東京弁護士会

死刑執行に抗議する会長声明

2017年07月25日

東京弁護士会 会長 渕上 玲子

1 2017年7月13日、法務省は、大阪拘置所及び広島拘置所で各1名、合計2名の死刑を執行したと発表した。金田勝年法相の下での執行は、昨年11月以来約8ヶ月ぶり、2回目である。また、2012年12月の安倍内閣発足後では11件目、合計19人にのぼる。特に大阪拘置所で執行された死刑確定者は再審請求中であり、その最中の死刑執行は1999年12月以来であり、異例である。
2 近時、日本の刑法犯の認知件数が大きく減少する中、2016年の統計では殺人の認知件数も933件と1000件を割り込み、顕著に減少している。また、欧米の主要各国の犯罪動向と比較しても、日本の殺人事件の人口当たりの減少幅は最も大きいと言われている。
 こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、2014年7月に日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮することを勧告している。また国連総会において2016年12月に全ての死刑存置国に対し、「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議がされている。
 日本弁護士連合会では、昨年10月7日に福井県で開催された第59回人権擁護大会において、「日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであること。死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること」等を内容とする宣言案を採択し、死刑廃止に向けて大きく舵を切った。また、成人矯正、更生保護制度自体の見直しの必要性等の議論のほか、刑罰制度のあり方に関する議論の動向を注視すべき状況となっている。
3 死刑は、人間の尊い生命を奪う不可逆的な刑罰であり、誤判の場合には取り返しがつかない、という問題点を内包していることは広く知られた事実である。現にわが国では、死刑を宣告されながら、後に無罪であることが判明した著名な4つの死刑再審事件が存在した。
 さらに、近年に至っても2014年3月、静岡地方裁判所は袴田巖氏の第二次再審請求に対して再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をしており、現在、東京高等裁判所において即時抗告審が開かれている。こうした死刑再審事件は、刑事裁判における冤罪の危険性と死刑執行による取り返しのつかない人権侵害の恐ろしさを如実に表すものである。
 わが国では、死刑存置論も根強く存在する一方、死刑に代わる代替刑制度が採用される可能性を考慮すると、徐々に死刑廃止に向けた国民の理解が進むものと期待される。
 今回の死刑執行は、再審請求中の件が含まれ、誤判の危険性が存在するほか、法務大臣に対し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くすまで死刑執行の停止を求めてきた当会の方針に真っ向から反するものであると言わざるを得ない。
4 東京弁護士会は、これらの観点から、今回の死刑執行を強く非難するものである。

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