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成年年齢引下げに伴う消費者被害防止のための諸施策の実現を改めて求める会長声明

2022年04月01日

東京弁護士会 会長 伊井 和彦

民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」(以下「民法改正法」という。)が本日施行された。これにより、本日、18歳・19歳に達している200万人を超える若者が、一度に未成年者取消権を失うこととなり、これらの若者が悪質商法のターゲットとなることで、消費者被害が拡大することが強く懸念される。
民法改正法は平成30年6月に成立したが、平成21年10月に法制審議会が法整備の条件として挙げた諸条件がほとんど達成されておらず、かかる経緯から、同法の成立に際し、参議院法務委員会は全会一致で、①早急に、いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権を創設することなど、若年者の消費者被害を防止し、救済を図るための必要な法整備を行うことにつき検討を行い、必要な措置を講ずること(法成立後2年以内)、②マルチ商法等の被害の実態に即した対策について検討を行い、必要な措置を講ずること、③消費者教育の充実、④成年年齢引下げについての周知徹底、などを、政府が本法を施行するに当たり格別の配慮を行うべき事項とする附帯決議を行い、併せて、法成立後施行まで3年10ヶ月もの期間が設けられた。
そして、上記附帯決議に示された施策の実現が一向に進まなかったことから、当会は、昨年6月15日、上記附帯決議に示された施策全ての速やかな実現などを求める会長声明を発出した。
しかしながら、結局、本法の施行日である本日までに、附帯決議に示された施策は実現に至らなかった。つけ込み型不当勧誘取消権の創設に関しては、不当勧誘一般に対して広く適用される取消権は創設されず、ごく限定的な場面での取消権の創設が議論となっているにすぎない。また、消費者教育や、成年年齢引き下げの周知も、一定の努力はなされているが、成年年齢引き下げにより18歳で未成年者取消権という保護を失うことの意味や、具体的な契約に伴うリスクの周知徹底は、いまだ不十分な状態であり、成年年齢引下げに伴う消費者被害を未然に防止しうる程度には至っていない。
したがって、今後懸念される消費者被害の拡大を防止するためには、国は、必要な予算措置を講じた上で、実際の消費者被害の事例を盛り込んだ実践的な消費者教育を含め、上記附帯決議に示された施策を速やかに実現しなければならない。
また、今後、民法改正法の施行によって、若者をターゲットとした消費者被害が拡大することが強く懸念されることから、国が主体となって若者、特に18歳・19歳の若者の消費者被害の実態に関し調査してその結果を公表するとともに、詳細な分析・検討を行い、消費者問題に関する政策に反映させることが不可欠である。
よって、当会は、上記状況を踏まえ、国に対し、上記附帯決議に示された施策全ての速やかな実現を求めるとともに、本法施行後の消費者被害、特に18歳・19歳の若者の消費者被害の実態について、国が率先して調査を行い、被害救済に必要な措置を執ることを強く求める。

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