改正後も前回の平成22年選挙当時と同様に違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった」と判示した。

   しかしながら、同判決は、結論としては、「(…著しい不平等状態にあった)ものではあるが,本件選挙までの間に更に本件定数配分規定の改正がされなかったことをもって国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。」として違憲であるとの断定を避けた。

   その上で、大法廷は、「…投票価値の平等が憲法上の要請であることや,…国政の運営における参議院の役割等に照らせば,より適切な民意の反映が可能となるよう,従来の改正のように単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず,国会において,都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど…現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって違憲の問題が生ずる前記の不平等状態が解消される必要があるというべきである。」として、選挙区の大幅な見直しを伴なう立法措置を求めるに止まっている。

   ところで、本判決には、6名の裁判官の補足意見と4名の裁判官の反対意見が付され、反対意見は、いずれも定数配分規定自体を違憲とすべきであるとしており、中でも鬼丸裁判官の反対意見は、「憲法はできる限り1対1に近い平等を基本的に保障しているというべきである。」としたうえで、(平成21年大法廷判決以来3年9カ月の期間が経過しており)「…もはや当面の手直しとしか評価されないような法改正が許容される状況にない」として、国会の是正策の不十分さを強く指摘しつつ、28年の通常選挙までに是正することは可能であるとしている。

   選挙権は、民主主義の根幹を構成する重要な権利であって、一票の実質的価値に明らかな差異が生じることを許容するならば、有権者の意思を公平かつ合理的に立法府に反映させるための平等選挙制度の機能は著しく阻害されることになる。

   当会は、投票価値の平等の保障の重要性及び、多くの裁判官が補足意見や反対意見で根本的な是正を求めていることに鑑み、国会に対し、直ちに、同判決が指摘する「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態」を解消するための立法作業に着手して、1票の価値の較差をできるかぎり1倍に近づけるよう強く求めるものである。



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