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最低賃金額の引き上げと中小企業の支援策を求める会長声明

2021年06月30日

東京弁護士会 会長 矢吹 公敏

現在、東京都の最低賃金額は1013円である。この金額は新型コロナウイルスの世界的大流行があった昨年も据え置かれ、2019年から2年間続いている。この賃金で、1日8時間、1ヶ月21日稼動すると、月収は17万0184円、年収は約204万円となる。
総務省統計局2020年の家計調査(年調査)によれば、大都市・単身世帯の消費支出(月額)は16万0912円であり、この消費支出の実態に鑑みれば、単身世帯はもとより、1人親家庭等の被扶養者を抱える世帯においては、経済的な余裕は認められず、就労等に不安が生じれば、直ちに生活困窮に陥りかねない。
他方、中央最低賃金審議会が設置した「目安制度の在り方に関する全員協議会」が2021年5月26日に提出した資料によると、イギリス、フランス、ドイツ、韓国では、コロナ禍においても、労働者の生活を支えるために最低賃金の引き上げが行われている。
我が国においても、コロナ禍による経済活動の停滞状況がますます深刻になっているときだからこそ、正規・非正規の区別なく、労働者が安定した収入を得て、健康で文化的で、幸福な生活を実現できるよう、同様の施策がなされるべきである。具体的には、7月の中央最低賃金審議会の答申を受けての地方最低賃金審議会の決定において、最低賃金額を大幅に引き上げるべきである。
なお、最低賃金の引き上げが経営体力に乏しい中小企業の存続に悪影響を及ぼすおそれもある。コロナ禍により失業率や廃業率が高くなっていると指摘される飲食業や宿泊業は非正規労働者の割合が高く、かかる悪影響により雇用が失われるおそれがある。このような事態を避けるため、例えば経営の厳しい中小企業に対する社会保険料の事業者負担の減免などを検討し、同時に、企業の生産性向上のための実効的な諸施策も講じるべきである。

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