76回目のヒロシマ・ナガサキ平和祈念の日を迎えるにあたっての会長談話
2021年08月06日
東京弁護士会 会長 矢吹 公敏
76回目のヒロシマ・ナガサキ平和祈念の日を迎えるにあたって、当会は、ここに改めて犠牲者を悼み、核兵器廃絶に向けた取組を続けていくことを誓います。
戦争は、人命だけでなくあらゆる価値を破壊するものであり、その被害は物理的なものに限らず、人の心身に深い傷跡を残します。とりわけ核兵器は、その甚大で非人道的な破壊力を有する点において、平和の対極にあるものと言うべきです。
1945年8月6日に広島に、8月9日に長崎に原爆を投下された我が国は、戦争における唯一の被爆国として憲法に平和の尊さをうたい、核兵器廃絶を目指してきました。
2017年7月に国連で採択された核兵器禁止条約は、核兵器の開発、実験、製造、備蓄、移譲、使用、威嚇としての使用の全てを禁じており、単なる宣言にとどまらず、締約国がその義務を負うものである点で、徹底して核兵器の廃絶を目指すものです。そして、2020年10月に50か国目のホンジュラス共和国の批准により条約発効要件を充たし、その後90日が経過した本年1月、ついにこの条約が発効しました。
しかしながらこの条約に、我が国は未だ署名していません。この背景にある核の傘・核抑止力論が、果たして核兵器の削減や戦争抑止に続く道であるのか、核兵器という圧倒的な力による支配体制を肯定するものでしかないのか、我々は常に考えなければならないでしょう。
当会は、憲法前文の平和的生存権、憲法9条の戦争放棄、戦力不保持の理念に基づいて、平和を愛し核兵器廃絶を目指す世界の市民と連帯するとともに、核兵器禁止条約への署名に向けた真摯な検討を行い、我が国が戦争における唯一の被爆国として、核廃絶へのリーダーシップを発揮することを望むものです。
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