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自衛隊の護衛艦や対潜哨戒機を中東地域に派遣することに反対する会長声明

2019年12月27日

東京弁護士会 会長 篠塚 力

政府は、本日、自衛隊の護衛艦1隻及び海賊対策のためにソマリア沖に派遣中のP3C対潜哨戒機を、中東アデン湾等へ派遣することを閣議決定した。
2018年5月に米国が「イラン核合意」を離脱した後、ホルムズ海峡を通過するタンカーへの攻撃等が発生していることから、米国が日本を含む同盟国に対して有志連合方式による艦隊派遣を求めてきた。これに対し、日本はイランとの伝統的な友好関係に配慮し、米国の有志連合には参加せず、独自に護衛艦等を派遣するに至ったとされる。
米国が主導する有志連合は、武力攻撃を行うことが想定されている。しかし、我が国は徹底した平和主義をとり、日本国憲法9条は武力の行使を禁じている。したがって、自衛隊が、自国が攻撃されているわけでもないのに、他国の海域や公海上で武力行使をすることは許されない。
この点、政府は、今般の自衛隊の派遣は、その目的を情報収集活動とし、防衛省設置法第4条第1項第18号の「調査及び研究」を根拠とする活動だと説明している。
しかし、憲法9条の下で、自衛隊の職務権限は極めて限定されており、自衛隊法に根拠のない活動は許されない。自衛隊法には自衛隊の任務として「調査及び研究」は含まれていない。したがって、今般の自衛隊派遣は法律に根拠のないものであって、近代国家の大原則である法治主義に明確に反する。
そして、我が国が活動する海域と有志連合が活動する海域は極めて近接していることから、有志連合と自衛隊の相互の情報が共有され、共有された情報が有志連合の武力行使を助けることになるであろう。これは、自衛隊が有志連合と一体となって、憲法が禁止する「武力行使」をするに等しい。
さらに、中東海域で不測の事態が生じた場合には政府は海上警備行動(自衛隊法第82条)を発令して対応するとしている。その結果、自衛隊は、海上警備行動として「公務執行に対する抵抗の抑止」のための武器使用(自衛隊法第93条、警職法第7条)や強制的な船舶検査(自衛隊法第93条、海上保安庁法第16条、同法第17条第1項、同法第18条)を行う可能性も出てくる。その際に、自衛官が国又は国に準ずる組織に対して武器使用を行った場合には日本国憲法9条が禁じる「武力の行使」に該当するおそれがある。
よって、当会は、今般の自衛隊の中東海域への派遣は、恒久平和主義や立憲主義、法治主義に反することから、反対するものである。

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