アクセス
JP EN

核兵器禁止条約の発効にあたり、改めて核兵器の廃絶を求める会長声明

2021年03月24日

東京弁護士会 会長 冨田 秀実

1 2017(平成29)年7月7日に国連会議で採択された「核兵器の禁止に関する条約」(以下「核兵器禁止条約」という。)は、2020(令和2)年10月24日、発効に必要な50番目の国としてホンジュラス共和国が批准し、90日経過後の本年1月22日に、ついに発効した。
2 核兵器の使用は、その強大な熱線・放射線と衝撃波によって、一定範囲の人間を兵士と民間人・老若男女の区別なく殺傷し、また、生存者には放射線による影響を長期間及ぼし続け、さらに大量の放射性物質を放出することで地球環境をも汚染し、人類の生存そのものを脅かす究極の非人道的行為であることは言うまでもない。その実験も、このような非人道的兵器を開発する行為であり、放射性物質の環境放出を避けられず、甚大な被害を生じさせる恐れもある。
「核兵器禁止条約」は、このように非人道的にしか用いることができない核兵器その他の核爆発発生装置について、その使用または威嚇のみならず、開発、実験、生産、製造、取得、保有又は貯蔵、核兵器又はその管理の直接的・間接的な移譲、さらには同条約が禁止する活動に対する援助、奨励又は勧誘、あるいは同条約が禁止する活動に対する援助の求め又は受入れ、そして自国の領域又は管轄下にある場所への核兵器の配備、設置又は展開の容認等を広く禁止して違法化している(同条約第1条⒜号~⒢号)。
3 しかしながら、核保有国はこの条約に署名しておらず、今後も同条約に加盟する見込みも乏しいとされている。
わが国も、この条約の目指す核兵器廃絶という目標を共有するとしつつも、既存の核保有国の核抑止力による均衡の保持を支持し、特に日米同盟の下で米国の抑止力を維持することが重要であるとの認識から、この条約には加盟しない意向を示している。
4 わが国は、唯一の戦争被爆国であり、「核兵器の無い世界」に対する国民の希求は特に大きい。しかも日本国憲法は、前文において「全世界の国民が、ひとしく...平和のうちに生存する権利を有することを確認する」(平和的生存権)と定めている。
衆議院では2009(平成21)年6月16日に、参議院では同月17日に、わが国は、唯一の被爆国として、世界の核兵器廃絶に向けて先頭に立って行動する責務があり、核廃絶・核軍縮・核不拡散に向けた努力を一層強化すべきであるとする「核廃絶に向けた取り組みの強化を求める決議」がなされた。
日弁連は、2010(平成22)年10月8日に盛岡市で開催した第51回人権擁護大会において、「今こそ核兵器の廃絶を求める宣言」をしている。
当会も、2020(令和2)年8月6日の「被爆75年目の夏を迎えるにあたっての会長談話」において、唯一の戦争被爆国であるわが国がこの条約に加盟する必要性を強く指摘したうえで、核の傘に頼らない平和を外交的努力によって実現すべきであることを訴えている。
5 当会は、核兵器禁止条約の発効にあたり、改めてわが国が核兵器禁止条約に加盟する必要性を指摘するとともに、核兵器の無い平和な世界を実現するため、世界の市民とともに努力することを誓うものである。

印刷用PDFはこちら(PDF:142KB)