東京弁護士会

消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する会長声明

2015年12月15日

東京弁護士会 会長 伊藤 茂昭

 地方創生が重要政策として位置づけられ、政府は、「まち・ひと・しごと創生本部」を内閣に設置しているが、その中の「政府関係機関移転に関する有識者会議」(以下「有識者会議」という。)において、政府関係機関の地方移転の検討が行われている。そして、現在、徳島県からの提案を受けて、消費者庁および国民生活センターの同県への移転が具体的に審議されている。
しかし、消費者庁および国民生活センターが果たす機能からして、両機関の地方移転について、当会はこれに強く反対する。
 政府関係機関移転の取組は、「東京一極集中を是正するため、地方の自主的な創意工夫を前提に、それぞれの地域資源や産業事情等を踏まえ、地方における『しごと』と『ひと』の好循環を促進することを目的とする」ものであるが、有識者会議は移転の提案として受け付けないものとして、 官邸と一体となり緊急対応を行う等の政府の危機管理業務を担う機関や中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関に係る提案、移転した場合に機能の維持が極めて困難となる提案を挙げている。このような提案による移転は、地方創生を促すどころか、その機関本来の機能を失わせてしまい、国全体としての大きな損失となるからである。そして、消費者庁および国民生活センターの地方移転は、まさにそのような受け入れられない提案の典型である。
 消費者庁は、2007(平成19)年に発覚した食品偽装問題や2008(平成20)年1月に発覚した中国産冷凍餃子への毒物混入事件など重大な消費者問題の発生をきっかけに、消費者問題への対応強化の必要性が認識され、同年6月27日の閣議決定「消費者行政推進基本計画~消費者・生活者の視点に立つ行政への転換~」を経て、2009(平成21)年9月に発足した。同基本計画は、従来の消費者行政が産業振興から派生した縦割りであったことを問題視し、消費者行政を一元化する新組織の創設を掲げ、新組織が消費者・生活者が主役となる社会への転換の起点となり、消費者行政の司令塔的役割を果たすべきことを宣言した。
 この基本計画を受けて発足した新組織たる消費者庁は、まさに消費者行政の一元化を遂行する任務を負うこととなった。具体的には、消費者問題は国民生活のありとあらゆる場面に存在し、各問題に関わる多数の省庁と密接な連携を図って業務を遂行することが必要である。また、消費者行政の総合調整権限として閣議決定たる消費者基本計画を実行するため、司令塔的立場から官邸、関係省庁や国会との直接協議を行い、消費者関連法の立法や改正についても各省庁との調整・協議が必要である。更に、消費者安全に関する重大事故発生という緊急時には官邸と一体となった緊急対応が課せられ、実際、冷凍食品の農薬混入事件で迅速な対応がなされている。
 このように消費者庁は、その果たすべき消費者行政一元化という目的からして、そもそも各省庁から離れた地方への移転ということになれば日常業務が機能不全に陥り、日本の消費者行政が大きく後退し、国民の権利、生活の安全が脅かされることはもちろん、緊急事態においては消費者の生命身体に危険を及ぼすような事態を招きかねないことが明らかである。
 また、国民生活センターは、消費者基本法第25条に定められた消費者行政の中核的実施機関であり、消費者庁と連携して諸問題を検討して関連省庁に意見を述べたり、地方消費者行政を支援し、消費者・事業者・地方自治体・各省庁に情報提供を行う機関であって、同センターもまた十分な機能を果たすために各省庁に近接する位置で密接に連携しなければ立ち行かないのである。
 以上からすれば、消費者庁および国民生活センターともに上記有識者会議が示す移転の提案を受け付けない機関に該当することは明らかであり、消費者庁移転が認められるということはあってはならない。

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