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東京出入国在留管理局における弁護士面会停止の撤回と、被収容者の解放を求める会長声明

2021年03月23日

東京弁護士会 会長 冨田 秀実

2021年3月10日、東京出入国在留管理局(以下、「東京入管」という。)から関東弁護士会連合会に対し、新型コロナウイルス感染拡大防止を理由に、東京入管における被収容者と弁護士との面会について制限する旨の連絡がなされた。具体的には、弁護士との面会を「訴訟案件に係る緊急の要件がある場合に限定する」とした上で、弁護士が東京入管7階の面会室において、別の収容区域内にいる被収容者との間で電話をすることによって「電話による面会」を実施するというものであった。
身体を拘束されている者は、弁護士と常に面会し、法的助言を受ける権利を有する。2015年12月に国連総会において満場一致で採択された国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)第61条第1項は、「被拘禁者は、適用される国内法に従い、あらゆる法律問題について遅滞や妨害又は検閲なしに、秘密を完全に保たれた状態で、自ら選んだ法的助言者あるいは法律扶助提供者による訪問を受け、連絡を取り、相談するための充分な機会、時間及び便益を提供されるものとする」と定めている。国内法においても、被収容者処遇規則第33条第1項は、被収容者に対して弁護士から面会の申出があったときはこれを許可するものとし、例外を認めていない。
今回の措置は、弁護士の面会目的を限定する点はもちろん、弁護士を東京入管まで赴かせた上に「電話による面会」という、面会とは異質のあくまでも電話でしかない連絡手段のみを許し、弁護士との面会を全面的に停止する点で明らかに違法であるため、断固として撤回を求める。被収容者は、弁護士との面会ができないことにより十分な法的サポートを受けることができなくなるばかりでなく、家族や友人との面会が禁止される中で、収容施設の外とのつながりが一切絶たれることになり、その精神的な打撃は「電話による面会」では到底補うことはできない。
そもそも当会においては、入管施設内での新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2020年5月28日付け及び同年8月18日付けの会長声明により、全件収容主義の是正と、仮放免の一層の促進を求めてきた。それにもかかわらず、東京入管においては先月の時点で約130名を超える者を漫然と収容し続けた結果、被収容者全体の約4割、男性被収容者については約5割の被収容者が新型コロナウイルスに感染するという深刻な集団感染が発生してしまった。今回の措置は、東京入管における新型コロナウイルス対策の不備による不利益を、未だ入管施設内に残された被収容者と弁護士に転嫁しようというものであり、断じて許されない。
東京入管が弁護士面会の全面停止という違法な措置に踏み切ったことは、新型コロナウイルス対策においても入管収容が既に破綻しており、収容の適法性を維持できないことを示している。東京入管においては、直ちに弁護士面会の制限措置を撤回するとともに、新型コロナウイルス感染の危険と違法な収容状態を回避するべく、入管施設内に残された被収容者を速やかに解放するよう求める。

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