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改めて女性差別の解消と男女共同参画の意義を考える会長談話

2021年02月22日

東京弁護士会 会長 冨田 秀実

2015年に国連で採択され、日本も賛同した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の持続可能な開発目標(SDGs)においては、2030年までに、あらゆる場所における全ての女性に対するあらゆる形態の差別を撤廃すること、政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保すること等が掲げられています。
意思決定の過程で可能な限り男女を均等にすること(男女共同参画)は、意思決定に関わる者の多様性を確保するための大前提であり、そうでない限りそれ以上のダイバーシティ(多様性)、インクルージョン(排除しないこと)の達成は考えられません。
しかし、日本の男女共同参画の推進状況は、特に政治分野や経済分野で非常に遅れており、世界経済フォーラムが2019年に公表した「ジェンダー・ギャップ指数(GGGI)」では、153か国中121位という低順位でした。日本の男女共同参画の取り組みが遅れている要因の一つは、社会全体において固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が存在していること等が指摘されています。
しかるに、今般、公益社団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の会長を辞任した森喜朗氏は、スポーツ団体ガバナンスコードの女性理事目標割合(40%)について消極的とも取れる発言を行うとともに、女性の会議参加や会議での発言に関してネガティブな評価を下したかのような発言を行ったものであり、その主観的意図はともかく、その発言内容は客観的には差別発言と言わざるを得ません。
さらに、森氏の発言は、本来個人単位で評価されるべき組織関係者の職務遂行能力をその性別に基づき一律に論じるものであって、個人がその性別にかかわりなく活躍できる社会を目指すジェンダー平等の理念にも真っ向から反する不当なものです。
言うまでもなく、公益社団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、スポーツの機会の享受に際して、性別を含むいかなる理由による差別をも許さないオリンピック憲章(オリンピズムの根本原則第4項及び第6項)に基づき同競技大会を運営する組織体として、自らその理念を体現すべきであり、国内外からそれを強く期待されています。
今回、森氏の後任の会長は橋本聖子参議院議員に決定しましたが、会長の交替に留まることなく、性別による差別発言が生まれる土壌そのものを一掃し、各人の多方面に渡る知識、経験、能力が性別とは一切無関係にいかんなく発揮される組織体へと同組織委員会を生まれ変わらせることこそが、組織のガバナンス改革として求められていると言うべきです。
男女共同参画が、「建前」として求められているのではなく、よりよい社会の基礎であること、様々な立場の構成者に配慮が行き届く社会の実現のために必要であることについて、今回の森氏の発言を巡る騒動を機に、自らを含め、改めて認識を新たにすべきと考えます。
当会は、2011年から、5年ごとに、男女共同参画基本計画を策定し、同計画に掲げた重点目標及び個別目標の実現に向けて、具体的に定められた行動計画を会の規範として、徐々にではありますが、目標を達成しながら、男女共同参画実現への取組みを進めてきています。
今後も、引き続き弁護士会の男女共同参画を推進していくとともに、社会におけるジェンダー平等と男女共同参画の実現のため、これからも積極的な提言及び不平等の是正に取り組むなど、不断の努力を続けていく決意です。

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