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8月15日を迎えるにあたっての会長談話

2021年08月15日

東京弁護士会 会長 矢吹 公敏

今年も8月15日が巡ってきました。第二次世界大戦において我が国が連合国に対する全面降伏を内容とするポツダム宣言を受諾し、これを宣明した「玉音放送」が流されたこの日は、「終戦の日」として国民の中に長く定着しています。
私たちは、1945年以降の「戦後」を新たな「戦前」としないよう、日本国憲法の平和主義の理念をいつまでも継続し、次の世代へ引き渡さなければなりません。
私たち弁護士は、「基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし」ており(弁護士法第1条)、基本的人権の擁護と社会正義の実現とを両立させなければならないものと考えています。平和に保たれている社会は、人間の安全保障が重視され、基本的人権の保障が充実し、国民がそれぞれの個性を生かして幸福を追求することが可能となる社会です。
そのため、弁護士会は、基本的人権の制約や侵害のおそれを敏感に感じ取って社会に警鐘を鳴らす人権と平和の護り人の役割を担ってきました。
最近でも、新型コロナ禍を理由として「緊急事態条項」を創設する憲法改正の必要が唱えられ始めています。しかし、「緊急事態条項」は、戦争や大災害といった非常事態において、内閣に権限を集中させて人権制限を行うことを可能とするものです。国会による民主的統制や裁判所による司法的統制を受けないことによる権力の濫用の危険が非常に高まるものであり、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の「緊急事態宣言」とは性質が全く異なっています。このように、人権侵害のおそれが大きく、平和主義を損なうおそれがある緊急事態条項の制定に東京弁護士会は強く反対しています。
当会は、今後も日本国憲法の理念を広く市民に浸透させるために「不断の努力」(憲法第12条)を尽くし、すべての人が「ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」(憲法前文)を享受できる社会の実現を目指してまいります。

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