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死刑執行に抗議する会長声明

2017年12月28日

東京弁護士会 会長 渕上 玲子

1 2017年12月19日、上川陽子法務大臣は、東京拘置所で2名の死刑を執行したことを発表した。
このうち1名の死刑確定者は犯行事件当時19歳であり、犯行当時少年であった死刑確定者の執行は1997年8月に執行された永山則夫元死刑囚以来となる。
また、この2名の死刑確定者は再審請求中であり、再審請求裁判所の判断を待たずに死刑が執行された。

2 日弁連は2016年10月7日、福井市において人権擁護大会を行い、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言案」を採択し、刑罰制度の改革、受刑者の再犯防止・社会復帰のための法制度の改正と共に、2020年までに死刑制度の廃止を目指す旨を宣言し、死刑廃止に向けて大きく舵を切った。
また、2017年度版犯罪白書に依ると、「平成8年(1996年)以来、毎年戦後最多を更新した刑法犯の認知件数が14年(2002年)をピークに減少に転じ、28年(2016年)には戦後初めて100万件を下回り、ピーク時の約3分の1まで減少するなど、我が国の犯罪情勢は全体として大きく改善している」とされる。
更に、国際連合薬物・犯罪事務所(UNODC)の統計では、2014年における人口10万人当たりの殺人事件の発生率は、米国4.4、英国0.3、フランス1.2、ドイツ0.9であるのに対して、我が国は0.3とされている。
このように我が国の殺人事件の発生率は極めて低く、2016年度の第一審における死刑判決も3件であり、死刑という刑罰の必要性及び相当性はその前提を失いつつある。

3 死刑は、人間の尊い生命を奪う不可逆的な刑罰であり、誤判の場合には取り返しがつかない、という問題点を内包していることは広く知られた事実である。
現に日本では、死刑を宣告されながら、後に無罪とされた著名な死刑再審4事件が過去に存在した外、近年に至っても2014年3月、静岡地方裁判所が袴田巖氏の第二次再審請求事件について再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をしている。
同事件は、現在、東京高等裁判所において即時抗告審が開かれているが、もし死刑が執行されていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた。
こうした事件は、刑事裁判における冤罪の危険性と死刑執行による取り返しのつかない人権侵害の恐ろしさを如実に示すものである。
一方で死刑存置論も根強く存在するが、死刑に代わる刑罰の採用など、多面的な観点から徐々に死刑廃止に向けた国民の理解も進むものと期待される。

4 今回の死刑執行のうち、元少年に対する執行は、「罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、死刑をもって処断すべきときは無期刑を科する」と定めた少年法第51条を尊重し、行われるべきではなかった。
また、再審請求中の確定者に対する死刑執行は、過去の再審事件に照らしても、相当性に疑問がある。
東京弁護士会は、この度の死刑執行については、現在の日本の状況に逆行するものであると考え、強く非難するものである。

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