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秘密保護法の廃止を求める会長声明

2014年12月17日

東京弁護士会 会長 髙中 正彦

   12月10日、特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)が施行された。当会は、意見書や会長声明などで秘密保護法が憲法の大原則である国民主権、基本的人権尊重主義、平和主義を侵害する違憲の法律であることを、その前身である秘密保全法案の段階から繰り返し指摘し、その廃止を求めてきた。
   行政情報は、国民の共有財産であり、国民の知る権利及び取材・報道の自由等に基づき広く国民に公開されなければならない。秘密保護法は、防衛、外交、特定有害活動防止、テロ活動防止の4分野にわたる行政情報について、行政機関の長が特定秘密に指定できると定めているが、これらの行政情報も国民の共有財産であることの例外ではない。
   ところが、この指定対象情報は、広範かつ抽象的であって曖昧なものであり、行政機関の長(政府)の恣意的な指定を許すものとなっている。その歯止めには行政から独立した第三者機関によるチェックが不可欠であるが、そのような第三者機関は存在しない。政府のいう「独立公文書管理監」や「保全監視委員会」等は、いずれも行政内部の組織であって、およそ独立した第三者機関とはいえない。また、国会に設置された「情報監視審査会」も、審査対象の特定秘密を国会に提出させる強制力がなく第三者機関足りえない。
   他方、特定秘密の指定期間は最大で60年となっており、指定期間無制限の特定秘密も存在する。加えて、特定秘密取扱者の秘密漏示は、最高懲役10年であり、過失、未遂、独立教唆、共謀、扇動なども処罰の対象とされ、市民や報道関係者、国会議員や弁護士等々国民による特定秘密への接近が「特定取得行為」とされれば、最高懲役5年に処せられることになる。
   以上のように、秘密保護法は、重罰をもって基本的人権である国民の知る権利、取材・報道の自由等を侵害し、国民の共有財産である行政情報を政府が独占・隠ぺいするものであり、国民主権・民主主義を根幹から揺るがすものである。
   さらに、特定秘密取扱者の適正評価制度により広範な個人情報の調査・収集が行われるが、これはそのプライバシー権を侵害するものである。加えて職場の同僚、親族や友人等も調査の対象とされている。また、特定有害活動防止及びテロ活動防止の名のもとに、国民のさまざまな市民運動や政治活動等に対する警備公安警察の情報収集活動が正当化され、その結果、国民のプライバシー権は侵害され、国民に関する広範な情報が警備公安警察そして政府に蓄積・独占されていくのは必至である。
   秘密保護法は、2007年8月に締結されたアメリカと日本のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)に由来するものであり、本来、日米の防衛協力の強化・一体化のための軍事情報の共有とその保全を目的とするものであった。秘密保護法の最高刑が懲役10年とされているのもMDA秘密保護法や日米刑事特別法に合わせたもので、秘密保護法は軍事立法の性格を色濃く持っている。
   秘密保護法とともに成立した国家安全保障会議設置法、集団的自衛権行使容認の閣議決定、武器輸出三原則の見直し等の近時の政府の動きは、秘密保護法による政府の防衛・外交に関する情報の独占と隠蔽、そして広範な国民の情報の収集と蓄積と相まって、憲法の平和主義を蔑ろにするものといわざるをえない。
   以上のとおり、秘密保護法は、憲法の大原則である基本的人権、国民主権、平和主義の理念に反する法律であることに鑑み、当会は、その施行を機に再度その廃止を求めるとともに、今後もその廃止に向けた活動を継続していく決意である。


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