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消費者契約法の一部を改正する法律案についての会長声明

2018年03月13日

東京弁護士会 会長 渕上 玲子

 東京弁護士会では、2018年(平成30年)2月21日付で、「消費者契約法の改正についての意見書」を提出したところ、政府は、2018年(平成30年)3月2日、消費者契約法の一部を改正する法律案(以下、「本改正案」という。)を閣議決定した。しかしながら本改正案は、次のとおり修正が行われるべきである。

1 「社会生活上の経験が乏しいことから」との要件は削除すべきである
 本改正案においては、契約締結過程に関する規律として、①消費者の不安をあおる告知、及び、②恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用による勧誘を困惑類型として追加し、取消権を導入することとされている。しかし、いずれの場合にも、「社会生活上の経験が乏しいことから」という要件が付加されているため、保護の対象が若年者層の消費者に限定されかねない。また、2017年(平成29年)8月の内閣府消費者委員会答申からも後退している。
 近年における高齢社会の進行、高度情報化社会の進展等により社会が変化し、知識・経験・理解力・判断能力等が乏しい脆弱な消費者は、契約内容を理解することができず、契約をするかどうかの合理的判断をすることが困難になっている。そして、脆弱な消費者の中には、若年者のみならず高齢者や障がい者等も含まれ、現実にこのような消費者の消費者被害数は高水準で推移している。
 したがって、若年者以外の高齢者や障がい者等の脆弱な消費者に対する対策も急務であることはいうまでもない。よって、本改正法案においては、「社会生活上の経験が乏しいことから」との要件を除外し、脆弱な消費者が幅広く保護を受けられるようにすべきである。

2 つけ込み型不当勧誘行為における取消権を導入すべきである
 また、上記のとおり、脆弱な消費者は、知識・経験・理解力・判断能力等が乏しいゆえに合理的な判断をすることが困難であるところ、そのような事情を利用して契約を締結させるつけ込み型の勧誘行為においても、消費者の取消権を導入すべきである。

 以上のとおり、修正を求め会長声明を発するものである。

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