東京弁護士会

消費者保護基本法改正についての会長声明

2004年02月24日

東京弁護士会 会長 田中 敏夫

1 はじめに
自由民主党は本年2月13日に「消費者保護基本法の一部を改正する法律案要綱」(以下、「法律案要綱」という)を公表し、同法案は議員立法として、今期通常国会に上程される見通しであり、同法の改正は差し迫った状況にある。法律案要綱の内容は一定の前進とは評価しうるものではあるが、喫緊の情勢を踏まえ、とりわけ要望したい点に関して、以下のとおり声明を公にすることとした。
なお、当会では、昨年12月に、同法改正のあり方の関する意見書を関係各所に提出済みである。

2 消費者の「権利」の明確化
法律案要綱では、(1)安全が確保され、(2)合理的な選択の機会が確保され、(3)情報・教育機会の提供され、(4)意見が消費者政策に反映され、(5)被害から適切かつ迅速に救済される、5つの消費者の権利を前提としているものと一応考えられるものの、消費者政策の推進に当たり考慮すべき対象として規定する形になっている。しかし消費者の権利の重要性に鑑みれば、それらの権利が明確に宣明されるべきであり、そのためには消費者の権利をそれ自体独立して規定すべきである。また個々の消費者は事業者に比して微力であり、それらの権利を確保するためには消費者団体による活動が不可欠である。消費者の権利として上記以外に「消費者団体を組織して活動する権利」を併せて定めるべきである。

3 消費者の「責務」について
従来の「消費者の役割」とされていた規定を、「消費者の責務」とする規定に改正することには反対である。法律案要綱では「消費者の責務」として「消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、必要な情報を収集し、及び意見を表明する等自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならないものとする」としている。
しかし本法は本来消費者の権利が侵害されることがないように立法されるものであり、そのために責務を負うのは事業者であり、行政であり、消費者が積極的に果たさなければならない責務は基本的に存在しない。またこのような責務規定を置くことは、消費者と事業者間の情報・交渉力の格差が著しい現状で、消費者に情報、知識を収集しなかった、あるいは意見を表明しなかったことを理由に責任を負わしめる過酷な結果を招来するおそれがある。よって「消費者の責務」を規定する改正には反対である。

4 苦情処理と紛争解決のための制度整備について
消費者被害が増加の一途を辿っている現状において、その救済の中核を担う都道府県消費生活センターと国民生活センターの相談窓口が、その必要性とは裏腹に、予算削減の名の下に縮小・廃止されるという事態が進んでいることはきわめて憂慮される。その観点から、法律案要綱において国民生活センターに関しては調整機能、消費者教育に関する機能のみを定め相談業務からの撤退を認容する方向性が示され、また都道府県の消費生活センターも「高度の専門性又は広域の見地の配慮」という名目で第一次的な相談現場からの撤退が指向されていることには反対であり、むしろ相談業務の充実観点からの制度整備が求められる。

5 国の消費者行政組織の一元的集中による拡充の必要性について
消費者政策の一元化と徹底のために、産業育成官庁とは異なる単一の消費者政策官庁に集中して管掌させるべく、抜本的な制度改革を実施するとの方向性を基本法の中に盛り込むべきである。
以上
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